3人組襲来
「……」
手元のレース付きリボンを見る。
ご厚意で譲り受けた物だし、装備しないわけにもいかない。
覚悟を決めて、リボンを頭へ……。
「?」
これって、どうやって付けたらいいんだろう?
『自分でリボンを付ける』なんてことは、当然経験がない。
ある程度場所を選べるようなので、なるべく目立たないようにしたい。
「買ったのか」
「あ、りょーちゃん」
あれこれ方法を考えていると、りょーちゃんがやってきた。
「これを装備したいんだけど……」
「場所はどこがいい?」
「できるだけ目立たないところで!」
「わかった」
りょーちゃんにリボンを渡し、ほどよい場所に付けてもらう。
「ど、どう……?」
「いいんじゃないか?」
「変じゃない?」
「ああ」
手で触って確認する。
りょーちゃんがそう言うなら、大丈夫なはず。
「彼氏にやってもらうとか……甘酸っぺぇなぁ、オイ」
「誠に」
MOZUさんとナビ子さんが、うなずき合っていた。
「若いって、いいな」
「まぶしすぎて心が浄化されるかと思いましたよ」
「心どころか、体ごと浄化されてんぞ?」
「何を言ってるんですか。癒しの象徴たるナビ妖精が青春の波動を浴びたくらいで……んん? 力が……抜けてい……く……」
よく見たら、またナビ子さんが薄くなっていた。
教会からはだいぶ離れているけど、まだ効果が続いているのかな?
「もういいのか?」
「うん、欲しい物は買えたよ」
予想以上にお安くしてもらったおかげで、資金に余裕はある。
それでも、他の装備を買えるほど残っているわけじゃない。
まずは全身装備が目標なので、もっと稼がないと。
「行くか」
「うん」
いつものように、闇に潜む城があるインスタンスダンジョン方面へ。
りょーちゃんはソロでも通っているみたいだけど、まだお目当ての短剣はドロップしないらしい。
『おっ! いたいた!』
広場を通ると、たくさんの人でにぎわっていた。
いつもより多い気がする。
ぶつからないよう、道の端を歩く。
『おーい!』
待ち合わせをしている人たちが、声を掛け合っている。
周辺チャットの表示を出しておいたら、すごい勢いで流れていきそう。
『リョウ! 待ってくれ!』
「?」
りょーちゃんの名前が呼ばれる。
……といっても、名前の重複が可能なゲーム。
これだけ人がいるんだし、別人の可能性も高い。
「俺だよ俺! 俺だって!」
そう叫びながら、りょーちゃんの肩をつかんでくる。
別人じゃなかったようだ。
りょーちゃんの知り合いかな?
どことなく、聞き覚えのある声のような気も……。
「うぃーっす!!」
正面に回り、元気にあいさつする田中くん。
……。
……。
……。
田中くん!?
「いやー、探したぜ」
「つーか、人多すぎてヤバいわ」
「おー、なんか装備かっけーじゃん」
田中くんだけじゃなく、鈴木くんや、佐藤くんの姿も。
「どう? びっくりした?」
「ああ」
「びっくりさせてやろうと思って黙ってたんだぜ!」
「つーか、その名前ナニ? krbrx……なんて読むの?」
「お前の名前も酷いじゃん」
「えー? かっこ良くね?」
ニックネームを使っているけど、間違いなくクラスメイトの3人。
近いうちに端末が届くと言っていたけど、今日だったんだ。
「ところで、そっちの女の子は?」
「!?」
とっさにりょーちゃんの後ろに隠れる。
ど、どうしよう。
顔を見られたら、バレちゃう!
「あれ? ナツ……?」
遅かった!
ばっちり目が合ってしまう。
「え? マジで?」
「マジだ! ナツじゃん!」
いつものように声をかけてくる。
その様子は、学校で会う時と変わらない。
見慣れているので、逆に女装には気づかない可能性も……。
「あれ? それって、女物の服だよな……?」
「あ、ホントだ。なんでそんなものを……いや、別に似合ってないってわけじゃないが」
「ほー、このゲームって女装もできるのか」
そんなわけがなかった。
やっぱり違和感があったようで、すぐにその話題になる。
「……あれ? 事前に聞いてた話だと、性別違う装備は無理だって聞いたような?」
「あー、何か聞いたことあるな。頭のリボンすらダメなんだっけ?」
「正式サービスから頭装備は解放された」
りょーちゃんが補足する。
「じゃあ、服は?」
「無理」
「……」
「……」
「……」
3人の視線が、ボクに集まる。
まともに目を合わせられないので、ひたすらうつむく。
「……ということは、女キャラで始めたってことか」
「ああ、そういうことか」
「見た目が変わってないから気づかなかったわ」
うう、逃げ出したい……。
女装した上に、性別を偽ってゲームをしているなんて、絶対に変だと思われる。
「……でも、ゲーム開始する時にキャラクリってできたっけ?」
「さぁ? 説明とか全部スキップしたし」
「そもそも選択画面すら出てこなかったぞ」
「なぁ、リョウ。キャラクリってできる?」
「できない」
はっきりと答える。
「え? じゃあ、つまり……ナツって……」
「なんてこった……」
「うすうすは気づいていたけど、まさかホントにそうだったとは……」
じーっと見つめてくる。
どうしよう……。
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決して作者がめんどくさくなったわけではありません。
違います。
信じてください。




