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千里くんのステータスは、どこかヘン?  作者: よさげ
リザレクション取得クエスト
112/1588

温泉回

『おつー』

『援軍さんきゅー』

『まーーーたポーションだよ!』

『あれ? このゲームって敵を倒してポーションを集めるゲームだよな?』

『間違いない』

『倉庫の在庫が4ケタ突入しそうなんですが……』

『ブラックカイマンさん、何か出ました?』

『んー、新鮮なゾンビ汁』

『びみょーっすね』

『エンチャ以外うま味ないしなぁ』


 参加報酬の話題で盛り上がる。

 攻撃には参加していなかったけど、ボクのところにも届いていた。



 ・抜け落ちたちぢれ毛×5



「りょーちゃん、必要数がそろったよ」

「次は温泉か」

「うん」


 予定数より多くなったけど、多くて困ることはない。

 アイテム合成だと、失敗する場合もあるかもしれないし。


「行くか」

「あ、ちょっと待って」


 まだ倒れたままの人もいる。

 ゾンビ化していた人たちだ。

 在庫がある分だけ復活薬を使っていく。


「お待たせ」

「町」

「うん、わかった」


 帰還の羽を使い、いったん町へ戻る。

 道具屋でアイテムを補充してから、りょーちゃんのあとをついていく。




 町を出て、南へ進む。

 ひたすら南へ。

 道中、ネコっぽいモンスターや、カメっぽいモンスターがちらほら。

 アクティブではないようなので、その横を素通りしていく。

 草原を抜け、森を抜けた先。


「着いたぞ」

「……ここ?」

「ああ」


 穏やかな流れの小川と、小石の転がる川原。

 辺りを見ても、温泉らしき物は見えない。


「川だよね?」

「川だな」


 川だった。

 もしかすると、この川が温泉なのかも?

 近くまで行って、手を入れてみる。


「……?」


 感覚フィルター制限のせいか、ほんのり冷たいとしか感じなかった。

 湯気も出ていないし、どう考えても普通の川としか思えない。


「掘るぞ」

「ここを?」

「ああ」


 そう言って、川から離れた場所の石を動かし始める。

 ここを掘ると、温泉が出てくるんだろうか?

 とりあえず、りょーちゃんと一緒にに穴を掘る。

 スコップなどはないから、素手でせっせと。

 ある程度石をどかすと、砂地が見えてきた。

 さらに掘り進める。


「?」


 水が出てきた。


「……うーん?」


 触ってみても、やっぱり温泉といった感じはしなかった。

 りょーちゃんは黙々と掘り続けているので、ボクもそれに習う。

 崩れてこないように石を積み重ね、掘った土で固めていく。


「こんなもんだな」

「これでいいの?」

「ああ」


 そんなに深く掘ってない。

 座って入って、ギリギリ腰まで届くかどうか。


「これからどうするの?」

「待つ」

「?」


 何もしなくていいらしい。

 その場に座って攻略サイトを開いていた。

 ボクも隣に座って、何かが起こるのを待つ。




「?」


 しばらく待っていると、何かがこちらに近づいてきた。


 モンスター……ではなさそうだ。

 赤いネーム表示がないので、一般の動物っぽい(※1)。

 大きさは1メートルくらいで、特徴的な鼻をしたネズミのような姿。

 動物園で見たことがある。

 カピバラさんだ。


 ちゃぷん。


 跳ねるようにして、穴の中に飛び込む。

 水につかったまま、じっとする。


『……』


 気持ちいいのかな?

 どこか遠くを見ながら、ゆったりとくつろいでいる。


『……ぶぇっくし!』


 くしゃみした!

 ちょっと冷たかったのかもしれない。

 のそっと立ち上がり、ブルブルと水分を飛ばす。


『……がふっ』


 しっぽを振りながら、どこかへ歩いていった。

 りょーちゃんの反応はないので、引き続き待つことにする。




「?」


 また違う動物がやってきた。

 遠目で見ても、かなりの大きさ。


『パオーン』


 象さんだった。

 のっしのっしと近づいてきて、穴の中に座り込む。


『……』


 はみ出てる。

 ……というより、ほとんど入ってない。

 もう少し、穴を広げたほうがいいのかな?


