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りょーちゃん家

 冷蔵庫に何があったかな……?

 作れそうなレシピを考えながら、台所へ移動する。


「どうしよっかな」


 食パンがまだあるから、サンドイッチ。

 それと、ポテトサラダとフライドポテト。

 ジャガイモがたくさんあるので、食材消費に協力してもらっちゃおう。


「えーと……」


 お父さんのレシピ帳を見ながら、料理を進めていく。

 出張に行く前に『これを見るか、ネットでぐ〇れ』と置いていってくれた物。

 いつも作る料理のほとんどが、このおかげ。

 すごく助かっている。

 昼食が用意ができたら、ベランダへ移動。


「うんしょ」


 干していた布団を裏返す。

 天気がいいので、ふっかふか。


「あとは……」


 戸締り確認よし。

 バスケットに料理を詰め込んで、外に出る。

 ボクの家からりょーちゃん家までは、100メートルくらい。

 うららかな陽気を楽しむまでもなく到着する。


 ピンポーン。


 呼び鈴を鳴らすと、すぐにりょーちゃんが出てきた。


「寝間着姿なんだね」

「どうせ1日中もふオンやってるからな」

「少しは動かないと、体に悪いよ?」

「筋トレはしてる」

「それなら健康的、なのかな……?」


 リアルステータスも増えるし?


「お邪魔します」


 りょーちゃんに続いて、家の中に入る。


「台所借りるね」

「好きに使ってくれ」


 必要な物を取り出し、準備していく。

 りょーちゃん家にはノンフライヤー(※1)があるので、切ってきたポテトをセットする。

 うちにも欲しい。


「飲み物は、紅茶でいい?」

「ああ」


 食器の位置はだいたい覚えているので、2人分用意する。


「先に食べてていいよ。サンドイッチとポテトサラダ入ってるから」

「わかった」


 準備を済ませてから、ボクも昼飯をいただく。

 朝から食べてないというだけあって、見る見るバスケットの中身が減っていく。


「カレーも持ってきたけど、食べる? 昨日の残りだけど」

「食べる」

「温めてくる」


 持ってきてよかった。

 ボクと違っていっぱい食べるから、軽食だけじゃ足りない様子。

 ちょうどポテトも揚がったので、一緒に持っていく。


「うちのカレーだから、だいぶ甘いと思うけど」

「問題ない」


 黙々と食べ始める。

 なんでも食べてくれるのはうれしいけど、もう少し好き嫌い言ってくれてもいいのに。

 表情を見る限りでは、おいしそうに食べてるけど。


「たっだいまー」


 よく通る声が、玄関のほうから聞こえてくる。

 智子(ともこ)さんが帰ってきたようだ。


「あれ? 千里(ちさと)くん来てる!」

「お邪魔しています」

「お邪魔じゃないから! むしろ、住んでくれていいから!」


 着てた上着を放り投げて、駆け寄ってくる。

 りょーちゃんの母親で、モデルの仕事をしている。

 背が高くてすっごい美人さん。


「お昼ご飯食べてたの?」

「はい、台所を使わせていただきました」

「千里くんの手料理!」


 身を乗り出してくる。


「うまかった」

「しかも、今終わったところ!?」


 べちんっと自分のおでこを叩く。


「外で飯食ってる場合じゃなかった!」

「えっと……?」


 どう言葉をかけていいかわからず、オロオロしてしまう。


「おい、息子よ。なんで知らせなかった?」

「外で食ってくると言っていた」

「千里くんが来るってわかってたら、3日くらい絶食してたわ!」

「食器片付けとくぞ?」

「あ、うん。洗っておくから置いといて」

「うわーん! 千里くーん!」


 がしっと抱きつかれる。


「千里くんの手料理が味わえないなら、千里くんの感触を味わうしかない!」

「紅茶でよければ、ありますよ……?」

「飲む!」


 みんなでお茶して、一息つく。


「はぁー。しっかし、最近ますます(あかね)ちゃんに似てきたね」


 だらーんと足を伸ばしながら言う。


「そんなに母と似てますか……?」

「似てる似てる! あの子のちっさい頃そっくりだよ! ……まあ、今でも小さいけど」


 よく『お母さんそっくりだねぇ』と言われるけど、自分ではわからない。

 親子なんだから、多少は似るものじゃないかな?

