雪ウサギ3
「ブレス!」
スキル経験値を稼ぐため、積極的に支援スキルも使っていく。
そのついでに、りょーちゃんの動きを観察する。
ズバッ!
ズバッ!
ドゴォ!
うーん……?
気のせいかな。
一方的に攻撃してるように見えるんだけど。
ドゴォ!
ぱりーん!
ズバッ!
密着状態で攻撃を当てている。
あんなに近くにいて、反撃ってこないのかな……?
あ。
突進は避けた。
そのあとを追っていき、バックアタックを決める。
「……」
しばらく見ていたけど、だいたい同じような動きをしていた。
避けてから反撃するのではなく、先に動いて相手の攻撃をつぶしているらしい。
もちろん、それだけで勝てるわけじゃない。
しっかりと、突進と通常攻撃を回避している。
どうやって避けてるんだろう?
予備動作なんてあったかな?
「どうした?」
「どうやって攻撃判断してるの?」
「しゃがんだらジャンプ、屈んだら気合ため、腕を上げたらポーズ、腕を振ったら通常、それ以外は突進」
「全パターン覚えてるんだ」
「他のモンスターでも基本は一緒」
「慣れ?」
「慣れ」
そういうことらしい。
ボクにもできるかな?
遠くからじっくり見れば、どの動作かわかるんだけど。
「んー……やってみる」
とにかくチャレンジあるのみ。
近くにいた雪ウサギを叩いて、そこからの反応を見る。
「……」
気合ため。
ぺしぺし叩いて反応を見る。
「……」
ポーズ。
これもぺしぺし叩く。
「……」
これは……突進?
「わっ!」
反応が遅れて、危うくつかまれそうになる。
5歩くらい距離があったので、ギリギリセーフだった。
りょーちゃんは、もっと近くでやってたよね?
チラっと、りょーちゃんのほうを見る。
「慣れだ」
「……」
だそうです。
単純なレベル上げだけじゃなくて、中の人レベルも上げないと。
すぐに行動できるよう、ロッドを構え直す。
「……」
ポーズ。
ぺしぺし。
「……」
ポーズ。
ぺしぺし。
「……」
……通常?
「っ!」
『雪ウサギから42のダメージを受けた!』
避けきれずに、攻撃を受けてしまう。
1撃だけでこのダメージ。
のけぞり状態で動けないので、2発目は耐えられない!
ドゴォ!
りょーちゃんがやってきて、雪ウサギを吹き飛ばす。
そこから追撃も入れて、しっかり倒す。
「ありがと」
ぴゅるりーん♪
『尻毛をむしったタイトルを獲得しました!』
「?」
雪ウサギを倒したと同時に、システムメッセージが流れる。
タイトル?
「キャラ情報から設定できる」
「えーと……」
キャラクター情報から、タイトル選んで……使用可能なタイトルを選択、と。
『尻毛をむしった SENRI』
「……」
変なあだ名が付いた。
「この効果は?」
「MP+10。雪ウサギを100匹倒すだけで獲得できる序盤おすすめのタイトル」
「あ、ホントだ」
キャラ情報を見たらMPが増えてた。
まだ最大値が低いので、10増えるだけでも楽になるかも。
「そういえば、りょーちゃんも付けてるよね?」
『血に飢えた krbrx』
かっこいいから付けているんだと思っていた。
「バーサークを使った状態で同格以上の敵を1000体撃破。S+3、I-10、D-10」
「デメリットのほうが多いような……?」
「何か問題が?」
「ううん、りょーちゃんらしいね」
火力全振りと公言してるだけあって、その他いろいろは犠牲にしている。
「何か倒せばタイトルがもらえるの?」
「『○○を倒せ』や『特定のクエストクリア』など、条件はいろいろある。『コウモリのフンに当たって死亡』とか『竹やりだけでステージクリア』とか」
「難しい条件だと、効果もすごいとか?」
「ユニークタイトル(※1)の一部はゲームバランス壊してる効果もある」
「ユニーク?」
「条件を満たせば誰でも取れるタイトルと、限定タイトルの違い」
「『尻毛をむしった』は普通のタイトルってことだね」
「ああ。普通のタイトルは数百、ユニークは1万以上あると予想されているが、数が多いのでWIKIでも把握しきれていない」
「そんなにあるんだ」
それだけ数があるなら、何か1つくらいは特殊なタイトルがゲットできるかも?
