表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/1588

このゲームで一番危険なダンジョン

 足元でカサカサする黒い虫たち。


 ズバッ!


 りょーちゃんが動き出す。

 ボクもすぐに支援スキルをかけ、背中合わせになるよう構える。

 数は、1、2、3……10匹はいそう。


「!」


 そのうちの何匹かが、飛びかかってきた。

 とっさに回避するも、すべては避けきれない。

 腕に当たる。


『黒つや虫から10のダメージを受けました!』


 それほどダメージは多くない。

 連続攻撃もしてこなかったし、これならチャンスはあるかも。

 いったん距離を取ろうとして……。


 カサカサカサ。


 速い!


『黒つや虫から11のダメージを受けました!』

『黒つや虫から10のダメージを受けました!』


 数匹に襲われ、連続攻撃になる。

 タイミングがばっちり合っているので、反撃すらできない。

 どうにか動けるようになったところで、近くの岩に飛び乗る。

 すぐに回復魔法を唱える。


「ヒー……」


『黒つや虫から16のダメージを受けました!』


 詠唱キャンセル!?

 上から降ってきた1匹に、詠唱を止められてしまう。

 MPとディレイ時間だけはしっかり消費され、さらに状況は悪化。

 このままでは、すぐにやられてしまう。


「ポーション」


 りょーちゃんの声で、ポーションの存在を思い出す。

 ヒールがあるから使ってなかったけど、これなら詠唱も必要ない。

 さっそくポーションを取り出して、中身を飲み干す。


『黒つや虫から12のダメージを受けました!』


 使用モーション中でも、容赦ない攻撃は続く。

 動作はキャンセルされたけど、HPのところにポーションマークが付いていた。

 使用した瞬間に効果は出るようだ。

 でも……。


「回復速度が遅い!」


 数秒ごとにじわじわ回復するタイプなので、HPは危険なまま。

 あと1発か2発で、地面に転がることになってしまう。


 ズババババ!


 りょーちゃんの範囲攻撃が決まる。

 近くにいた黒つや虫が、まとまって吹っ飛んでいく。

 HPはそんなに高くないのか、1撃でHPを削りきった。

 裏返ってピクピクして……むくりと起き上がった。

 あれ?

 倒せてなかった?


 カサカサカサ。


 起き上がった黒つや虫が、一斉にりょーちゃんへと殺到する。

 さすがに、この数はさばききれない。

 40ほどのダメージが、連続で入る。


「ヒール!」


 すぐにヒールをかけるけど、とても回復しきれない。

 復活薬を投げようとするけど、今度はこっちがピンチ。

 どうにか数を減らさないと……。


 ズババババ!


 その場復活したりょーちゃんが、もう一度範囲攻撃を放つ。

 今度こそHPを削りきり、辺りは静かに……。


 カサカサカサ。


 なってない!

 生き残った3匹ほどが、りょーちゃんへ襲いかかる。

 ヒールは無理だと判断して、加勢に行く。


「攻撃」

「わかった!」


 まずは、地面でひっくり返っているところを攻撃。

 これで1匹。

 りょーちゃんを狙って攻撃を外したところを、後ろから攻撃。

 これで2匹。


「あっ」


 硬直を狙われて、りょーちゃんが倒される。

 後ろから叩いて、最後の1匹も仕留める。

 また復活してこないか警戒する。


「……」


 大丈夫っぽい。

 いつものように、すーっと消えていった。


「まあ、こんなところだ」


 倒れたまま話すりょーちゃん。


「いきなり激しすぎるよ……」


 復活薬を投げてりょーちゃんを起こす。

 あともう少しで全滅するとろだった。


「数が多くて効率がいい」

「それはそうかもしれないけど」


 3匹くらいにまとわりつかれると、ダメージ硬直で何もできなくなってしまう。

 動きが速いので、攻撃も当てづらいし。


「死んでもすぐそこが町だから、気にせず突っ込めばいい」

「それでいいのかな……?」


 他のゲームのクセで、生き残ることを最優先に考えてしまう。

 ゾンビアタック(※1)ばかりやってると、味方に怒られることも多い。


「そういえば、倒しても倒しても復活してきたよね?」


 明らかにHPが0になってるのに、何度も起き上ってきた。

 このモンスターの特性?


