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編み込みリボンでお出迎え

「いやー、火力型強いですねぇ」


 一息ついていると、かんぱちさんが声をかけてきた。


「ステータスは完全に(STR)極振り?」

「その予定」

「近接で防御捨てるとか、僕には真似できないなぁ」


 ボクもかんぱちさんと同じ意見。


「かんぱちさんの魔法もすごかったですよ」

「いやいや。僕の魔法なんて、茶クモ燃やすのが精いっぱいだよ」

「威力というか、タイミングが完璧でした」


 りょーちゃんの近くに落ちるよう足場を燃やしたり、ノックバックを発生しないタイミングで追撃入れたり。

 全体的な立ち回りがうまかった。


「ははっ、若い子にほめられるなら、まだまだ捨てたもんじゃないね」

「かっこよかったです」

「おっと。あんまり調子に乗ると、彼氏ににらまれちゃう」

「?」


 りょーちゃんのことかな?

 ちょっと目つきが悪いだけで、にらんでるわけじゃない。

 中ボスを倒せたおかげか、うれしそうな顔をしている。


「それじゃあ、僕は狩りに戻るよ。デートの邪魔をしちゃ悪いし」

「邪魔なんてことはないです。パーティー狩りができて楽しかったです」

「こちらも楽しませてもらったよ。機会があったらまたどこかで」

「はい、またどこかで!」


『かんぱち様がパーティーから抜けました』


 手を振って見送る。


「上手な人だったね」

「ああ。こっちがボス殴ってる間は、取り巻きのタゲ(ターゲット)受け持ってたな」

「そんなことまでしていたんだ」


 ボスだけで精一杯だったから、周りを見ている余裕なんてなかった。

 次々と燃やしていく姿を思い出す。

 魔法もかっこいい。

 ファンタジーの世界といったら魔法だし、スキルに余裕ができたら取ってみたい。

 現状のポイント不足具合だと、いつになるかわからないけど。


「何が出た?」

「?」

「中ボス以上だと、参加者全員にドロップがある」

「そうなんだ」


 カバンの中を確認する。

 新たに増えているアイテムは2つ。

 『クモの糸』と『赤い糸』。

 クモの糸は複数あったし、ボスドロップは赤いほうかな?


「赤い糸があったよ」

「同じか」

「当たり……ではなさそう?」

「まあ、クモの糸よりは高く売れる」


 レアドロップではないようだ。

 アイテム説明があるので、読んでみる。



 赤い糸:ちょっとお尻に問題を抱えている時に色づく糸。小指に結ぶとハイオークの住み家まで案内してくれる。


 クモの糸:伸縮性に富んでいる細い糸。ブリーフの素材に使えば肩まで伸びる。



 2つとも素材アイテムかな?

 あとで露店でも回ってみよう。


『ピンポーン』


「?」


 聞き覚えのあるチャイムが鳴る。

 同時に『外部』のマーク(※1)が表示される。

 ということは、家のチャイムだ。


「誰か来たみたい。いったん落ちるね」

「わかった」


 急いでログアウトする。

 機器を外して、すぐに玄関へ。




「はーい」

「おう、千里(ちさと)くんか」


 玄関の扉を開けると、大柄な女性の姿があった。

 お母さんの会社の上司であり、幼なじみであり、友人。

 『みっちゃん』こと三井(みつい)さんだ。


「こんにちは」

「こんちわー。(あかね)はいる?」

「お母さんなら、まだ寝ていると思います」

「ほほーぅ。まだ寝てるとな?」

「何か用事でもありましたか? 起こしてきましょうか?」

「いや、あたしが行くよ」


 中に入ってもらう。

 また待ち合わせでもすっぽかしたのかな?


「今日は、かわいい感じになってるな」

「?」

「髪の毛」


 そう言われて、自分の頭を触る。


「……あっ!」


 瞬時に、昨日の寝る前のことを思い出す。

 編み込まれた髪の毛。

 お母さんに髪をいじられたままだった!

