配信決定
「ボクで力になれることがあるなら、できる限りがんばりたいと思います」
こちらを見上げ、両手をぎゅっと握るポーズをする天使。
カワイイ。
中身は悪魔なのか宇宙人なのかわからないが、見た目が天使なのは間違いない。
しかし、これこそが策略なのだろう。
ついだまされてしまいそうになるが、無垢な少女アピールの一環に違いない。
そりゃそうだ。
『ピンチだから助けて!』を真に受けてOKしちゃうようなバカはいない。
頭ハッピーすぎる。
本当は配信にも乗り気だったけど、人助けの名目が欲しかったといったところか。
普通にコラボするより、そのほうがリスナーも持ち上げてくれるしな。
抜け目ないヤツだ。
意味不明の受け答えも、あたしを誘導するためにやった演技か。
「ありがとー! うれしー! じゃあ、早速なんだけど、明日とか大丈夫?」
気が変わらないうちに約束まで取り付けてしまおう。
「何時から配信するのでしょうか?」
「SENRIちゃんの都合に合わせるよ♪ みぃたんはいつでもだいじょーぶ☆」
「えっと……20時からでも大丈夫でしょうか?」
「おっけー♪ 待ち合わせ場所はここでいいかな?」
「はい、お任せします」
「細かい打ち合わせなんかもあるから、またメールするね♪」
「あ、フレンドになっていないとメールが届かないので、フレンド登録お願いできますか?」
「え?」
ここでまさかの反撃。
アレだな?
フレンドの機能を使ってあたしのすっぴん状態を見ようとしてきやがったな?
腹黒い。
こいつは腹黒い。
自分は素で可愛いからって、そういう手段に出るか。
なんて汚ねぇヤツなんだ。
悪魔どころじゃねぇ。
中に魔王が潜んでやがる。
「みぃたんゎアイドルだから、特別な誰かを作ることはできないの。ごめんね☆ グループチャットでいいかな?」
「グループチャットですか?」
「うん、今部屋を作るね」
いつもの手段でフレンド回避。
何人たりともあたしのすっぴんは見せられねぇ。
「できたよー☆ パスワードは『LOVELOVEみぃたん&SENRIちゃん』ね」
「えっと……」
慣れない手つきで操作している。
グルチャなんて誘われまくりなくせして、こうしてウブなふりをする。
その辺の通行人の視線まで意識してるのか?
プロ意識が半端ない。
相当場慣れしてやがる。
これが何十万のリスナーを抱える大物の実力ってやつか。
『SENRI様が入室しました』
「できました!」
笑顔で報告してくる。
かっわ。
笑顔の破壊力やっば。
思わず抱きしめそうになるが、こっちも現役JCアイドルで売ってる女。
抱きついて敗北を認めるわけにはいかない。
「ありがとー! あたしがログインしていなかったらメモを置いておくから、ちゃーんと見ておいてね♪」
「わかりました」
放送権ゲット。
これ以上笑顔にあてられると危険だし、長居は無用。
「それじゃぁーまた明日ねー♪」
「はい、さようなら」
お互い手を振って、にこやかに別れる。
「……」
チラっと振り返ると、まだ手を振っていた。
最後まできっちりしてやがる。
男どもを食い物にしている女は違うぜ。
結局、背後にいる巨大な組織の情報はつかめなかった。
コラボ許可も下りたし、本人にもある程度裁量を持たせているってことだろう。
ただの操り人形じゃないっていうのは、今のやり取りでわかった。
油断していたらあたしがやられる。
足元をすくわれないように、今後の予定を慎重に考えないと。
「まずは今日の配信からだな」
さっさと始めて明日の告知宣伝しまくらないと。
明日の内容はどうするか。
リスナーから募集してみるか。
『SENRIちゃんへの質問コーナー!』とか作れば勝手に群がるだろう。
数字は期待できそうだし、配信場所はデカイステージを用意したほうがいいかもしれない。
できるだけ目立つヤツがいい。
予測が外れて人が集まらなかったとしても、リアルJSなんぞたいしたことがないとリスナーどもに証明できる。
どちらに転んでも、あたしはおいしい思いができるってわけだ。
「忙しくなるな」
くくく……。
明日が楽しみだ。
徹夜でステージ最前列を確保するおっさんの群れが。




