ファーストダンジョンボス戦
「……」
ボス部屋だけあって、結構広い。
そして、中央にいる大きいモンスター。
「あれがボスだよね?」
ここからでも、大きさがよくわかる。
隣にいる赤スケルトンの倍くらいある。
「オークスケルトンだな」
「見ただけでも強そう」
人とはあきらかに違う骨格。
横幅もすごいし、手に持った斧が小さく見えるほど。
もし攻撃に当たったら、体が真っ二つになりそうだ。
「赤スケルトンのAIに範囲攻撃が追加されてる。斧振り上げが目印。見てからステップで余裕」
「……一応、参考にしておくね」
りょーちゃんの言う余裕が、普通の人の余裕とは限らない。
斧に注意しよう。
「取り巻きはどうするの?」
オークスケルトンの他に、赤スケルトン2体、弓スケルトン2体がいる。
むやみに近づいていったら、すぐに囲まれて倒されてしまう。
「1匹ずつ釣ったほうが楽なんだが……」
「あ、なんかイヤな予感が」
「突っ込んだほうがおもしろい」
中央に突撃していく。
強敵とか乱戦とかが好きなりょーちゃん。
デスペナルティーはきつくないみたいだし、こういう無茶もありかな。
「ヒール!」
弓スケルトンのターゲットを1つ取り、赤スケルトンに攻撃を仕掛ける。
3体同時は自信がないので、りょーちゃんに任せよう。
「!」
攻撃する直前で、カウンターの構えを取る。
危ない危ない。
油断していたら、ボス以外にやられてしまう。
「来るぞ」
「!?」
りょーちゃんの声に振り返ると、ボスが斧を高く振り上げていた。
斧が黄色く光り、地面に振り下ろされる。
ボゴォオオオオオ!
地面がえぐれ、衝撃波が発生する。
かなりの勢いで、部屋全体に広がっていく。
「えいっ!」
なわとびをする感覚でステップ。
ゴウッという音と共に、衝撃波がすり抜けていく。
「できた!」
と喜ぶ間もなく、矢が飛んでくる。
ビュン!
転がりながら避けると、今度は目の前に赤スケルトンが。
「忙しい!」
逃げ回るだけで精一杯。
りょーちゃんは、3体同時でも平然としている。
ドゴォ!
横からやってきたりょーちゃんが、弓スケルトンを吹っ飛ばす。
1発で弓スケルトン撃破。
平然としているどころか、こっちの相手にちょっかい出す余裕すらあるようだ。
カタカタ……。
目の前で防御の構えを取ったので、スマッシュを叩き込む。
ダウンしたところを、りょーちゃんが攻撃。
赤スケルトンも撃破。
うん。
基本攻撃力が違いすぎる。
「あとは……」
今度はこっちから助けに行こうと思ったら、すでにボスとの一騎打ちになっていた。
HPは減ってないし、ブレスをかけ直すにはまだ早いし……。
どうしようかな?
ヘタに手を出して邪魔しても困るし、しばらく様子をうかがう。
「……」
やっぱり、りょーちゃんうまい。
こうして見ると、動きの違いがよくわかる。
必要以上に避けたりしないし、相手に合わせた行動が早い。
パターンとか、全部覚えてるのかな?
グオオオ!
オークスケルトンの行動が止まる。
あれは……カウンター?
「……」
りょーちゃんが、チラっと目くばせしてくる。
何かをしてほしい合図。
現状で、ボクができることは……。
「ヒール!」
ヒールを入れて、カウンターを崩す。
ドゴォ!
即座にスマッシュで合わせてくる。
これで正解だったみたい。
「スマ準備頼む」
「わかった」
まだ何か狙ってるようなので、言われた通りロッドを構える。
ブゥン!
りょーちゃんが振るった剣先から、剣と同じ形の衝撃波が出る。
飛び道具系のスキルっぽい。
オークスケルトンの起き上がりに当たり、その巨体が一瞬よろめく。
「!」
ここしかない!
すぐさま準備していたスマッシュを解き放ち、思いっきり振り上げる。
ぽっこーん!
体格差などなかったかのように、吹っ飛んでいく。
スキルってすごい!
「……?」
飛んでいった先で、りょーちゃんが構えている。
かなり低い体勢。
後ろ手に回した剣が、赤く輝いている。
ドスーン!
ボスがダウンしても動かない。
剣がさらに輝き出す。
ボスが動きだし、起き上がるギリギリになって……。
ザシュ!
一閃を放った。
『オークスケルトンに219のクリティカルダメージ!』
ズゥウウウン……。
オークスケルトンが倒れる。
『ミッションをクリアしました!』
ポップな感じの文字と、ファンファーレの音。
あと、クラッカー発射みたいなエフェクトが巻き起こる。
レベルも一緒に上がったようなので、とてもにぎやかな雰囲気に。
「結果画面とかあるんだ」
クリアタイム
倒した敵の数
倒された数
最大ダメージ
最大被ダメージ
支援ポイント
といった各項目と、総合評価。
今回の評価は『S』になっている。
「1デッド以内でタイム早ければ、だいたいSになる」
「評価高いといいことあるの?」
「クリア経験値がちょっと増える。B以下を基準に、Aが5%、Sが10%」
「ちょっとお得だね」
1回くらいでは誤差かもしれないけど、周回する場合は重要になりそう。
「それより!」
気になったことを聞いてみる。
「最後、すっごいダメージ出てなかった?」
200超えが見えた気がする。
ボクのスマッシュの10倍以上。
「現パッチ(※1)で最高クラスの単体攻撃だからな」
「しばらくためてたっぽいけど、そういうスキル?」
「前動作に2秒、チャージに5秒。敵の背後から弱点を突いた場合にのみ、ダメージが上がるスキル」
「……ロマンにあふれてるね」
「だろ?」
得意気な顔をするりょーちゃん。
「背後からはわかるけど、弱点って……?」
「敵によって違うが、頭とか股間といった急所狙うとダメージが増える」
「そうなんだ。全然気にしてなかったよ」
言われてみれば、ちょくちょくダメージのばらつきがあったような?
