表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/1588

家族探し(川)

「さて、と……」


 どこから探そう。

 左手は、きれいな小川。

 右手は、大きな森。


「……」


 この川の深さは、どのくらいなんだろう?

 歩いて渡れるようなら、さらに探す範囲が広がってしまう。

 近くまでいって、中をのぞいてみる。


「ほぁー……」


 すっごい透き通ってる。

 川底にある石の1つ1つが、はっきりとわかるほど。

 深さはそれほどでもないけど、真ん中の辺りは腰くらいまでありそう。

 歩いて渡るのは大変かもしれない。


「……?」


 その川の上流。

 棒らしき物が、2本突き刺さっていた。

 木の枝でも引っかかってるのかな?

 さらに近づいてみる。


「……」


 棒の先端と、その棒がつながっている中央に、それぞれ布らしきモノが巻きついている。

 形も丸みを帯びているし、木ではなさそう?

 どちらかというと、ひっくり返った人の足のような……。


「!?」


 人が逆さまに刺さってる!?

 すぐにその場所まで走る。

 早く助けないと!


「……っ!」


 水面から出ている足を持って、引っ張る。

 しっかり埋まっているようで、なかなか抜けない。

 早くしないと、死んじゃう!


「わっ」


 バシャーン!


 引っこ抜いた反動で、お尻から川に倒れる。


「うっひょう! びしょ濡れだぜ!」

「えっ? ナビ子さん?」

「あ、思わず心の声が漏れてしまった。イベント中くらい静かにしてろって言われてるんで、気にしないでください」

「うん……?」


 それより、今はこの人を助けないと。

 流される前に回収して、川岸まで引き上げる。


「うぅ……」


 ピクッと体が動く。

 どうやら、間に合ったようだ。


「大丈夫ですか?」

「うーん……」


 40歳くらいの坊主頭の男性。

 なぜか、下着と靴下だけの姿。


「マークです」

「あ、はい。SENRIです」


 お互いに名前を告げる。

 家族構成からすると、おじいさん……ではなさそうだし、お兄さん?

 見た目より若いのかもしれない。


「お父さんが探していましたよ」

「そうですか」


 お父さんがいる場所まで案内する。




「え? 誰?」

「マークです」


 お父さんが困惑した表情を見せる。

 あれ?

 ご家族の方じゃなかった?


「では」

「お、おう……」


 マークさんが去っていく。


「え? 今の誰?」

「そこの小川に埋まっていた人です」

「いやいやいや。さすがにうちの家族は、そこまでヤンチャじゃないよ」

「そ、そうですよね。ごめんなさい」


 勘違いしてしまった。

 家族以外の人も、このマップにいるようだ。


「娘は……私の娘は……」

「探してきます!」


 すぐに走り出す。

 今度は間違わないようにしないと。




「?」


 マークさんが埋まっていた場所の、さらに奥。

 川の中に、さっきのマークさんと似たような形の何かが……。

 嫌な予感がしたので、急いで駆けつける。


「!?」


 やっぱり、人の足だった!

 赤いハイヒールを履いているので、今度は女性っぽい。

 全力で引き上げて、岸まで運ぶ。


「うーん……」


 なんとか間に合った。

 ショートカットの髪型をした、30歳くらいのキレイなお姉さん。

 探している家族の1人だとすると、奥さんかな?


「君は……?」

「SENRIです」

「私は……ああ、そうか。川の近くを散歩していたら、うっかり足を滑らせてしまってな」

「うっかりですか?」

「そう、うっかり」

「な、なるほど……?」


 どういう滑り方をしたら、あんな感じで埋まるんだろう?

 特別な水流でも発生しているのかな?


「助けてくれてありがとう。家族のみんなは……どこにいったのかしら?」

「えっと……旦那さんは、口ひげのある男性で合っていますか?」

「ええ、そうよ」


 今回は大丈夫だった。


「旦那さんは、あちらの木陰にいますよ」


 来た道のほうを示す。


「あの野郎……自分では探さないつもりか」

「ち、違います! ボクがゆっくりしていてくださいと言ったので」

「そう……そういえば、母も川の近くにいたはずだけど」

「ボクが探してきます」

「あら、頼もしいわ」


 もしかしたら、同じように危機的状況にあるかもしれない。

 すぐに探しにいく。


「川の近く……」


 さすがに……ないよね?

 川の中に何かないか探すけど、怪しい影はなかった。

 ひとまず安心する。

 そうなると、普通に散歩をしているだけかも?

 草むらの陰などを注意しながら、川のほとりを歩いていく。




「……」


 ここから道が広くなっているので、歩きやすくなっている。

 散歩をするならこの辺りかな?

 穏やかな日差しと、清涼な風。

 散歩したくなる気持ちはわかるかも。


「?」


 上流から、何か流れてくる。

 かなり大きい。

 プカプカ浮かびながら、ゆったりと近づいてくる。

 なんだろう?

