暇つぶし
『ギェエエエエエエエ!』
硬そうな肉さんの叫び声が響き渡る。
トゲは抜けたみたいだけど、すっごく痛そう。
すぐにヒールをかける。
『ギェエエエ……』
足を押さえてうずくまっている。
ちゃんと回復しているのかな?
ゲームの仕様で血や傷口の表現はないので、効いているのかどうかわかりづらい。
頭上に緑色のヒール数値が出ているから、回復自体はしているはず。
「現状HP2割くらいだな」
「がんばります」
ヒールをかけ続ける。
体が大きいだけあって、それ相応にHPも多い。
MPが尽きるまでヒールをする。
「少しは回復できましたか?」
「んー、2割5分」
「もっとがんばります!」
全然足らなかった。
お座りMP回復もしながら、ひたすらヒールをかけ続ける。
「ごめん、りょーちゃん。時間かかりそう」
「気にするな」
「お? 暇してるのかい? だったら一戦やろうぜ」
ミパさんが両手斧を取り出す。
身長よりも大きな斧。
短剣を取り出して応じるりょーちゃん。
2人もやる気満々。
対戦用のカウントダウンが表示される。
「……」
ヒールをかけながら、横目でうかがう。
ドグォァアアア!
勝負は一瞬だった。
飛び出していったりょーちゃんを、斧で一撃。
スキル発動は見えなかったから、ただの通常攻撃。
「狙いは悪くなかったな」
片手でくるくると斧を振り回す。
両手武器を片手で扱うと、STRペナルティー(※1)があったはず。
元々のステータスがとても高いのかもしれない。
「お?」
りょーちゃんが立ち上がって、短剣を構える。
再び対戦を申し込んだようだ。
「いいね、そういうの嫌いじゃないよ」
対戦を受ける。
2戦目。
攻撃範囲が広いと見たりょーちゃんが、射程外からソニックブームで攻める。
まっすぐ走ったミパさんが、ソニックブームごと叩き潰した。
3戦目。
森に逃げ込んだりょーちゃんが、周りの木ごと斬られる。
4戦目。
斧をかわして懐に攻め込むも、ミパさんのひじ打ち一発で終了。
あきらめずに、何度も刃を交える。
合計で10回ほど戦ったけど、そのすべてがミパさんの勝利で終わった。
「まー、こんなもんか」
斧を地面に突き刺し、りょーちゃんを見下ろす。
息一つ切らしてない。
完全勝利。
圧倒的な差があった。
「ちょっと火力が足りないんじゃない?」
りょーちゃんの攻撃が当たらなかったわけじゃない。
何度当たっても、ビクともしなかった。
スキルを使っている様子もなかったし、のけぞり無効のパッシブスキルを持っている様子。
そして、HPもケタ違いに多い。
りょーちゃんの最大の一撃を受けても、ほとんど減っていなかった。
「もう少し強くなったらまた来いよ」
りょーちゃんに声をかけている。
戦い方自体は気に入ったようだ。
火力不足(ステータスSTR極振り、対人特化短剣、全身ダメージ上昇装備、各種火力アップ補助スキル)。
※1、STRペナルティー:武器の条件を満たすステータスに達していないと、本来の力を発揮できなくなる仕様。
両手武器を片手で使おうとした場合などに発生する。
その武器に対応したパッシブスキルや、リアル筋力を上げると軽減できる。
レッツ筋トレ。
ミパ専用斧の場合、握力500kgくらいあればノーペナルティーで使用できる。




