雪ウサギ2
「あ、ありがとう」
りょーちゃんにお礼を言う。
地面にぶつからないよう、抱きかかえてくれたらしい。
「もう大丈夫」
地面に降ろしてもらう。
地に足がついてると、安心する。
「あれ? 雪ウサギは?」
「倒した」
一瞬で雪ウサギを倒した上に、落下ダメージから救ってくれたらしい。
途中から目をつぶっていたので、全然見ていなかった。
「なかなか難しいね」
近くだと当てやすいけど、外した時のリスクが大きい。
しっかり狙おうと構える分、次の行動が遅れちゃう。
「通常だけできついなら、弓スキル覚えればいい」
「前提スキルがあるんだよね?」
「さっきの言ったのは弓メインが使ってるスキル」
「他のスキルもあるんだ」
さすがに、スキルが3つだけってことはないよね。
「前提なしスキルならすぐ取れる」
「初心者におすすめなスキルって、何かある?」
「スマショ、スロット、デイリー」
「えーと……?」
略語が多くて、すぐにはピンとこない。
「『スマッシュショット』はスマの弓版。吹き飛ばし効果。SLv上げればメイン火力にもなる」
「距離を取りながら戦えるのは、弓と相性がよさそう」
吹き飛ばし効果は便利。
ちゃんと当てることができれば、一方的に攻撃できるかも。
「『スロウショット』は鈍足効果。一部ボスにも効く」
「スマッシュショットと組み合わせたら、安定感が増しそうだね」
「矢の速度も鈍足だから当てづらいが」
「それは難しいかも」
相手だって避けたりするし、当てるコツなども覚えないとダメっぽい。
「『ディレイショット』は発射してから数秒後に飛んでく設置スキル。デイリーから通常矢で連撃できるし、外した時の保険として使える」
「『ディレイショット』なのに『デイリー』なの?」
「βの時にスペル間違いで『daley shot』となってたのが元。誰ショと呼ぶ人もいる」
「なるほど」
今のボクだと、一番欲しいスキルかもしれない。
これがあれば、安心して外せる。
いや、外さないことが一番なんだけど。
「先読みしないと当たらない点と、威力がしょぼいのが難点だな」
「あくまで保険用のスキル、って感じかな?」
「うまく使えば、多タゲの処理にも役立つ」
「うまく使えればいいけど……」
スキル説明を開いて、内容を確認する。
ディレイショット:一定時間その場にとどまってから飛んでいくスキル。とどまる時間は設定可能。スキルレベルを上げることにより、時間設定の範囲と、設置数を増やすことができる。デイリーショットとも読む。決して間違えたわけじゃない。
スキル習得条件:弓、クロスボウ、カタパルト系を持つ
消費SP:1
「1ならいいかな」
迷わずスキルを覚える。
ポイントが足りなくなったら、レベル上げをがんばればいい。
「えーと……」
攻撃スキルなので、モーション発動にしとこう。
デフォルトのモーション発動を見て、その真似をする。
じゅぃーん。
ほんのりと、矢が光り出す。
発動準備が完了したら、普通に撃てばいいのかな?
「わぁ」
ホントに、矢が空中で止まってる!
しばらくすると、時が動き出したかのように飛んでいった。
これはおもしろいかも。
「キャンセルできるスキル(※1)もあるから、それも合わせると死ににくくなる」
「キャンセル?」
「実際に見たほうが早い」
そう言って、近くの雪ウサギにスマッシュを発動。
その直後……。
パリン。
何かが割れるような音。
それと同時に、青白い光が発生する。
「?」
本来なら、スマッシュの硬直で動けないはず。
でも、りょーちゃんは次の行動に移っていた。
短剣が光り、それを振り抜く。
前も見た、飛び道具スキルだ。
パリン。
その衝撃波を追いかけるように、りょーちゃんが走り出す。
落下してきた雪ウサギに、衝撃波がヒット。
続いて、りょーちゃんのダッシュ攻撃。
『ブフゥゥ……』
「こんな感じだ」
「えーと……何がどうなってるの?」
青白い光が見えたので、あれがキャンセルのエフェクトかな?
どうやってるのかは、わからなかった。
「最大MPの25%を消費で、スキルモーションをキャンセルできる。青いの出てただろ?」
「うん、それは見えた」
「そういうことだ」
「う、うん……?」
説明はそれだけだった。
「どうやるの?」
「デフォのモーションだと、スキル硬直中に両手を胸の前で叩く」
「スキル使ってから手を叩く、と……」
先ほど覚えたディレイショットで試してみる。
矢を放つまでは普通にやって……。
パリン。
手を叩こうとすると、何かが割れるような音がした。
一瞬遅れてから、パチンと手を叩く。
「あれ? 成功した?」
ステータスを見るとMPが減っていた。
できたらしい。
「キャンセルした時点で動き出さないと意味がない。MPだけ消費した棒立ちになる」
「あ、そうだね」
さっきの効果音が、成功の合図みたいだ。
よし。
次は、すぐに走ってみよう。
「……」
スキルを使って、キャンセルして……。
パリン。
走る!
