誤算
気づかれないように、こっそりと天使ちゃんのステータス画面を開く。
装備→アバター装備。
さてさて、どこのどんなメーカーを使ってるのか……。
「?」
アバター装備の中身が表示されなかった。
またバグかよ。
1つバグを修正すると、新たに5つバグを生み出すクソ運営だからな。
実装する前にチェックしろよ。
頭運営かよ。
もう一度アバター装備画面を開き直す。
「……」
やっぱり何もない。
完全にバグっている。
表示システムの問題か?
自分のアバター装備画面を開いてみる。
「あれ?」
しっかりと表示されていた。
ベースからテカテカリップ、さらに小顔テープからメイク用粘土まで。
数十種類の化粧品がメーカー情報と共に載っている。
他人の装備が見れなくなっているのか?
「ちょっと待っててね♪」
んー……あいつでいいか。
城に腰を擦りつけてるおっさんの元に行き、装備チェック。
「……あった」
頭だけアバター装備になっている。
よく見かけるパターン。
他人の装備が見れないわけではないらしい。
もうちょっと調べてみるか。
んー……近くにいる女はアレくらいか。
ヨダレを垂らしながらトビウオのように跳ね回っている女の元へ行く。
「……あるじゃん」
ちゃんと化粧品が表示されてる。
一般的なメイク一式。
あたしの1/5くらいしかないけど。
極一部のプレイヤーの表示だけが消えてるのか?
どうする。
こっちの狙いがバレてしまうが、本人から聞き出すしかないか。
「ねぇ、SENRIちゃん♪ アバター装備はどんなのが好きなの? お気に入りのメーカーとかある?」
「アバター装備ですか?」
「うんうん♪」
「カッコイイ装備にあこがれます」
「カッコイイ? たとえばどんな?」
「えっと……白く輝く甲冑とか、大きなマントとか」
「……んん?」
何言ってんだ、コイツ。
いきなり変なこと言い出したぞ。
狙いが露骨すぎたから誤魔化してきたか?
「そうなんだぁ。普段はそういったアバターしてるの?」
「いえ、お金がなくて買えません」
「あー、装備系のアバターは高いもんね。じゃあ、今装備しているアバターは?」
「ありません」
「……は?」
思わず間抜けな声を上げてしまう。
「いやいやいや、あるでしょ。その顔面盛りまくってるでしょ」
「このリボンとイヤリングのことでしょうか?」
不思議そうな顔で聞いてくる。
すっとぼけた演技か?
いや、それにしたってアバター装備なしの理由が説明つかない。
プレイヤーが意図的にバグを利用していたら、アカウント停止処分だ。
どういうことだ?
アバター表示はなく、本人も否定している。
……もしかして、全部あたしの勘違いだった?
最初からバグなんてなかったとか。
これがバグではなく、すべて本当だとすると……まさか……。
「すっぴん、だと……?」
信じられない答えに、思わずよろめく。
え?
じゃあ、これみーんな自前ってこと?
は?
目も、肌も、髪も、どこも手を加えてないだと?
ウソ……だろ……?
「……」
「あ、あの……?」
顔を近づけて、穴が開くほど凝視する。
目ぇでけぇって。
キラッキラしてるって。
これが本物だと?
ヤバくね?
変態になめ回されちゃうよ?
「……」
このまつげも自前ってことか?
近所で飼ってるラクダぐらいなげぇぞ?
なんなの?
砂漠にでも住んでるの?
毎日砂嵐にでも襲われてるの?
むにゅ。
「ふぇ?」
ほっぺたをつまむ。
おいおいおい。
なんだよコレ。
肌のハリとツヤがパネェぞ。
プリップリじゃねぇか。
この距離で見ても毛穴が見えねぇ。
つきたてのモチじゃん。
食べ物じゃん。
変態どもに吸い付かれちゃうじゃん。
アレか?
人間じゃないのか?
種族:天使なのか?
散歩してたら天界から足を踏み外してこんなクソみてーな世界に舞い降りちまったのか?
ヤベーってば。
どうすんだよ。
持ち帰ってもいいか?
とりあえず保護していいか?
みぃたんさん錯乱中。




