気まぐれな暴君
「遅いぞ、綿あめ!」
ザイドさんの元に到着。
今回は時間がありそうだし、リザレクションを使って……。
『グォアアアゥヒシュルルル!』
矢のようにアメンニャーが飛んできた。
「ふぉおおおおお!?」
壁まで吹き飛ばされて、ばたりと倒れるザイドさん。
機嫌が直ったかと思ったけど、まだまだ怒っていた。
もうしばらく復活は控えたほうがいいかも。
「そろそろこっちも厳しいよー」
ジャハルさんとマミーさんのペアが、壁際に追い詰められていた。
さっきよりマミーの数が増えている。
倒すと増える仕様かな?
あの数はさすがに処理しきれない。
「あの……できれば、こちらも……」
タママミーにつつかれて、ゴロゴロと転がっていくナビ子さん。
現状で動けるのはボクだけ。
どうにかしようにも、すべてアメンニャーさんのご機嫌次第。
『ニャー』
こちらを見上げて、何か訴えるように鳴く。
どうしたらいいんだろう?
ネコを飼ったことがないのでわからない。
ひとまずその場に座り、そっと手を伸ばす。
ひょん。
その手をすり抜けて、ヒザの上に乗ってきた。
何度か前足で掘るような動きをしてから、ぺたっと丸くなる。
「……」
なでてもいいのかな?
そっと頭をなでる。
『グゴゴゴゴ』
いびきのような音が聞こえてきた。
寝ちゃったのかな?
目をつぶってリラックスしているみたいだし、あまり刺激しないほうがいいかも。
ガシッ!
手を離そうとしたら、前足で止められた。
そこは続けてもいいらしい。
アメンニャーさんが満足いくまで、なで続ける。
『グゴゴゴゴ』
なでなで。
『グゴゴゴゴ』
なでなで。
なでなで。
……。
『ミッションコンプリート!』
アメンニャーさんの感触を堪能していたら、クリアメッセージが流れてきた。
ようやく怒りが静まったようだ。
取り巻きの姿も消えて、ジャハルさんたちが戻ってくる。
「ごめんなさい、一番大変なところを任せてしまって」
「いや、助かったよ。ありがとう」
マミーさんが途中で何かに気づき、詠唱を始める。
ゴォオオオ!
放たれた火属性魔法が、床に転がっていたナビ子さんに直撃する。
「アチャァアアアア!?」
火に包まれながら、何度も床を転がるナビ子さん。
「マミーさん、ナビ子さんは攻撃しなくても大丈夫です」
ヒールのために立ち上がろうとすると……。
ガシッ!
アメンニャーさんに止められる。
動いちゃダメらしい。
ここで機嫌を損ねてまたミッションが始まってしまったら困ってしまう。
そのままなで続ける。
「ネコ優先で放置される雑な扱い……ゾクゾクきます……」
ぐふぐふふ……といった笑い声を上げるナビ子さん。
元気そうでよかった。
「俺様を床に放置したまま畜生の世話か。いい身分してるな」
その場復活制限が解けたようで、ザイドさんが自力で起き上がってきた。
「綿あめの分際で生意気な……」
ガブッ!
一直線に飛び出していったアメンニャーさんが、のど元にかみつく。
引きちぎるようにぐいんぐいんと左右に揺れて、ザイドさんのHPを0にする。
「なぜ俺様だけ……」
倒れるのを横目で確認してから、再びヒザの上に戻ってきた。
ザイドさんのことだけは許していなかったらしい。
「ずいぶんと懐いたね」
「そうなのでしょうか?」
「だって、ザイド様はアレだよ?」
うかつに復活できず、倒れたままでいる。
普段なかなか動物と触れ合う機会がないから、ゲーム内でもふもふできるのはうれしい。
「あ……」
触ろうとした手をすり抜けて、床に降りる。
ぴょんと跳ねて、マミーさんの肩に乗った。
『ニャー』
マミーさんが歩き出し、石像の奥へと向かう。
ゴゴゴゴゴ……。
石像が閉じていって、元の形に戻る。
満足したから寝床に帰ったのかな?
「……」
もうちょっとなでたかった。
オブツ ハッケン ショウドク シマス。