「ユニークだからって、すべて強いわけでもないが」
「そうなの?」
「『歩くときにピコピコ鳴る』とか『スキル後にカエルが飛び出す』とか」
「内容がユニーク!」
攻略にはあんまり役立ちそうにないけど、ちょっと使ってみたい。
「通常タイトルだと『ステ+5』くらいが限度なんだが『L30、クリティカルダメージ20%上昇+クリティカル時追撃』や『S30、スキルダメージ50%上昇+チャージ上限なし』といった壊れタイトルも判明している」
「判明してるってことは、実際に取得した人がいるの?」
「いる。1町最強ギルドのマスター。同じく1町トップクラスのギルドのサブマスター」
「限定タイトルってことは、他の人はもう取れないんだよね?」
「そうだな」
「効果が高すぎると『不公平だー!』って騒がれそうな気もするけど」
「βの時に条件の一部が流出したんだが『ボス級以上の敵に1度も致命打を受けずに3000回連続で弱点を突く』や『極限難易度のダンジョンをソロでSランククリア』といった鬼畜条件を複数クリアで取得。真似できるようなら他の有用ユニーク持ってるはず」
「うん。話を聞いただけで、無理だってことはわかったよ」
弱点を狙うどころか、普通の攻撃すら当たらない。
ボス級ともなると、ここよりずっと敵の動きも激しいだろうし。
「あとは『年末のラスボス』とか『手投げで131km/h』といった、現実で獲得した称号も使える」
「現実でがんばるって手もあるんだ」
「身近なところだと『学力テスト全国1位』取ればもらえる」
「がんばれる気がしなかった!」
平均点を取ることだって難しいのに、全国で1位とか無理!
そもそも、1位を取るような人が、ゲームで遊んだりするんだろうか?
遊ぶにしても、もっと知能を生かせそうなゲームを選びそう。
「りょーちゃんは、何か取れそう?」
「なんでもいいなら取れるだろうが、高性能ユニークは難しい」
「りょーちゃんでも難しいんだ」
ボクの場合は、おとなしく通常のタイトルを狙ったほうがいい。
条件さえ満たせば、必ず手に入るんだし。
「そう考えると、100匹倒すだけでいいなら楽だね」
ちゃんとステータスも上がるし、ボクみたいな初心者でも確実に取れる。
……。
あれ?
「ボク、10匹くらいしか倒してないような……?」
「PTで倒した数共通」
「ごめん! ほとんど任せちゃった」
「火力差あるから妥当な結果。元々そのつもりだったしな」
「ありがとう、りょーちゃん」
今のところ、助けてもらってばかり。
早くちゃんとお返しできるようになりたい。
「戻るか?」
「うん、そろそろいい時間だし」
今から昼食の準備をすれば、ちょうどいい感じかな。
「町に戻るのって……」
「アイテムの中に『帰還の羽』がある」
「えーと……」
「特別タグ」
「……あった」
帰還の羽:登録した場所に戻ることができる。何度でも使用可能。いしのなかに飛んでも安心。
こんなところにもアイテムあったんだ。
通常部分しか見てなかった。
「それを使えば戻れる。死に戻りでも同じだが」
「せっかくのアイテムなんだから、使ったほうがいいよね?」
りょーちゃんが帰還の羽を投げるのを見て、ボクも同じように投げる。
ふわっと体が軽くなり……。
「……」
次の瞬間には、町まで戻ってきていた。
ファンタジーならではの体験なんだけど、やっぱり不思議な感覚。
「拾った尻毛は、店売りより買い取り露店に入れたほうがいい」
「あ、うん」
そういえば、ドロップアイテムもあった気がする。
カバンの中を確認。
雪ウサギの尻毛:筋肉が付きづらいので、他の部位よりフサフサしている。たまに尻から出るアレが付いている。
もこもこした丸い毛玉。
何かの素材になるのかな?
「生産するなら取っといてもいい」
「生産もスキルポイント使うんだよね?」
「ああ」
「しばらくは無理かなぁ」
あれもこれも手を出していたら、すぐにポイントがなくなってしまう。
おもしろそうなのがあれば、やってみたいけど。
「それじゃあ、いったん落ちるね」
「ああ」
ログアウトする。
リアルの世界で『ガチャ確率1.0%なのに0.1%を下回った』タイトルを獲得できそうです。
追記:そのあと盛り返して0.4%まで復帰したので、なんとか致命傷で済みました。
※1、ユニークタイトル:変なことをすると取得できるタイトル。
8割はネタで特に役立たない。
たまに使えるタイトルがあって、その有用具合によって『一般人』『クラスで人気者』『町でうわさの』『国民的な』『世界に羽ばたく』『伝説級』『神話級』とランク分けされている。
まだ見ぬユニークタイトルを探し求めて、ひたすら壁に向かって後ろ幅跳びを続けたり、たいまつを持って謎の儀式を行ったり、マグロのように跳ねながら前進していく人などもいる。