単純にダメージ幅のブレかと思ってたけど。
「バーサクとリミブレMAXにして、背水(※2)と状態異常時アップ(※3)取って、自傷(※4)からの特化武器(※5)なら、倍くらいまで伸ばせそうだが」
「えっと……よくわからないけど、攻撃かすっただけでやられそう」
「その通りだ」
「その通りなんだ!」
2体同時に来るだけできついゲームなのに、防御を完全に捨てるのは……。
りょーちゃんは、普通に取るんだろうけど。
「DPS(※6)でいったら、2刀でXスラか両手斧でヘビー連打したほうが高い。連携しないと、そもそも発動条件満たせないし」
「でも、最大ダメージ出るほうがかっこいいし?」
「ああ」
そうなると、できるだけボクがターゲットを取ったほうがいいよね?
防御を固めて耐える……のは、被ダメージを見る限り難しそう。
装備やスキルを整えるのにも、お金や時間がかかりそうだし。
ボクの反応速度だと、回避も難しい。
足止めや吹き飛ばしスキルなどで、行動を制限するのはありかな?
レベル上がってスキルポイントも増えたし、方向性について一度じっくり考えてみよう。
「ところで、町に戻るのはどうしたらいいの?」
「そこの報酬部屋から外に出られる」
ボス部屋の奥を指差す。
もう一部屋があるようだ。
りょーちゃんに続いて入っていくと、小さな部屋に宝箱が2つ置いてあった。
「これってパーティー人数分用意されるの?」
「ああ、好きなほう開けていいぞ」
「当たりはエンチャだっけ?」
「まず出ないが」
当たりが出ないかなー、と思いつつ開けてみる。
「ポーションだった」
「ポーション」
二人ともハズレ。
残念。
そう簡単には出てくれないようだ。
「こんなとこだな」
「実際に体感してみると違うね」
思っていたより『ゲーム性』が強いのかも。
発動準備と硬直時間があるので、ターン制バトルのシステムに近い感じ。
自由に動き回ることができないので、人によって合う合わないがありそう。
「でも……うん、すっごく楽しい!」
まだうまく動けないところも含めて、りょーちゃんとこうやって遊ぶのは楽しい。
最後に連携っぽいプレイもできたし、これからもっとおもしろくなりそうだ。
「そうだな」
あんまり表情には出てないけど、りょーちゃんも楽しそうだった。
ツイッター始めました。
何話かでりょーちゃんが言っていた『ゴリラみたいな見た目の女戦士』落書きを掲載しています。
もし気になる方がいらっしゃったら、一度ご覧いただければ幸いです。
https://twitter.com/yosagenanamae/status/1124908795841220609
※1、現パッチ:一番新しいバージョンのこと。
オンラインゲームでは、常に新しいアップデートやバグ修正などを行っていくので、最強スキルや最強装備が変化していく。
狩りでも対人でも最強と言われていた職が、アップデートにより普通以下の微妙な感じになることもしばしば。
現実世界だと、物忘れ、近いものが見えなくなる、耳が遠くなる、腰痛、異臭、漏らす、といった新しいパッチが、日々追加されている。
※2、背水:背水の陣スキルの略。
HPの割合が25%以下の時に攻撃力が上昇する捨て身のスキルその3
HPの割合が少ないほど上昇率がアップするので、HP1にして自然回復が止まる装備などとセット運用するのがおすすめ。
相手か自分は死ぬ。
※3、状態異常時アップ:状態異常(眠り、スタン、毒、混乱など)がある相手にダメージが上昇するパッシブスキル。
たくさんあるほど効果が高い。
現実世界で説明すると、ロリコンで、ショタコンでもあって、ドMで、露出狂で、臭いフェチで、常にビクンビクンしていて、なんかヌメっている人間に風当たりが強くなる現象と同じ。
※4、自傷:ドMのこと。
自らの体を傷つけて、ハァハァする効果を得る。
HPが低いほどダメージがアップするスキルがあるので、性癖以外にも使えたりする。
でも、そんなスキルを多用する時点で、ドMなのは否定できない。
※5、特化武器:ある特定のモンスターに対して特化した効果を持つ武器。
『ドラゴンキラー』や『神殺し』など、元から特化している装備もあれば、『海産物のモンスターにダメ―ジ10%上昇』などのエンチャントを複数使って特化させる場合もある。
『少年の足』『ソックス』『短パン』が私に対する特攻になります。
※6、DPS:何か英語の略。
これが高いと火力自慢の人がご満悦らしい。
10秒に1回100ダメージ与えるより、10秒に2回51ダメージを与えたほうが高くなる。
現実世界で説明すると、机の角に1回小指をぶつけるより、腹痛で5時間くらいトイレにこもったほうがDPSは高い。




