ステップバイステップ
テーン、テレレレッテレー、テレーテーレテレー。
音楽に合わせて必死に体を動かす。
ひたすら振り付けに集中して、見られていることを意識しないようにする。
「夏海くん! 笑顔笑顔!」
隣にいる女子がウィンクしてきた。
そうだった。
表情も審査のポイントとなるから、そこも注意しないと。
『ナツ!? 女装!? ナンデ!?』
『おいおいおいおい!?』
『え? え?』
『どういうことだよ……?』
『そういや、クラスの女子がなんか悪い顔してたな……』
『ああ、文化祭のときと同じく何か企んでる顔してた』
『じゃあ、またダマされて着せられたのか?』
『だろうな』
『ちょろすぎる』
『将来が心配になるわ』
『だからって、悪くはないけどね!』
『うむ! まったくもってこれっぽっちも悪いことではない!』
『これはいい悪だくみ』
『ナツのチアガール姿とか興奮するに決まってるじゃん!』
『太ももやワキがまぶしすぎる……』
『恥ずかしさをこらえている表情もたまらない……』
『うぉおおお!?』
『!?』
『今のって……!?』
『なんか白いのが見えたか!?』
『女子用のパンツもはいてるのか!?』
『なんだって!?』
『最高か! おい、最高か!!』
『いやっふーぅ!』
『ちょっともう今日の夜はヤバいかも……』
『これは……仕方ないって。うん』
『他のクラスの男子にもむせび泣いてるヤツとかいるし』
『拝んでる女子とかもいるな』
『……ん? あれは……小林か?』
『もう症状は治まったのか?』
『今ちょうどナツが応援合戦を……見せちゃダメなヤツだ!』
『来るな小林! こっちに来るな!』
『ストップ! 真下を向いてそのままバックだ! 何も考えずに保健室へ帰るんだ!』
『……ビョッ!』
『ダメだったーーーーーー!』
『小林ぃいいいい!?』
『小林から謎の緑色した液体が!?』
『……ジジジジジジ』
『しっかりしろー! 小林ーーー!』
『違うんだって! あれはちょっとした手違いなんだ!』
『ヤバいぞ! エサを求めて泳ぎ回るダイオウグソクムイみたいな動きに!』
『……ミ』
『小林ぃ! 人生をやめるんじゃない!』
『生きろ! 生きてくれ! 小林ぃぃぃ!』
『目つぶししてでも情報を遮断するんだ!』
『……ぴょ?』
『うおっ!?』
『今のジャンプ、完全に見えたよな?』
『ひらひらの純白パンツがはっきりと……ハッ!?』
『あっ』
『まさか、今のアレを小林が……』
『そんな……』
『……』
『なんか体が薄くなってきてるー!?』
『出ちゃってる! 口からなんか出ちゃってる!』
『早く戻さないと!』
『どうしたらいいんだよ!?』
『掃除機でもトイレのきゅぽきゅぽでも何でもいいから持ってくるんだ!』
『ダメだ! ナツの動きに合わせてどんどん上昇している!』
『落ち着け小林! あれは鎮魂の舞じゃない!』
『このままじゃ間に合わない!』
『あ……』
『体から離れて……』
『小林ィイイイイイイイイイイ!!』
『赤組応援団の皆様ありがとうございました。続きましては……』
出番が終わり、そそくさと退散する。
「みんなおつかれー!」
「おつかれさまー!」
「最高だったわ!」
「後列ポジションになれてよかった……」
「もう……ホント天使」
「ビデオはちゃんと撮れてるかな? それだけが心配」
「念のために正面3台、サイド各1台ずつ、バック1台、上空1台、ローアングル10台用意したから問題ないはずだ」
「チェック完了次第すぐにバックアップを取ろう」
「りょーかい!」
それぞれ感想を言い合っていた。
全体的にはすごくうまくいったと思う。
練習の成果を出せてよかった。
ボク個人としても、大きなミスを出さずに最後までできた。
ちょっと振り付けで遅れちゃった部分もあるから、そこが大きく減点されていなければいいんだけど。
●REC
●REC ☆ ●REC
●REC ●REC ●REC
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