 べたーん。


 地面に転がって、水浴び(?)を楽しむ。

 ある程度転がって満足したのか、のそっと立ち上がる。

 そして、来た時と同じように、ゆったり歩いていった。

 りょーちゃんは、まだ動かない。




 バシーン、バシーン。


「?」


 何かを叩くような音。

 なんだろうと振り返ると……。


 バシーン、バシーン。


 ふんどし一丁のおじいさんが、体をタオルで叩いていた。

 プレイヤー……なのかな?

 髪やヒゲは、真っ白。

 深く刻まれたシワは、相応の年月を感じさせる。

 服装からすると、5町の人かも?


「こんにちは」


 すぐ近くまで来たので、あいさつする。


「……(ニコッ)」


 くしゃっと笑い、先ほど掘った穴に座る。

 象さんが入った後ので、ほとんど水は残っていない。


 ぺちーん。


 頭にタオルを乗せ、体全体を伸ばす。

 気持ちいいのかな……?

 表情を見る限り、くつろいでいるように見える。

 せめて、もう少し水を入れたほうがいいような……。


「?」


 水が増えてる……?

 いつの間にか、おじいさんの腰の辺りまで増えていた。

 よく見たら、湯気らしき物も漂っている。


 バチーン!

 バチーン!


 おじいさんが立ち上がり、タオルで体を叩き出す。

 体の水分を取っている。

 ある程度ふき終わると、どこかへ歩いて行った。


「……」


 不思議な感じの人だった。

 ゲーム内を巡り歩くのが趣味の人、とか?

 素材集めなどもあるし、ぶらぶら旅をするのもアリなのかも。


「あれ?」


 掘った穴を確認する。


「これって……お湯になってる?」


 ほどよい感じに湯気が出ていて、露天風呂のようになっていた。

 少し黄色っぽい色なのは、硫黄か何かの影響だろうか。


「温泉妖精だ(※2)」


 今まで静観していたりょーちゃんが、動き出す。


「妖精さんなんだ」


 言われてみれば、名前表記がなかったような気も?

 ナビ子さんと比べると、ずいぶん違った見た目。

 大きさも人並みだし、羽も生えていない。

 同じ妖精さんでも、役割によって違うのかな?


「採取できるぞ」

「あ、そうだね」


 温泉ができたわけだし、目的を達成しないと。

 前にクエストで使ったビンに入れて、採取完了。

 アイテムの説明を見る。



 しゅわしゅわの水:温泉の妖精の体から染み出したエキスたっぷり。舌と目にくる刺激的な味わい。ほんのり加齢臭。



 妖精さんの体から、温泉の元が出てくるらしい。

 現実世界にいたら、お風呂代の節約になりそう。


「戻るか」

「あとは……ちぢれ毛を火にかける?」

「フライパン使えばいい」

「なるほど」


 前に料理をしたことがあるので、それを使えばいい。

 町に戻って、調理場へ移動する。

 ナビ子さんも切望していた温泉回です。

 全裸、全裸、半裸と、できる限り攻めてみました。


※1、野生動物:その辺の動物。

 モンスター以外の動物も普通に生活している。

 攻撃対象ではないので、プレイヤーからは攻撃できない。

 たまにとんでもなく高ステータスの個体も生まれてくるので、フォールドボスと対等に渡り合っているヒヨコなども目撃されている。


※2、温泉妖精:液体を温泉にする能力を持った癒しの妖精。

 見た目はふんどし姿のおじいちゃん。

 妖精の羽は背中のシワの中に埋まっている。

 ユニーク個体だと温泉が泡風呂式になる。

 常にぷるぷるしているので、触っているとマッサージ効果もある。

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