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硬そうな肉

「あ! あの鳥野郎、薬草の代わりになるって言ってたのに」


 ミパさんが叫ぶ。

 そういえば、薬草を探して出かけたのが始まりだった。

 鳥さんが代わりに回復する約束だったけど、もう飛んでいってしまった。


「ボクの回復でよければ、お手伝いします」

「お? ヒール使えるのかい?」

「はい、回復量は高くありませんが」

「そんじゃ、お願いしようかな。こっちこっち」


 ミパさんが歩き出す。


「うちのペットが最近あんまエサ食べなくてさ」


 どんな子だろう?

 ヒール対象は増えているので、闇属性でも大丈夫なはず。


「この前トゲが刺さったところも治りが遅いし」

「お医者様には診てもらったのですか?」

「医者が首を振るレベル」

「そんなに!?」


 事態は深刻なのかもしれない。

 先を急ぐ。




「ほい、うちのペット」

「……」


 案内された場所。

 巨大な黒い塊が体育座りしていた。

 森の木々にも負けないようなサイズの……なんだろう?

 2本の角が生えた頭。

 コウモリみたいな羽。

 鳥のような足爪。

 全身が黒い毛で覆われていて、絵本で出てくるような悪魔みたいな見た目。


『ギェエエエエエ!』


 こちらの存在に気づいて、鳴き声を上げる。

 顔だけでも、ボクの身長よりある。

 一飲みにされそう。


「すっごく大きいですね」

「よく食って、よく寝てるからな」


 どんな種族でも、健康な体を作る基本は同じらしい。

 さっきの鳥さんやドラゴンなんかもいる世界だから、元々大きい種族の可能性もあるけど。


「おーい、肉ー! 足出して―」

「肉……?」

「こいつの名前。『硬そうな肉』」

「個性的な名前ですね」


 硬そうな肉さんが足を前に出す。

 その足の裏に、何か刺さっている。


「トゲ……ですか?」

「おう」


 イメージしていたトゲと違った。

 トゲというか、ほとんど丸太サイズ。

 これだけ大きいと、お医者さんの力では引き抜けそうにない。


「どうにか引き抜くことはできないのでしょうか?」

「やろうとはしてるんだけど」


 ミパさんが近づいていく。


「引っこ抜くから足動かすなよ?」

『ギェエエ……』


 足を隠して、ふるふると首を振る。

 トゲを抜くのが怖いらしい。


「こうやって逃げるんだよ」

「このまま放っておいたら、もっと悪化してしまいます」


 トゲを抜かないと傷も治らない。

 なるべく痛くない方法があればいいんだけど……。

 何かヒントになればと『トゲの抜き方』で検索する。


「しょうがねぇ、力ずくで黙らせるか」

「えっ?」


 ミパさんが前に出る。

 逃げようとする硬そうな肉さんを追い詰めていく。

 木が邪魔で逃げられなくなったところで、一気に距離を詰める。

 そして、足に刺さっているトゲを両手でつかんだ。


「あの、なるべく痛くないように……」

「オラァ!」


 力任せに引っこ抜いた。

 悪魔みたいな見た目をした可愛いペット。

 エサはドッグフードで大丈夫です。

 10メートルサイズが自由に動ける空間があれば、ご家庭でも飼うことができます。

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