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千里くんのステータスは、どこかヘン?  作者: よさげ
配信デビュー(前編)
457/1588

策謀

 目の前に天使がいる。

 どう見ても天使がいる。

 キラッキラのお目目でこっちを見上げている。

 カワイイ。

 つまり、この天使の羽も本物ってことか。

 天使が天使の羽を付けているのは当たり前だ。

 うん。

 天使だ。

 カワイイ。


「SENRIちゃんはどんな天使だったの?」

「えっ? あの……普通の人間です」


 なんということだ。

 下界に落とされると、天使でも人間になってしまうらしい。

 言われてみれば頭の輪っかがない。

 あれがないと天界に帰れないのかもしれない。


「安心して! お姉ちゃんが探し出して天界に戻してあげるから!」

「あの……この羽はただの装備です」


 背中の羽がすっと消える。

 なんということだ。

 自前の羽すら失われていたのか。

 これではただの美少女ではないか。

 やはり持ち帰って保護しなくては。

 そんでもって、毎日一緒に……。


「ぐふ……ぐふふふ」

「?」

「……はっ」


 いかんいかん。

 あまりの天使っぷり我を失うところだった。

 落ち着け。

 どれだけ可愛かろうと、相手はいちプレイヤーに過ぎない。

 ここにやってきた目的を思い出すんだ。

 重要なのは『倒すべき敵』なのか、『引き入れるべき味方』なのかどうかだ。

 見極めている途中で落とされるわけにはいかない。

 今後の活動のためにも、冷静に相手の戦力を分析をしないと。


「んん?」


 装備の詳細を見ようとしたら、この天使とんでもない武器持ってやがった。

 『天使に捧げるロッド』。

 アイテム名の色がおかしい。

 神話級装備じゃん。

 廃人中の廃人装備。

 素材の入手難易度が異常なことくらい、あたしだって知ってる。

 タイトルだけだけかと思ったら装備もヤバかった。

 こんな天使みたいな見た目でガチプレイヤーなの?

 EX(エクストラ級)ダンジョンの最深部とか周回してるの?

 どう見てもぽやーんとしてて運動神経0っぽいのに?


「?」

「いや、さすがにないか」


 EX級周回動画を見ても、だいたいブリーフ1枚でムキムキのおっさんとかだ。

 あんな変態的な動きを、こんなぽやぽや天使ができるわけがない。

 装備は別にトレード不可というわけじゃないんだし、本人ががんばる必要なんてない。

 貢がせりゃいいんだ。

 パパを募集したらいい。

 これだけ愛らしい見た目をしてたら、パパの100人や200人は速攻で集まるだろう。

 こんなクソヤバイ装備を貢がせるとなると、相当富豪のパトロンがいるかもしれん。

 さては、タイトルや城も同じ手口で取ったな?

 なんてヤツだ。

 悪魔だ。

 天使みたいな見た目で人をだます悪魔だわ。


「おほぅ」


 ロッドの詳細説明を見たらまたヤバかった。

 さすが神話級装備。

 書いてあることが全部強い。

 ヤベーなこれ。

 こんなんチートじゃん。

 あたしの武器の100億倍つえーんだけど?

 当然、他の装備もイカレタ性能ばっかりに違いない。


「……んん?」


 ガチ強化初期服でも着てるのかと思ったら、未強化品だった。

 は?

 神話級を持ってるヤツが、なんでこんなゴミ装備着てるの?

 普通は『INT服』や『HP服』に変えるよね?

 靴もゴミだし、アクセにいたっては未装備部分があるんだけど。

 どういうこと?

 バランスおかしくね?

 なんで最強と最低が混じってんのよ。

 これだけ資産あるなら全身ユニークくらい余裕だろう。

 何か狙いがあるのか……?


「……ああ」


 そうか。

 町中用装備と切り替えてるんだろう。

 性能いいけど見た目ダサい装備も多いし。

 いや、だったらアバター装備したらいいじゃん?

 初心者服ならすぐアバター化できるし、アバター用課金アイテムだってパパが買ってくれるだろうに。


「みぃたんさん……?」


 なるほど。

 だいたいわかった。

 敵に回すのは絶対に避けるべきだ。

 絶対に。

 城、タイトル、装備。

 これだけのモノをそろえられるってことは、とんでもない大物が背後にいるに違いない。

 ヘタにちょっかい出したらヤケドじゃ済まない。

 大人の力を見せつけられるのは、あたしのほうだ。

 なるべく触れずにそっとしておくのが正解。

 触らぬ天使にたたりなし。


「……」


 だが、この見た目や人脈は魅力的。

 うまく取り入って配信コラボしたら、相当再生数伸びるぞ。

 公式配信ランキングの上位を狙えるかもしれない。

 欲しい。

 実に欲しい。

 どんな手を使ってでも引き込みたい。

 あたしの話術でなんとしてでも契約にこぎつけてみせる。

 はたしてこの主人公がそう簡単に承諾するでしょうか。

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