勧誘
「SENRIちゃん、もふおん配信に興味ない?」
「配信というと……みなさんがやっているような、ゲームプレイの配信でしょうか?」
「そうそう! みぃたんもやってるんだよ♪ 一緒に出ようよ!」
「ごめんなさい」
「そうだよね! 興味あるよね! SENRIちゃんにお願いしたいのは……ん?」
頭を下げられる。
んん?
話も聞かないうちに拒否るだと?
どういうことだ?
あたしみたいな格下とは一緒に出られないってこと?
おいおい。
性格最悪か。
やっぱり中身は悪魔か。
視聴者数が減ってるとはいえ、それなりの再生数は確保してるんだぞ?
公式が企画したの配信イベントで特別賞もらったこともあるし。
それを一蹴するか?
普段から数十万人単位が視聴してる配信でもやってるのか?
あたしのリスナーの端数なんて興味がないと?
なんてヤツだ。
ここまで酷いヤツだとは思わなかった。
ちょっとばかり可愛いからって調子に乗りやがって。
持ち帰って抱きしめるぞ。
わかったよ。
そっちがそういう態度で来るなら、こっちにも考えがある。
意地でも同じ舞台に立たせてやる。
「確かにみぃたんのリスナーは変わったお兄ちゃんが多いんだけどぉ、その分熱狂的に支持してくれる人も多いんだょ。SENRIちゃんだったら、きっとたくさんのファンが付いてくれるよ♪」
「あの……人前に出るのが恥ずかしいです……」
「……は?」
目の前でもじもじする天使。
何言ってるんだコイツ。
今この瞬間を動画にしただけでも金になりそうなヤツが、恥ずかしい……?
お前……その見た目で恥ずかしいなんて言ったら、すっぴんのあたしは全身から血を噴き出して凄絶に悶死するレベルだぞ?
本当の恥ずかしさってヤツを見せてやろうか?
あたしのすっぴんは夢に出るぞ?
18禁指定になるぞ?
ないわー。
いくら清純派路線で売りたいとしても、ここで恥ずかしいはないわー。
これだけ男どもを奴隷にしときながらよく言えたもんだぜ。
ホントは男どもに見られたくてしょーがないド変態のくせに。
だが、ここでキレるほどあたしは子供じゃない。
あくまで『人に見られるのは恥ずかしいですぅ』的なキャラを崩したくないというのなら、それでもいい。
どうせ客層は被るわけだし、必要以上に仲良くすることもない。
ビジネスとしてお互いに得ができればいい。
ファンの人数に興味がないなら、別角度から攻めるのみ。
「SENRIちゃんは普段もふおん配信してないよね?」
「はい、したことはありません」
「でも、注目度はすっごく高いみたいで、変なウワサをちらほら聞くんだよねー」
「変なウワサ?」
「ほら……見た目がゴリラだとか、筋肉もりもりマッチョだとか、そういった心ないウワサ話」
「本当ですか!?」
ぱっと顔を輝かせる。
いや。
ちょっと待って。
なんでこの娘は喜んじゃってるの?
どう考えても喜ぶ要素入ってないんだけど?
なんなの?
罵しられると興奮しちゃうタイプなの?
ドSかと思いきや、ドMなの?
小学生のうちから目覚めちゃってるの?
えぇ……。
わかんねー。
最近の小学生わっかんねー。
「つまり……アレだ、そういった不名誉な汚名を、配信でみんなに違うって知らせるチャンスだよ♪」
「?」
ですよねー。
本人が気にしてなければ、そういう反応になりますよねー。
どーすんだコレ。
どこで利点アピールしたらいいのかわかんねぇ。
あたしらみたいなアイドル商売だと、イメージダウンなんて特に気にする部分だろ?
筋肉ゴリラなんて言われたら訴える案件だろうが。
それなのに、今日会った中で一番いい笑顔しちゃってる。
怖い。
意味不明すぎて怖い。
常識が通じない。
女子小学生怖い。
「あとは……その……」
「?」
いい案が思い浮かばない。
常識が通用しない相手に何をアピールしたらいい?
わかるわけがねぇ。
ファン数に興味がなく、ゴリラで喜ぶ女。
こんなのどうしろってんだよ……。
「お願い! 一緒に出て! ちょっとだけ! 前半のほんの先っちょだけでいいから!」
もうどにでもなれと、やぶれかぶれの泣き落とし。
「最近視聴者が減ってて困ってるの! このままだと配信できなくなっちゃう! あたしを助けると思ってお願い!」
「わかりました」
「え?」
オッケーもらえた。
いいの?
予想外の返事だったので、こっちが困惑する。
「やっぱやめるーとかなしだよ?」
「はい」
念押しもオッケーだった。
えぇ……?
ちょろ。