「まだ最速じゃない」
「タイミングが難しいね」
ちゃんと練習して覚えないと、スムーズにできそうにない。
「あ、MPがない」
「常用してるとすぐに尽きる」
「MP切れが怖いから、常用しないほうがよさそう」
ここぞの時にヒールが使えないのは、死活問題になる。
使うにしても、しっかりMP管理をしないと。
「わざと最大MP減らした『コンボ型』も存在する」
「つまり……最大MPの25%消費だから、最大MPが低いほど使いやすいってこと?」
「ああ。MP回復装備で固めれば、ガンガン使っていける」
「おもしろそうだね」
「MP回復装備自体の需要が高いから、集めるのが大変だが」
「ボクには関係ない話だった」
所持金12G。
雪ウサギを倒していたら、少しは増えないかな。
新しいスキルも取ったし、狩りを続けよう。
座ってMPを回復してから、次の相手を探しに行く。
「……」
まずは、なるべく遠距離から攻撃を当てて……。
ぶすり。
『ブフゥウウウ!』
自己強化しているようなので、もういっちょ。
ぶすり。
ズドドドドドド!
近寄られる前に、ディレイショットを設置する。
保険ができたので、通常攻撃。
サッ。
それを見た雪ウサギが、華麗なステップで避ける。
そして、遅れて発射された矢が、同じ軌道で外れていく。
「……」
うん。
同じところに撃っても、意味がないよね。
突進をステップでかわし、距離を取るように移動する。
360度あるんだから、まっすぐ同じ方向からくるわけじゃない。
うまく当てるには……。
「……」
しっかり距離を取ってから、矢を設置。
ズドドドドドド!
突進がきたので、弓を構えて待機する。
サッ。
ディレイショットに反応して避ける。
そこを狙って……。
ぶすり。
当たった。
再び距離を取って、再設置。
次の行動に備える。
『ゥゥゥ……』
ジャンプ攻撃なので、空中に弓を構える。
ぴょいーん。
しっかり引きつけて……。
ぶすり。
落とす。
『ブブブ……』
お腹を出して、もぞもぞしている。
ジャンプ中に攻撃を当てると、チャンスが生まれるらしい。
ロッドに持ち替えてから接近し、べしべし殴る。
ムキィ!
べしべし殴る。
ムキィ!
べしべし殴る。
『ゥゥゥ……』
弓に持ち替え。
ぴょいーん。
飛んできたところを攻撃。
またお腹を出していたので、殴れるだけ殴る。
『ブフゥゥ……』
倒せた。
「確かに便利かも」
立ち回りの幅が広がるので、安定性が増した感じがする。
弓自体に慣れてきたのもあるけど。
「よし」
もう少し練習したいので、他の雪ウサギに手を出していく。
できるだけ距離を取りながら、ディレイショットをばらまく戦法。
たまに外すこともあるけど、逃げる時間は確保できる。
そんな感じで、しばらく数をこなしていき……。
ぶすり。
攻撃を当てて、矢を設置……。
「あれ?」
矢筒に手を伸ばすが、何もない。
もしかして……。
「……あ」
アイテムを確認すると、矢の本数が0になっていた。
いつのまにか、全部使い切っていたらしい。
ズドドドドドド!
「ちょっと待って!」
あわてて武器を持ち替える。
ジャンプ攻撃は落とせないので、それ以外の行動に対応する。
突進の後の硬直か、ポーズを取ったあとを狙う。
パターンはわかっていたので、どうにかロッドだけでも倒すことができた。
「危なかった……」
慣れてきたからって、油断したらダメだよね。
消耗品を使うなら、その辺の管理もしっかりしないと。
矢が足りません!
矢が足りません!
矢が足りません!
矢が足りません!
矢が足りません!
やたら張り切るシステムメッセージ。
※1、スキルキャンセル:もっさり硬直オンライン待望のスタイリッシュアクション!
でも、元々『通常攻撃』→『スキル』は硬直時間のせいで連続攻撃にならないので、もっさり具合は健在。
MP消費も一律25%なので、連発も難しい。
2人以上で連携したらスキルキャンセルしなくても連続攻撃が可能なので、PTプレイを主にしている人たちにはあまり必要がない。
私のような万年ぼっちプレイヤーは必修科目。




