トウヤと共同作業
「あれ? もしかして、俺らのせいで負担かけてた?」
「ごめん! この人数だと支援きついよね!」
たかしさんと好男さんもやってくる。
「なるべく支援に徹したほうがいいのかと思いまして……」
「SENRIちゃん」
トウヤさんがボクの前に座り、両手を握ってくる。
「手ぇ握ったぁー!?」
「どさくさに紛れて何やってんの!?」
「あ、あの……?」
「矢は当てられる?」
「こいつ気にせず話進めてるんだが!?」
「マジで何やってんの!?」
2人が引きはがそうとするけど、ボクの手を握ったまま動かない。
「えっと……動いていない相手なら」
「わかった。じゃあ、間に差し込んで」
それだけ言うと、残っている敵に向かって走っていった。
「おい、トウヤ!」
「ごめんね! あいつは善悪の判別がつかないだけで悪気はないから!」
「それもう悪じゃねぇか?」
「フォローしきれねぇよ!」
2人もあとを追う。
『間に差し込んで』ということは、連携するってことだよね?
急に言われても、ちゃんとできるか心配。
弓を構えてタイミングを計る。
パァンッ!
ダークアーマーの攻撃を避けて、右ストレートを入れるトウヤさん。
続けて左フック、右アッパー。
相手がノックバックしたところで、腰を落とした。
ナックルが赤く光り出す。
スキル準備!
ビュン!
考えている時間もない。
すぐさま矢を放つ。
キンッ。
矢に反応して、腕で弾く。
やっぱり、矢は通じないらしい。
でも、硬直時間は生まれる。
ドガァァァァァァ!!
トウヤさんから放たれたスキルが、ダークガードに命中する。
しっかりとタメ時間を作った、右ストレート。
巨体がよろめく。
「……」
次の矢の準備をする。
トウヤさんは……まだ硬直中。
先に動き出したダークアーマーが斬りかかる。
サッ。
ステップで回避。
その動きに合わせて、矢を放つ。
キンッ。
今度はちゃんと当たった。
けど、遠距離耐性のせいで、ほとんどダメージはない。
バゴォーーン!
その硬直時間を逃さず、トウヤさんがスキルを入れる。
ボクの動きは見えていないはずなのに、流れるように連携している。
パリン。
スキルキャンセルからのダッシュ攻撃で、とどめを刺す。
動きがとてもスムーズ。
りょーちゃんと同じくらいこのゲームをやり込んでいるのかも?
「なんかいい感じにアレしてるじゃん!」
「お前のその語彙力よ」
たかしさんと好男さんも、無事に倒し終わったようだ。
「てか、弓とかよく使えるね。前に拾った弓で試してみたけど『ぽい~ん』ってなって真っ直ぐ飛ばなかったんだが」
「ボクもなりました! 今でも油断しているとなっちゃいます!」
「……」
「……」
「?」
急に黙る2人。
何か変なことを言ってしまったんだろうか?
「あの……?」
「ああ、なんでもないなんでもない」
「そうそう、ちょっとささやきが来てて」
「そうでしたか」
フレンドチャットは他人には聞こえない仕様。
そちらに集中している間は、反応できないこともある。
『……(ボクっ娘属性持ってるんだが?)』
『……(黒髪ショートのボクっ娘ロリとか俺に特攻が刺さりすぎる)』
『……(あんな上目遣いで言われたらオニーサン過呼吸になっちゃう)』
『……(今回ばかりはトウヤの空気読めなさに感謝だな)』
『……(こっち見てる。可愛い。たまらん)』
『……(もうロリコンでもいいや)』
『……(ますますクラスの女子の視線が冷たくなるな……)』
『……(こっちが笑顔で接してもキモがられるから仕方ないじゃん!)』
『……(そりゃおっぱい見るからだろ)』
『……(おっぱい見たくらいで警戒するのはやめてほしい!)』
『……(しっかり見てるんだな)』
『……(そりゃ見るよ! おっぱいだもん!)』
『……(SENRIちゃんにはおっぱいないけど)』
『……(そのうちバインバインになるよ! 数々のおっぱいを見てきた俺が言うんだから間違いない!)』
『……(ロリ巨乳……とんでもなく母性があふれちまうな)』
『……(最高だな)』
『……(最高だわ)』
千里くんがバインバインになると大胸筋が暴れ出すがよろしいか?