策謀
目の前に天使がいる。
どう見ても天使がいる。
キラッキラのお目目でこっちを見上げている。
カワイイ。
つまり、この天使の羽も本物ってことか。
天使が天使の羽を付けているのは当たり前だ。
うん。
天使だ。
カワイイ。
「SENRIちゃんはどんな天使だったの?」
「えっ? あの……普通の人間です」
なんということだ。
下界に落とされると、天使でも人間になってしまうらしい。
言われてみれば頭の輪っかがない。
あれがないと天界に帰れないのかもしれない。
「安心して! お姉ちゃんが探し出して天界に戻してあげるから!」
「あの……この羽はただの装備です」
背中の羽がすっと消える。
なんということだ。
自前の羽すら失われていたのか。
これではただの美少女ではないか。
やはり持ち帰って保護しなくては。
そんでもって、毎日一緒に……。
「ぐふ……ぐふふふ」
「?」
「……はっ」
いかんいかん。
あまりの天使っぷり我を失うところだった。
落ち着け。
どれだけ可愛かろうと、相手はいちプレイヤーに過ぎない。
ここにやってきた目的を思い出すんだ。
重要なのは『倒すべき敵』なのか、『引き入れるべき味方』なのかどうかだ。
見極めている途中で落とされるわけにはいかない。
今後の活動のためにも、冷静に相手の戦力を分析をしないと。
「んん?」
装備の詳細を見ようとしたら、この天使とんでもない武器持ってやがった。
『天使に捧げるロッド』。
アイテム名の色がおかしい。
神話級装備じゃん。
廃人中の廃人装備。
素材の入手難易度が異常なことくらい、あたしだって知ってる。
タイトルだけだけかと思ったら装備もヤバかった。
こんな天使みたいな見た目でガチプレイヤーなの?
EXダンジョンの最深部とか周回してるの?
どう見てもぽやーんとしてて運動神経0っぽいのに?
「?」
「いや、さすがにないか」
EX級周回動画を見ても、だいたいブリーフ1枚でムキムキのおっさんとかだ。
あんな変態的な動きを、こんなぽやぽや天使ができるわけがない。
装備は別にトレード不可というわけじゃないんだし、本人ががんばる必要なんてない。
貢がせりゃいいんだ。
パパを募集したらいい。
これだけ愛らしい見た目をしてたら、パパの100人や200人は速攻で集まるだろう。
こんなクソヤバイ装備を貢がせるとなると、相当富豪のパトロンがいるかもしれん。
さては、タイトルや城も同じ手口で取ったな?
なんてヤツだ。
悪魔だ。
天使みたいな見た目で人をだます悪魔だわ。
「おほぅ」
ロッドの詳細説明を見たらまたヤバかった。
さすが神話級装備。
書いてあることが全部強い。
ヤベーなこれ。
こんなんチートじゃん。
あたしの武器の100億倍つえーんだけど?
当然、他の装備もイカレタ性能ばっかりに違いない。
「……んん?」
ガチ強化初期服でも着てるのかと思ったら、未強化品だった。
は?
神話級を持ってるヤツが、なんでこんなゴミ装備着てるの?
普通は『INT服』や『HP服』に変えるよね?
靴もゴミだし、アクセにいたっては未装備部分があるんだけど。
どういうこと?
バランスおかしくね?
なんで最強と最低が混じってんのよ。
これだけ資産あるなら全身ユニークくらい余裕だろう。
何か狙いがあるのか……?
「……ああ」
そうか。
町中用装備と切り替えてるんだろう。
性能いいけど見た目ダサい装備も多いし。
いや、だったらアバター装備したらいいじゃん?
初心者服ならすぐアバター化できるし、アバター用課金アイテムだってパパが買ってくれるだろうに。
「みぃたんさん……?」
なるほど。
だいたいわかった。
敵に回すのは絶対に避けるべきだ。
絶対に。
城、タイトル、装備。
これだけのモノをそろえられるってことは、とんでもない大物が背後にいるに違いない。
ヘタにちょっかい出したらヤケドじゃ済まない。
大人の力を見せつけられるのは、あたしのほうだ。
なるべく触れずにそっとしておくのが正解。
触らぬ天使にたたりなし。
「……」
だが、この見た目や人脈は魅力的。
うまく取り入って配信コラボしたら、相当再生数伸びるぞ。
公式配信ランキングの上位を狙えるかもしれない。
欲しい。
実に欲しい。
どんな手を使ってでも引き込みたい。
あたしの話術でなんとしてでも契約にこぎつけてみせる。
はたしてこの主人公がそう簡単に承諾するでしょうか。




