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雪ウサギ1

 迫りくるムキムキマッチョな雪ウサギ。

 やたらと美しいフォームで走るその姿は、有無を言わせぬ迫力がある。

 オーガスケルトンより怖いかも。


 ビュン!


 近づかれないよう、矢を放つ。


 サッ。


「避けた!?」


 機敏な動きで矢をかわし、そのまま突っ込んでくる。


「っ!」


 つかまれそうになったので、ステップで回避。

 次の矢を……と思ったけど、相手の動きが速い!

 再度やってきた突進を避けて、武器をロッドに持ち替える。


『ブフゥウウウ!』


 マッスルポーズを取りながら、雄叫びを上げる。


 もやーん。


 赤いもやのようなモノが、雪ウサギの体から立ちのぼった。

 なんだろう?

 自己支援?

 見るからに危険そうな感じ。


『ゥゥゥ……』


 ぐっと深くしゃがみ込み……。


 ぴょーん。


「えっ?」


 跳んだ。

 背丈の何倍もの高さ。

 見上げるほどの高さを跳び……ボクの真上に降ってきた。


「っ!」


 ズガァアアアアアン!


 飛び込むようにして、なんとか避ける。


「……」


 恐る恐る振り返ると、地面にクレーターができていた。

 あんなのが直撃したら、確実にやられちゃう!


『ゥゥゥ……』


 再びしゃがみ込む。

 また跳ぶ気だ!

 そうはさせないと、距離を詰めて攻撃する。


 ポコ。

 ポコ。

 ポコ。


 体重差は関係ないようで、スケルトンなどと同じく3発でノックバックする。


 ムキィ!


「?」


 よろめきから復帰した雪ウサギが、背中を向けてポーズを取る。

 さっきみたいなエフェクトはないけど、これも特殊効果かな?

 だったら、次の行動に移る前に止める!


「えいっ!」


 ポコ。

 ポコ。

 ポコ。


 ムキィ!


「??」


 再び同じ行動。

 でも、ちょっとポーズが変わっている。

 どんな効果なのか気になったので、距離を取って様子を見る。

 ……。

 ……。

 ……。


 ムキィ!


 微妙にポーズを変えて、背中でアピールをしてくる。


「うーん……?」


 よくわからなかった。

 特に何もしてこないから、攻撃してもいいんだよね?


 ポコ。

 ポコ。

 ポコ。


 ムキィ!


 ポコ。

 ポコ。

 ポコ。


 ムキィ!


 ポコ。

 ポコ。

 ポコ。


 ズドドドド!


「わっ」


 今回は突進してきた。

 横に避けて、止まったところを攻撃。

 ノックバックからの……。


 ムキィ!


「???」


 目に見えないだけで、何かしらの効果があるのかもしれない。

 考えていても仕方ないので、すきを見つけては攻撃を入れていく。


『ブフゥゥ……』


「やっと1匹……」


 今までのモンスターと比べると、HPが高い。

 何回叩いたんだろう?

