家族探し(空)
「おお! 娘よ!」
待っていたお父さんが、両手を広げて走ってくる。
サッ。
真顔でそれを避ける娘さん。
ズザァー!
勢い余って転ぶお父さん。
「……娘が冷たい。でも、そんなところもかわいい……ハァハァ」
地面に倒れたまま喜んでいた。
「それじゃあ、手分けして探しましょう」
娘さんの主導で、おじいちゃん探しを開始する。
「お母さんとおばあちゃんはあっち、父と兄はポチについていって。ポチ、二人をお願いね」
「ワンッ!」
パパッと指示する。
この家族の中では、この子が主導的な立場にあるようだ。
小さいのにしっかりしている。
「ほら、あなたも手伝ってくれるんでしょ?」
「はい」
みんなで手分けしながら、おじいさんを探す。
川の中や、森の奥。
木々の間のすき間なども探すけど、なかなか見つからない。
「どこにいるんだろう……」
他の人たちも、まだ見つけられないでいる。
うろうろしては、ポチさんにおしりをなめられている。
「いた?」
「娘かわいいハァハァ」
「まじめに探せこのハゲ」
「あっはーん♪」
お父さんはうれしそうだ。
「そっちは?」
「いい男はいないわね」
「そこのハゲで妥協して」
「えー」
お母さんも見つけていない。
「たまに気配を消すから、やっかいなのよね」
「そんなことができるのですか?」
ゲームのキャラクターみたいでかっこいい。
武術の達人だったりするのかな?
「たまに呼吸も止まってるし」
「早く見つけないと!」
何かあったら大変!
どこかで見逃していないか、もう一度チェックしていく。
「あと、高いところもよく登ってるわ」
「高いところ……」
木はたくさん生えているけど、ほとんどが数十メートル。
まっすぐな木が多いので、とても登れそうにない。
特にあの木なんか、枝がなくて、まっすぐで……。
「……?」
その大きな木。
30メートルはあろうかという高さの枝の上に、人らしき姿が見えた。
見間違いかな?
何度か目をこするけど、やっぱり枝のところに人が立っている。
「お、おじいさん……?」
恐る恐る指をさす。
「あー、あんなところにいたのね」
あまり驚いた様子のない女の子。
よくあることなのかな……?
「どうやって、あんなところまで……」
足場になるような枝はないし、何か特別な道具を持っている感じでもない。
そういう魔法でもあるとか?
それよりも、どうやって降ろせばいいんだろう。
はしごなんかはないし、あの高さまで届くロープもない。
落下に対応できるようなマットや布もない。
「ポチ、頼んだわ」
「わんっ!」
ぐぐぐっと、ポチさんがしゃがみ込む。
ぽいーん。
勢いよく地面を蹴り、おじいさんに向かって飛んでいく。
さすがは雪ウサギのジャンプ力。
あっという間におじいさんがいる高さまで跳び……。
ゲシッ!
「えっ?」
おじいさんを蹴り飛ばした。
落下してくるおじいさんとポチ。
「えっ? えっ?」
このままだと地面に激突しちゃうのに、誰も動かない。
頼みのポチさんも、おじいさんと一緒に落下中。
なんとかしないと……!
「っ!」
ズッポォオオオオ!!
駆け寄るよりも先に、おじいさんが落下。
頭から地面に刺さる。
「……」
巻き上がる落ち葉と、土ぼこり。
足だけが見えている状態で、ピクリとも動かない。
「だ、大丈夫ですか……?」
思わず声をかけてしまったけど、どう考えても大丈夫じゃない。
いくら柔らかめの土だったとはいえ、無事に済むはずが……。
ズボッ。
続けて落ちてきたポチさんが、おじいさんを引っこ抜く。
そこには、ぐったりとしたおじいさんの姿が……。
「ばーさんや、飯はまだかのぅ」
元気だった!
何事もなかったかのように、のそっと起き上がる。
「おじいちゃん、体だけは頑丈だから」
「す、すごいですね」
頑丈といったレベルを超えているような気もするけど。
「やーねー、おじいさん。3日前に食べたでしょ」
あらあらといった感じで、おばあさんが答える。
食べさせてあげて!