 あわててリボンを取り、髪をほぐす。


「あーあ、もったいない。別に気にしなくてもいいのに」

「気にします!」


 こんなリボンを付けていたら、変な人だと思われちゃう。

 今日は台所で顔洗ったので、鏡を見てなかった。


「あっ」


 服装もパジャマのままだった!

 お母さんを起こさないようにと思って、後回しにしていたんだった。


「うぅ……恥ずかしい」

「千里くんの趣味じゃないことくらいわかってるって。犯人は、ぐーすか眠りこけてるヤツだろ?」

「そうですけど……」


 それでも、見られて恥ずかしいことに変わりはない。

 休日だからって、油断してた。


「そんじゃ、その犯人を起こしてくるよ」

「そちらではなくて、ボクの部屋で寝ています」


 1階の寝室に向かおうとした三井さんを呼び止める。


「……なんで?」

「1人で寝るのはさみしいからと」

「ああ、旦那はまだ出張中か」


 事情を知っているので、いろいろ察してくれる。


「仲がよろしゅーようで、うらやましい限りだ」

「三井さん夫妻も仲がいいですよね?」


 旦那さんと手をつないで買い物している姿を、町で目撃したことがある。

 とても温厚そうな人で、見るからに仲がよさそうだった。

 旦那さんも身長が高いので、すごくお似合の夫婦。


「いやー。今、家に帰ってないけどな」

「えっ?」

「忙しくて放っておいたら『僕と仕事のどっちが大事なの!?』とか抜かしやがったから、ケツ蹴っ飛ばして出てきたわ」

「大変な事態に!?」


 夫婦関係に亀裂が入っていた!


「家に帰っていないとなると……寝る場所やお風呂などは、どうされているのでしょうか?」

「会社に仮眠室もシャワーもあるから、寝泊りする分には困ってない」

「食事の用意は、大変ではないですか?」

「近くにコンビニがある」

「栄養が偏っちゃいますよ!」


 三井さんの旦那さんは、料理が上手な人だと聞いている。

 毎日奥さんのために料理を作っているとも。

 うちのお父さんとは『野菜の産地くらべ』で盛り上がったりする仲。


「まだ帰りたくないのですか?」

「いやー。当時は確かにイラついてたけど、今はもう怒ってないよ」

「旦那さんのほうから何か言ってきたりは?」

「毎日泣きながら電話がかかってくる」

「そういうことでしたら、早く仲直りしたほうがいいですよ」

「そうは言うけど、なんというか……どんな顔して帰ればいいのか、わからなくてな」


 ぽりぽりと、気まずそうにほほをかく。


「普通にしていればいいと思います」

「まったくもってその通りなんだが、そう素直に生きられないのが大人なんだよ」

「そうでしょうか?」


 チラッと、ボクの部屋のほうを見る。


「あー、うん。アレくらい素直に生きられたら、人生楽しそうだな」

「お母さんほどとは言いませんが、もう少し素直になったほうがいいと思います」

「なかなか言うねぇ……まあ、ぼちぼち考えるさ」

「今日から帰りましょう」

「え? 今日?」

「はい」

「……わかったよ。そんな顔でねだられたら、断るわけにもいかないさ」


 お手上げといった感じで、両手を上げる。

 ちゃんと決心してくれたようだ。


「さて、眠り姫を起こしてくるよ」

「お願いします」


 2階へと上がっていく。

 ボクも着替えたいけど、着替えは全部部屋に持っていっちゃった。

 他に寝ぐせがないかチェックしよう。

 私も休日は朝(昼)顔を洗っただけで着替えずに過ごすことが多いです。

 たいたい全裸で過ごすことになるので、急な宅配便などにすぐ対応できるよう夏場でもコートを用意してあります。


※1、外部マーク:ゲームをしていても現実世界の環境が優先されるシステム。

 部屋の中をカサカサする黒い何かの足音や、隣の人の屁といった危機的状況も知らせてくれる。

 肉体的な危機にも反応するため、人が寝ていると足音もなく顔の上に乗ってきて息の根を止めようとする暗殺者なネコがいても安心。

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