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チュートリアル2

「まずは、コレをぶん殴ってみてください」


 ぽんっとスライムがPOP(※1)する。

 今回は1匹だけなので、安心して戦えそうだ。


「普通に叩けばよいのでしょうか?」

「ええ、そうです」


 腰に差した木の棒を手に取り、ぶるぶるしているスライムを叩き……。


 ガキンッ。


「!?」


 硬い!

 先ほどとは違う手ごたえ。

 反射的にガードしようとするけど、体が動かない!


「っ!」


 相手に向かって飛び込むようにすると、どうにか体が動いた。

 ギリギリでスライムの攻撃をかわす。


「……びっくりした」


 今回のスライムは、打撃耐性があるっぽい。

 他の攻撃手段が必要なのかも。


「……」


 攻めてくる気配がない。

 警戒しながら近づいてみる。


「?」


 さっきのスライムと違って、ぷるぷるしてない?

 なんとなく硬そうな表面。

 打撃がダメってことは……。


「うんしょっと!」


 体を密着させてから、持ち上げるように放り投げる。


『7のダメージ!』


 思ったより重くて、転がるだけになる。

 でも、ちゃんとダメージは通った。


「そう、このように防御している相手に攻撃すると、手痛い反撃が……って、なんで倒してるんですか!」

「えっ?」


 なんとか対処できたと胸をなでおろしていたら、なぜかナビ子さんが怒っていた。


「ここはべしっとやられるのが鉄則でしょう! 私の回復スキルで『おおっ!』ってなる数少ない見せ場なのに!」

「えっと……2戦目なので、敵も強くなるのかなぁと思いまして」

「チュートリアルでいきなりステップキャンセル必須の鬼畜な仕掛けはしませんよ!」

「ご、ごめんなさい」


 ゲーム進行の邪魔をしてしまったらしい。


「仕方ありません……次の説明行きます」


 再度スライム召喚。


「今度は『スマッシュ』と叫んでください」

「スマッシュ?」

「はい、武器を構えて……スマァアアアアッシュォァ!!」

「す、スマッシュ!」


 シュィン!


 構えた木の棒が、淡く光り出す。


「そのままカチ上げるようにぶん回す! はい!」

「こ、こうかな?」


 ぽっこーん!


 効果音付きの一撃が、相手を吹き飛ばす。


「すごい!」


 5メートルくらい飛んでった。

 必殺技っぽくて、かっこいい!


「どうですか、この爽快感! これがスキルです!」

「ゲームっぽくて、すごくかっこいいです!」

「そうでしょうとも。ええ、スキルあってこそのゲームですよ」

「でも、毎回叫ぶのは、ちょっと恥ずかしいような……」

「必殺技なんて叫んでナンボでしょうが! なんならオリジナル必殺名で発動することもできますぜ!?」

「目立つのは苦手なので……」

「ロマンじゃないですか! みんなノートに書きましたよね? オリジナルキャラとかオリジナル魔法とかオリジナル装備とか!」

「ボクは書いたことないです」


 ゲーム攻略用のメモを書いたくらい?

 お父さんが持ってるレトロゲームだと、ヒントのメモやマッピングが必須だったりする。


「なん……だと……? 右腕とか右目がうずいたりしないんですか!?」

「ごめんなさい、その感覚はよくわからないです」

「マジでございますか……最近の若者は夢がありませんねぇ。まあ、設定でボイスオフやモーション発動の機能もありますけど」


 ロマンがどうのこうのと、落胆した表情でブツブツ言っている。


「あの」

「はいはい、なんでしょう?」

「ナビ子さんって、中の人がいるのでしょうか?」


 チュートリアル用のNPC(※2)かと思ったんだけど、すごく人間味を感じる。

 自分の意思を持っているかのよう。


「中に誰もいませんよ?」

「とてもそうは見えないです」

「ありがとうございます。スムーズな会話を可能にするために、学習型AI(※3)を搭載しているんですよ」

「最近のAIはすごいですね」

「イケナイ遊びから今晩のオカズまで、あなたの冒険者生活を見つめるナビ子です」


 くるりと回って、バチコーンとウィンク。

 表情も豊かで、どこにも不自然な感じがしない。


「最近のゲームだと、プレイヤーと区別つかないレベルのNPCが当たり前になってきてますけどね」

「VRのゲームをやるのは初めてなので」

「現役女子○学生の初体験っすか!? そいつぁたまりませんな!」

「……?」

「あー、いえいえ。初めての相手に選んでいただき、誠に光栄であります」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 お互いに頭を下げる。


「まあ、学習するとはいっても、すべて自由に表現できるわけじゃないんですけどね」

「言っちゃダメなことでもあるのですか?」

「ええ、冒険者様の意見を参考しすぎると『ク○運営○ね!』を連呼するキャラになりますし」

「あ、聞こえないところありました」


 話の流れからして、運営さんを批判した言葉だったのかな?

 会話の中でも、NGワードが設定されているらしい。


「さて、チュートリアルの続きですが、あちらをご覧ください」


 ナビ子さんの示す方向。

 さっき倒したはずのスライムが、小さくなって……残っている?