「定番のボケよ。ちゃんと食べさせてるから」
「よかったです」
3日も何も食べなかったら、倒れちゃう。
「ありがとう、お嬢ちゃん。おかげで、かわいいかわいい娘を見つけられたよ!」
「い、いえ……」
がっつりと手を握って、ぶんぶん振ってくる。
「さぁ! マイエンジェルも手をつなごう!」
「お母さん、行こう」
「そうね」
「ああ、娘が反抗期! ……でも、そんなところも好き」
なんだかんだで仲のいい家族のようだ。
「おかげで助かったわ、ありがとう」
「ワンッ!」
手を振って別れる。
みんな無事に見つかってよかった。
「娘かわいい……ハァハァ」
「お、あの場所はいい穴だ」
「飯はまだかのぅ」
なんだかまた迷子になりそうだったけど、戻ってきたポチさんに引きずられていった。
にぎやかで、おもしろい人たちだった。
「……えっと」
何をしていたんだっけ?
何か忘れているような気がするんだけど……。
「……」
確か、このイベントマップに入って……。
「あ」
そうだ。
クエストの途中だった!
しかも、時間制限あるクエスト。
クエストメニューから、残り時間を確認する。
「あー……」
たっぷりマイナスになっていた。
2倍以上の時間が過ぎている。
でも、マイナスの時間はまだ増えているので、クエスト失敗とはなっていない。
「えーと……」
マップを見ると、いつの間にか目的地の近くまで来ていた。
このまま報告してみよう。
道に沿って走っていく。
「あれかな?」
マップの端までくると、一軒の小屋が見えてきた。
煙突から煙が上がっているので、中に誰かいるっぽい。
コンコン。
ドアをノックして、しばらく待つ。
「ん? 君は?」
ゆったりとしたローブをまとった男性が出てきた。
すらっと背が高くて、長髪がさまになっている。
「お届け物です」
インベントリに入れてあったクエストアイテムを渡す。
「ごめんなさい、遅れてしまいました」
「あー、これか……」
荷物を受け取ると、少し渋い顔をする。
「あの、何か問題でも……?」
「いや、大丈夫。届けてくれてありがとう」
なんでもない、と笑顔を浮かべる。
「受け取りのサインだ。これを持っていけば、報酬がもらえるはずだよ」
「はい、ありがとうございます」
サインが入った紙をもらう。
クエストの行き先が『NPCニール』に切り替わる。
「わざわざ人に頼むとは……あの男にも困ったものだ」
「?」
「いや、こちらのことだ。帰り道気をつけて」
「はい、失礼します」
パタンと扉を閉めて、外に出る。
だいぶ遅くなっちゃったけど、クエストはちゃんと進んでいる。
あとは、ニールさんに会えば完了のはず。
歩いて帰るよりは、帰還の羽を使ったほうが早いかな?
「んーと……あった」
アイテムの中にある『帰還の羽』を投げる。
視界が白く染まり、町の噴水に戻る。
「……」
何度やっても不思議な感覚。
ゴールはすぐそこなので、ニールさんの元へと急ぐ。
「お待ちしておりましたよ、冒険者様」
「ごめんなさい、遅くなりました」
もらってきたサインを渡す。
「ちゃんと届けていただいたようですね。こちらが報酬になります」
『ニールの荷物を届けろクエストをクリアしました!』
『スキルポイントを10獲得しました!』
ポイントが足りなくて困っていたので、これはうれしい。
「……ところで、荷物の中を見ましたか?」
「いえ、見ていません」
絶対に見ないで、と出発前に念を押されたし。
「そうですか……」
「……?」
なんだか少し残念そうだった。
「とにかく、頼みごとを聞いていただきありがとうございます。また何かあったらよろしくお願いします」
「は、はい……」
やっぱり、手を持ってブンブンされる。
「それでは、仕事が残ってますので」
「はい、がんばってください」
ニールさんと別れて、邪魔にならなそうな道の端っこへ移動する。
あれだけ『荷物の中身をのぞくなよ! 絶対にのぞくなよ!』と念を押されたのに、しっかりとフラグをへし折っていく主人公。