 流木にしてはカラフルだし、見た感じもやわらかそう。

 まるで、服を着た人が流れているかのような……。


「!?」


 胸の上に手を組んだ状態で流れるおばあさんの姿。

 また人だった!

 川の中に入り、急いで引き上げる。


「くそぅ……全身びちょびちょなのに、なんで透けないんだ……」

「……?」

「あ、お気になさらず」


 ナビ子さんがブツブツつぶやいているけど、助言するつもりではないらしい。

 イベント中は、見守る方針なのかな?


「大丈夫ですか……?」


 おばあさんに声をかける。


「……おや?」


 ぱちりと目を開く。

 よかった。

 意識はあるようだ。


「もう、昼飯の時間かえ?」

「それは……ちょっとわかりません」


 言葉もはっきりしているし、元気そう。


「なんか濡れとるんだが」

「川を流れていましたから」

「なにゆえ?」

「ボクが聞きたいです……」


 いきなり人が流れてくるから、びっくりした。

 グラフィックがキレイなせいで、リアルな光景だし。


「はて? ちょうどいい木があったんで、その木の上で昼寝をしとったはずだが」

「それが原因ですよ!」


 そんなところで寝たら危ない。

 お昼寝するにしても、もう少し場所を選んだほうがいいと思う。


「あちらでみなさん待っていますから」

「そうか、飯の時間か」

「おなかがすいているのですか?」

「そうでもないぞ? 腹ん中タップンタップンしとるし」

「大丈夫ですか? 気持ち悪かったら、吐いちゃってくださいね?」


 流されている間に、水を飲んでしまったようだ。

 意識はしっかりしてるので、大丈夫だとは思うけど。


「そーいや、孫とポチは森へ行ったはずだが、飯食うなら探してこんとな」

「ボクが探してきます」

「おお、そうかえ。いつもすまんの」

「任せてください」


 一旦戻って、おばあさんを夫婦に預ける。




 森となると……この奥だよね。

 人の手が入っていない、自然な姿。

 草木が伸び放題。


「……」


 どこから踏み込むべきか、迷ってしまう。

 家の近くの山より、もっさりしているかもしれない。


「よし」


 なるべく草の少なそうな場所を探して、中へと入っていく。


 サッ、サッ。


 見習いロッドで草木をかきわけながら、森の中を進む。

 赤と白の水玉模様のキノコ。

 花びらの内側にトゲが生えている花。

 ファンタジーっぽい植物が、いっぱい生えている。

 道から外れたところも、しっかり作り込んである。


「わっ」


 段差に気づかず、足を踏み外す。


「……っと」


 なんとか踏みとどまって、転倒はまぬがれるも……。


「あ、あれ……?」


 中途半端な体勢でぶら下がる。

 服の一部が引っかかってしまった。

 取り外そうともがくけど、なかなかうまくいかない。

 動くたびにスカートのすそがまくれ、太ももまで見えてしまう。


 ガタン!


「み、見え……」

「助けてください! ナビ子さん!」

「お任せあれ! 秘蔵の『数学課題フォルダ(※1)』に、パスワード付きで厳重に保存しますから!」


 近くを飛び回る音は聞こえるものの、ここからだと姿が見えない。


「くぅっ! あと少し! がんばれ木の枝!」

「?」

「あと少し! うぉおお! あと少しなのにぃ!」


 小さい体で、がんばってくれてる……のかな?

 それでも、引っかかった枝は外れない。

 りょーちゃんみたいに、短剣も持ち歩くべきだったかも。


「くそぅ……おさわり制限(※2)のせいで、こんな布切れ一枚動かせないとは……」

「ナビ子さん?」

「あまりにも無力! あまりにも無残!」


 ナビ子さんの力だけでは、どうにもならないようだ。

 自力でどうにかするしかないけど、あんまり動くと服がやぶけそうで怖い。

 誰も見ていないのが救いだけど……。

 今回の話の恥ずかしい姿をツイッターに上げました。

https://twitter.com/yosagenanamae/status/1133569574228508672


※1、数学課題フォルダ:みんなの夢が詰まった宝箱。

 見ただけで興味が失せるようなフォルダ名にすることにより、大切なファイルを他者に見られないようにする効果がある。

 家族共有のパソコンを使う時などは必須テクニック。

 私は『新しいフォルダ(1)』『新しいフォルダ(2)』『新しいフォルダ~』とダミーを大量に用意する方法で対策している。


※2、おさわり制限:プレイヤーの邪魔にならないよう、ナビ妖精側から触れない設定になっている。

 設定すれば他のプレイヤーに対しても有効になるので、見知らぬ変態が近づいていても安心。

 主人公は現在ノーガードなので、触りたい放題。

 じゅるり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