「ド根性持ち」

「HPが0になっても1残る、みたいな?」

「ああ。通常の根性は『HP50%以上で即死ダメージを食らうと1残る』。冒険者スキルにもあって、SLv(スキルレベル)10でHP100%なら発動率100%」

「りょーちゃんとすごく相性がよさそうなスキル」


 だいたい1撃で倒されるので、毎回発動できそう。


「バーサーク等のデバフ付きスキル使ってると発動しない」

「あ、そうなんだ」

「あと、HPによって発動率減るのがネック。連続攻撃にも弱い」

「このマップだと厳しいね」


 1発の大ダメージには有効だけど、こういう小ダメージ複数攻撃には効果がない。

 被ダメージの多いゲームだし、他の場所では活躍が期待できる。


「HP減少装備で1桁まで減らしておけば、このダンジョンでも発動する」

「なるほど」


 あくまで『HP50%以上』が条件だから、元の最大HPが低いほど発動しやすくなる。

 普段はデメリットであるHP減少効果も、場合によってはメリットになるようだ。


「囲まれてたらダウン追い討ちで死ぬが」

「すぐには回復できないからね」


 ダウン中にポーション使うことは可能。

 でも、追撃がきたら回復する前にやられてしまう。

 効果は高いけど、弱点も多いスキル。


「ド根性はモブ専用スキルで『HPが50%未満でも発動する』上位スキル。HP1でも発動率10%くらいある」

「やっかいだね」

「根性発動してもフィニッシュボーナス(※2)入るから、ボーナス経験値が重複してうまい」

「数が多くて経験値がたくさん入るから、レベル上げに最適?」

「死に戻りも楽々」


 その分難易度も高いけど、ごり押しでなんとかする方針。

 話しているうちにも、次がやってくる。

 囲まれる前に、先手を取っていくしかない。


 ビュン!


 壁に張り付いている黒つや虫を、弓で狙う。


 カサカサカサ。


 壁に張り付いたまま、俊敏に回避する。

 もっと近くじゃないと、当てられそうにない。


「!」


 顔に向かって飛んできたので、ステップで避ける。


「!?」


 同じように、次々と顔に向かって飛んでくる。

 弱点狙いのAIなのかも?


『黒つや虫から10のダメージを受けました!』


 避けそこない、攻撃に当たる。

 ロッドに持ち替えて反撃するも、するりと避けていく。

 見事なヒットアンドアウェイ。

 ダメージを与えることができないまま、次々と新たな黒つや虫がやってくる。

 あっという間に囲まれてしまった。

 ポーションを飲んで、次の攻撃に備える。


 カサカサカサ。


 ボクが無理に攻撃するよりは、りょーちゃんの範囲に巻き込んだほうがいい。

 攻撃を避けながら、うまくそちらへ誘導して……。


「りょーちゃん!?」


 ちょっとよそ見している間に、HPが全部なくなっていた。

 5、6匹の黒つや虫が、倒れたりょーちゃんの周りを取り囲んでいる。

 りょーちゃんが倒れたことで、ターゲットがリセットされる。

 そして、近くにいる別のプレイヤーに移る。

 近くにいるプレイヤー……ボクだ。


「!」


 前後合わせて、10匹ほどの黒つや虫。

 そのすべてが、一斉に飛びかかってきた。

 近くのスーパーに行ったら頭の中をキウイで洗脳されました。


※1、ゾンビアタック:何度倒されても復活して突撃を繰り返す行為。

 デスペナルティーの制限が緩いと、こうしたゾンビアタックの温床になりやすい。

 デッド数が負けにつながる対人ゲームなどで繰り返していると、味方にぶん殴られる。

 現実世界で説明すると、何度もATMを往復しながらお馬さんとか自転車とかボートにつぎ込むこと。


※2、フィニッシュボーナス:トドメを刺すとちょっぴり経験値が増えるボーナス。

 根性持ち、一部の不死系、段差にはさまっている甲羅などは、何度も倒すことができる。

 そのたびに経験値がちょっぴり増えていくのでうれしい。

 現実世界で説明すると、お菓子の袋の底にたまった味が濃縮されたかけら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