「モンスターを倒すとドロップ(※4)することがあります」

「ドロップアイテムでしたか」

「デフォルトの設定だと、近づくだけでインベントリに入りますよ」

「わかりました」


『べとべとの体液を入手した!』


 3メートルくらいまで近づくと、アイテム入手のログ(※5)が流れた。

 せっかくなので、拾ったアイテムの説明を見る。



 べとべとの体液:スライムの汁。べっとべとでぬるんぬるん。せっけんで洗ってもなかなか落ちない。



「これって、何かの素材ですか?」


 説明を読んだけど、何に使えるアイテムなのかわからなかった。


「投げつけると嫌がらせになります」

「説明そのままだった!」

「町中で人に投げつけちゃダメですよ? 絶対ですよ?」

「気をつけます」


 迷惑行動で通報されたら、ゲームできなくなってしまう。

 ゲーム登録に本人確認が必要なので、アカウント凍結(※6)されたら新規で作り直すことができない。


「あと、売ると1ゴールドになります」

「これといった使い道はなさそうですね」

「自分にも使えますよ?」

「自分で使うと、何か特殊効果が?」

「ぬるぬるになります」

「?」

「見抜きできます」

「??」

「ローションぶっかけグチョぬれロリとか、箱単位でティッシュが必要になりますわ」

「???」


 難しい言葉を学習しているのか、全然理解できなかった。

 このゲーム内での用語なのかな?


「さてさて。お友達もお待ちでしょうし、そろそろチュートリアルを終わりにしましょうか」

「そうでした」


 りょーちゃん待ってるから、急がなきゃ。


「ここまで、何か質問はありますか?」

「んーと……今のところは大丈夫です」

「呼びかけてくだされば反応しますので、何かあったらお気楽にどうぞ」

「わかりました」

「転送する前に、ファッションタウンはご利用になりますか?」

「ファッションタウン?」

「ざっくり説明すると『化粧』や『ヅラ』や『おぱんつ』などを購入できる場所です」

「そんな場所があるのですか」


 見た目は変更できないと思ってたけど、そういうお店があるなら使ってみたいかも。

 ヒゲとか、かっこいい服とかも選べるのかな。


「基本、リアルマネーを使った有料になりますが」

「……利用しなくて大丈夫です」


 お小遣い、全部使っちゃったです。


「ですよねー! ぴっちぴちの肌には、化粧なんぞ不要ですよねー! なめ回す時に邪魔ですし!」

「?」

「ごほん。転送場所は、お友達のいる場所でよろしかったでしょうか?」

「はい、お願いします」

「かしこまりました」


 ナビ子さんが、その場でくるくる回る。

 すると、白く光った空間が現れた。


「さあ、この中へ入ってください。皆様がいる世界に接続します」

「……」


 いよいよだ。

 この光の中を抜ければ、ついに本格的にゲームが始まる。


「……よし!」


 助走をつけて、光の中へ飛び込んでいく。

 通り抜けようとする背中に、ナビ子さんの声が届く。


「ようこそ、メモリーズオブファンタジーオンラインへ」

 パソコンの前にずっと座っていると、尻が痛くなります。

 いろいろと問題を抱えていますし。

 だったら『布団の中からスマホ投稿すればいいじゃん!』と気づき、いざ実行。


 いつの間にか寝ていました。


※1、POP:モンスターなどが出現すること。

 『湧く』とか『沸く』と言う場合もある。

 現実世界で説明すると、「寝室にGがPOPしたので、残念ながら家を焼き払う」などといった場合に使う。


※2、NPC:プレイヤーではないゲーム内キャラクターのこと。

 「ここは○○村です」だけを言うNPCや、何年間も洞窟の中で主人公を待ち続けるNPCなど、配置や設定によってさまざま。

 たまに『とっても強い敵がうようよしている場所で普通に生活している村人NPC』がいたりして、恐れおののく。


※3、学習型AI:自分で新しいことを学習して、より適した判断を行う人工知能。

 学習する相手が主にプレイヤーなので、「うひょーぅ! やっぱり、新鮮な小〇生はたまんねぇぜ!」といったプレイヤーが多いと、学習する側もだんだん毒されていく。


※4、ドロップ:アイテムが落ちること。

 素材だったり、装備だったり、ポーションだったり、モンスターによっていろいろ。

 ドロップ確率も違うので、中には100万分の1の確率で落ちる超レアドロップも。

 近くに行くと、自動的にカバンの中に入る。

 現実世界でも、間に合わなくてうっかりドロップすることがまれにある。


※5、ログ:アイテム入手情報などの履歴。

 戦闘が忙しくて見逃した場合などに便利。

 会話も自動的に文章に変換されて保存されている。

 翻訳能力にちょっと難があるため、『ワニムの髪の毛1個さえこの世には残らない』といった不思議な文章になることも多い。


※6、アカウント凍結:ゲームできないように運営が制限すること。

 悪いことをしたり、運営のお願いを無視すると、こうした処分を下される。

 悪さの程度により、数日から数週間。

 最悪の場合は、永久に凍結される。

 アカウントBAN=垢BANと呼ばれることも。

 IDとパスワードを忘れてセルフアカウント凍結することもよくある。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一体どんな学習したらこんなことに...ネットって怖い... ナビAIにすら勘違いされる主人公 ...私の筋力はGでした(感想返信読みました)
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