 1匹倒すだけでも、ずいぶんと時間がかかってしまった。

 新しい行動パターンもあって、判断に迷う部分もあったし。


「りょーちゃん」


 テンポよく狩り続けているりょーちゃんに、声をかける。


「なんだ?」

「あの……不思議なポーズって何?」

「筋肉を見せつける」

「?」


 説明を聞いてもわからなかった。


「様子を見るの一種だな」

「何か効果があるわけじゃなかったんだ」

「あと『尻をかく』のパターンもある」

「不思議なパターンだね」


 その分チャンスが多いようなので、攻撃する側としては助かる。

 行動パターンが読めれば、スキルを叩き込むこともできそうだ。


「弓ならどのパターンでも対処できるぞ」

「ジャンプ攻撃も?」

「ああ。空中でものけぞり判定あるから、当てれば落とせる」

「当たらないんだよね……」


 10発撃って、1発当たるかどうか。

 動いてる相手となると、なおさら。


「弓の適正距離はここだぞ」


 そう言って、雪ウサギの真横に移動する。

 ほとんど触れ合う近さ。


「たしかに、その距離なら当たるだろうけど……」

「距離によって威力変わるから、近いほうがはかどる」

「そこまで近いと、弓である必要性があんまりないような……?」


 弓だと、矢を取り出すという動作が必要になってくる。

 それを考えると、近接武器で直接殴ったほうが強そうな気がする。


「攻撃速度上げてGA(ガトリングアロー)してれば、遠距離耐性ない敵は一方的に射殺せる」

「そんなスキルがあるんだ」

「よく使われてるのは、GA、レイン(アローレイン)骨ショ(ホーネットショット)(※1)」

「う、うん?」

「『ガトリングアロー』は弦を引くだけで自動的に矢が装填されるスキル。他のスキルと併用はできないが、相手を蜂の巣にできる」

「それは便利そうだね」


 これは欲しいスキルかもしれない。

 引くだけで矢が撃てるなら、多少外してもリカバリーできそうだし。


「『アローレイン』は広範囲スキル。範囲と火力はトップクラス」

「強そうだね」

「支援乗せたレイン特化だと、その辺の雑魚は一瞬で消滅する」

「すごい!」


 範囲攻撃だったら、攻撃も当てやすそう。


「火力が足りないと、無駄にタゲ(ターゲット)集めて死ぬが」

「確実にそうなる!」


 まだレベルも低いし、装備もまったくそろっていない。

 弓をサブ武器として使うなら、取得は後回しかな。


「『ホーネットショット』は最大5本の矢が自動で敵を追尾するスキル。方向さえあってれば、どんなヘタクソでも当てられる」

「今のボクにこそ必要なスキル!」

「前提スキルとクエスト必要だから、すぐには取れない」

「残念」


 まだメインの支援スキルすら全然取れてないし、取得するにしてもかなり先になりそう。


「ディレイも少ないし、単体も範囲もすべてコレ1つで済む」

「いいなぁ」

「自動追尾だから弱点狙いづらいし、余計なタゲ拾ってきて自爆することあるが」

「いいことばかり、ってわけでもないんだね」

「人気スキルだからクエスト素材が高騰してる。骨ショ強化エンチャ(※2)も1個1Mする」

「あー……」


 所持金12Gのボクには、100万Gなんて無縁の世界。

 なかったことにしよう。


「この中で取得するなら、ガトリングアローかな?」

「回転が速くなるだけだから、当たらないと意味ないが」

「がんばります……」


 練習して当てられるようにしよう。


「復活薬持ってきてるから、安心して死んでいい」

「やってみる」


 次の雪ウサギへ狙いを定める。

 せめて、止まってる相手にくらいは当てられるようにならないと……。


 ぶすり。


「やった!」


 狙った体ではなく、お尻のほうギリギリ。

 それでも、今回は1発で当てることができた。


『ブフゥウウウ!』


 赤いオーラに包まれる。

 よく見たら、雪ウサギの名前の横に剣のアイコンが表示されていた。

 怒りで攻撃力アップ、といった効果かな?


『ゥゥゥ……』


 次はジャンプがきそう。

 しっかりと弓を構えて、待機する。


 ぴょーん。


 すぐに放ちたくなるけど、ここは我慢。

 空中にいる状態なら、避けることはできないはず。

 当てる自信がないなら、当てられる距離まで引きつければいい。

 もっと……もう少し……。

 ギリギリまで……。


 ビュン!


『ギェエエエ!』


 近距離で放った矢が、雪ウサギの体に刺さる。

 物理法則を無視した軌道で、少しのけぞってから下に落っこちる。


「……ふー」


 空からムキムキマッチョが降ってくるので、緊張した。

 外したら直撃しちゃうし。


『ブブブ……』


 ひっくり返った雪ウサギが、お腹を出したままもぞもぞしている。

 チャンス!

 すぐさま、攻撃に移り……。


 ぺちっ。


「あっ」


 弓のまま殴っちゃった!


『雪ウサギに1のダメージ!』


 ダメージ通るんだ!

 攻撃力は高くないけど、近接攻撃としても使えるらしい。


 ムキィ!


 チャンス行動がきたので、持ち替えて通常……いや、スマッシュが間に合うかも?

 ダメだとしてもりょーちゃんが復活させてくれるし、やるだけやってみよう。


 ぽっこーん!


 間に合った。

 追撃はせず、また弓に持ち替える。

 弓を構えながら、起き上がりの行動に備える。


 ズドドドド。


 走り寄ってきたので、しっかりと引きつけてから放つ。

 すぐ近くなら、多少狙いがずれても……。


 ぽいーん。


「あっ」


 あさっての方向へ飛んでいく。

 そうだった。

 まっすぐ飛ばないことも多いんだった。

 ギリギリまで引きつけたので、すぐ目の前に雪ウサギが……。


 ガシィ!


 逃げる間もなく、その両腕でつかまれる。


「わっ!」


 空高く放り投げられた。

 その肉体をフル活用した怪力のおかげで、ぐんぐん上昇していく。

 さすがファンタジーの世界。

 ありえない高さから世界を見下ろし、そんなことを思ったりする。


「……」


 地面まで、何メートルあるだろう……?

 現実だったら、大事故間違いなし。

 ゲームといえど、無傷ということはなさそう。

 上昇していた体が止まり、ゆっくりと地面に近づいていく。

 落ちる!

 ぎゅっと目を閉じ、落下の衝撃にそなえる。


 とさっ。


「っ!」


 痛……くない……?


「大丈夫か?」


 目を開けると、すぐそこにりょーちゃんの顔があった。

 このゲームの中では可愛い系寄りのモンスターです(ムキムキマッチョ)。


※1、骨ショ:ホーネットショット→ホネショ→骨ショと、連想ゲームみたいな略し方をするのが定番となっている。

 じゃあ、ガトリングアローはガトアロとかガトローじゃないのかと思ったりするが、それはなんか違うらしい。

 アローレインの場合は、アローン派が少数いる。


※2、エンチャント:よくある装備強化システムの1つ。

 スロットが空いている装備に付与できる。

 スキル威力アップや、太陽のまぶしさが軽減されるなど、確認されているだけでも数百種類の効果がある。

 モンスターがドロップするほか、クエスト報酬や、ポイント交換などで入手できる。

 現実世界で説明すると、カバンにアニメキャラの缶バッジを付けたり、服にアニメキャラのグッズを張り付けること。

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