 もっと身長が伸びれば『お父さんに似てる』って言われると思う。


「子供が子供を産んだと思ったら、いつの間にかこんなに大きく……大きくはなってないか」

「……」


 去年は2センチも伸びた。

 少しだけ伸びが悪いだけで、成長期は来ているはず。

 これからもっと伸びるはず。


「それに比べてうちのコレは、勝手にモリモリでかくなって」

「……」


 黙って紅茶を飲むりょーちゃん。


「昔はこんなんでも、かわいいところあったんだけどねぇ」

「今でも、かわいいところありますよ?」

「あっはっはっは! 違いない!」

「……」


 黙々と、紅茶を飲み続けるりょーちゃん。

 高身長で目がキリッとしているので、威圧的な印象を受ける人もいる。

 自分から話すほうじゃないから、無愛想に見えることもある。

 でも、わりと子供っぽかったり、おちゃめだったりする。

 ゲームやってるときは、すごく楽しそうにしてるし。


「おかわり飲みますか?」

「飲む飲むー! 腹たっぷんたっぷんになるまで飲むー!」

「りょーちゃんは?」

「いる」


 3人分のお湯を沸かす。


「何か茶請けが欲しいなー。何かあったっけ」


 智子さんが台所にきて、ごそごそと探し始める。


「アイスあったわ! イチゴ、チョコ、抹茶。千里くん、どれがいい?」

「えーと……じゃあ、抹茶でお願いします」

「だったら、りょうはコレね」


 りょーちゃんに、イチゴを放り投げる。

 特に文句もないようで、そのまま食べ始める。


「はい、りょーちゃん」


 抹茶をスプーンですくって、差し出す。


「……うまいな」


 ボクも一口食べてみる。


「んー」


 ほどよい甘さと、とろけるような口触り。

 とってもおいしい。


「ほら」


 お返しにと、イチゴを差し出される。


「ありがと」


 スプーンにかぶりつく。

 こっちはこっちで、イチゴの酸味があっておいしい。


「……ホント、あんたら仲いいな」


 その様子を見ていた智子さんが、ぼそっとつぶやく。


「そうですか?」

「はたから見てたら、イチャついてるようにしか見えないわ」


 りょーちゃんと顔を見合わせる。

 どうなんだろう?

 いつもやってることだし、普通だと思うんだけど。

 2つの味を楽しめるから、1人で食べるよりお得だし。


「あーん♪」


 智子さんが、顔を近づけてくる。


「……?」

「りょうはよくて、あたしはダメなの!?」

「そんなことはないです」


 スプーンですくって、智子さんへ差し出す。


「うーん……甘酸っぱい!」

「抹茶ですけど……」

「はい、あーん♪」

「えーと……?」


 今度はこっちに返ってくる。


「はい、あーん♪」

「い、いただきます」


 食べろという笑顔のプレッシャーがにじみ出ていたので、パクリと食べる。

 うん。

 チョコもおいしい。


「りょーちゃん、残り食べる?」

「食べる」

「えっ? 千里くん、全部食べないの?」

「もうお腹いっぱいなので」


 昼食を食べたばかりだし、食べすぎるとお腹が痛くなっちゃう。


「ミニカップなのに半分でいいとか……。どっかの大食らいにも見習ってほしいわ」

「その分大きくなってるから、うらやましいです」

「いや、だって、箱単位で食べるよ?」

「りょーちゃん、甘いの好きだよね」


 黙ってアイスを食べ続けるりょーちゃん。

 これくらい食べられるようになれば、ボクも大きくなれるのかな?


「それでは、そろそろ帰ります」

「もう行っちゃうの!?」


 がばっと身を乗り出してくる。


「買い物もしておきたいので」

「あー、今は茜ちゃんと二人か。千里くんが家事しないと死んじゃうわ」

「そんなことはない、と思いますけど……」


 お母さんだって、家事くらいできるはず。

 お父さんは『絶対にやらせたらダメだ!』と言ってるけど、ケガをさせないためだと思うし。


「うちにも家事をしてくれるかわいい娘が欲しかった!」


 りょーちゃん家も一人っ子。

 智子さんとしては、女の子も欲しかったのかな?


「うちの子にならない?」

「帰らないと、お母さん泣いちゃいます」

「だったら、茜ちゃんも一緒にどう?」

「今度は、お父さんが泣いちゃいます」


 帰ってきたときは、ちゃんと迎えてあげたい。

 がんばってお仕事してるんだし。


「だったら、あたしが行くしかないか」

「それなら……お母さん喜ぶかも?」


 さびしがり屋で、お話大好き。

 話し相手になってあげるだけでも喜ぶと思う。


「ホントに行っちゃうよ?」

「はい、いつでも来てください」

「息子よ。そういうことだから、あとは任せた」

「あ、今はお母さんいないです。今日も仕事なので」

「なんてこったい! こりゃもう、千里くんを1日中クンカクンカするしかない!」

「放っといていいぞ」

「う、うん?」


 りょーちゃんがそう言うので、洗い物を済ませて荷物をまとめる。




「お邪魔しました」


 あいさつをしてから、玄関へ向かう。


「じゃあ、またあとで」

「ああ」


 りょーちゃんに見送ってもらって、外に……。


「息子よ」


 智子さんがやってくる。


「これからどうするつもり?」

「部屋に戻ってゲーム」

「違うでしょ!」


 ばっと手を広げる。


「こんなかわいい子を1人にして、何かあったらどうする! 家まで送ってく男気を見せんかい!」

「あの、家すぐそこですが……」

「買い物にも行くんでしょ? こんな細腕に重たい荷物を持たせたらダメよ! そういう時こそ男の出番よ!」

「あの、ボクも男ですが……」


 たくさんは持てないけど、日々の買い物でそんなに困ることはない。

 重い物を運ぶ時は、自転車とか折りたたみカートを使っている。


「りょう。買い物についていけば、筋トレになるぞ」

「わかった」

「納得しちゃうんだ!」

「着替えてくる」


 りょーちゃんと出かけることに。

 着替えを待ってから、外に出る。

 幼なじみで、家も近くて、クラスもずっと一緒。

 友達っていいですよね。



 とも……だち……?(休み時間に眠いわけじゃないのに寝ているフリをして過ごした学生時代を思い出して混乱しているようだ)


※1、ノンフライヤー:油を使わなくても揚げ物ができてしまう画期的な家電製品。

 もうイカリングの爆発に怯えなくていい。

 腕にはねた油が消えないシミを作ったり、眼球に直撃して台所の床をのたうちまわるあんな思いは、もうしなくてもいい。

 使い終わった油をうっかりこぼして、床をつるつるコーティングする恐れがないのもポイント。

 なお、お金がなくて買えていないので、今も油であぎゃーしている。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒロイン的な子の登場は?
[一言] ノンフライヤー欲しいんじゃあ…… 油が口の中に入って転げ回った経験二度としたくないぜよ… あ、面白かったですよ!(取り繕い)
2020/08/10 00:27 みるみるみるきー
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