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1、始まりは騒がしく②

遅れました!

というのもゲームの方で昨日からハロウィンイベントが!!

ストーリーが前半後半に分かれてるとか異常か!!?

「大丈夫か? 相当痛そうだが?」

「…大丈夫に見えるか? (さくら)

「いや、見えん。全くもって見えん。いつものだな、と考えつつもいつもの流れで言っただけだ。その様子だとまた酷くやられたみたいだな」

「…ああ、そうだよ!! あのババア、マジで手加減知らねえのか!!? どこが聖女(シスター)だ! どこが乙女だ!! ゴリラだろ、アレ!!」

「烈火の如く怒り奮闘だな、お前は。あとそのおばさんもお前も多少は拳以外で語り合えないのか? 拳で全て片付けられるような世界はないんだぞ」

「…わかってるって。…でもアイツも悪いぞ! なんて言ったてなー!!!」


 緑皇子学園。

 県内でも一位二位を争う進学校。部活などでも数多くの功績を叩き出しており、テレビが入ることも少なくはない。

 今や全国規模で名を馳せているほどの私立学校だ。


 そんな中、紫苑は机に伏せていた。所々には絆創膏やらが貼られており、痛々しい。

 本人自身は一応童顔で可愛らしい顔立ち。身長も高校生にしては伸びきっておらず、まだ成長過程というのが正しい。特に身嗜みにも問題はなく。相手を不快にさせるような外見ではない。

 なのだがまた怪我をしている本人が「俺、今凄くキレてます」オーラ全開なので近よる人は少ない。

 しかもそんなことが毎日なので紫苑の交友関係というものは非常に狭い。

 恐れられている、というよりも不気味という方が近いだろう。


 そんな紫苑に向き合い軽い様子で雑談を交えているのは数少ない友人の一人だ。

 名前は花空 桜(はなぞら さくら)。女性のような名前だが、事実男である。

 名前のような女性らしさは何処へやら。スマートさ溢れるイケメンフェイスの持ち主。

 紫苑との交友関係から分かるように人を噂などで評価するような人間でもない。本当に恐ろしくできたイケメンだ。


 桜が紫苑の愚痴を聞く形でしばらく雑談は続いていく。

 紫苑が愚痴をこぼす度に桜は気遣う言葉を入れてくれる。説教のような内容もあるがそれも紫苑を気遣った上での言葉だとよく分かる。

 紫苑は自らにして桜には頼りきっている部分が多いことを自覚する。

 そしてもう一人の友人にしても…


「おーはよっ!!!! シオンッ! サクラッ!」

「うるせえ」

「静かにしないか、太陽(たいよう)

「悪いがムリ!」

「「いや、知ってたけど」」


 山口 太陽(やまぐち たいよう)、紫苑のもう一人の友人。

 野球部エースであり、クラスのムードメーカー。持ち前の明るさで周りに自然と馴染めている青年。

 だが何故か紫苑と桜と共に行動することが多い。

 体格は紫苑と真逆でガチッとした筋肉質。決してイケメンでは無いが、どこか爽やかな感じがあり評判もいい。

 ちなみに髪型はお馴染みの坊主ヘアー。


「さーて! 今日もオカルトネタ持ってきたぜ! 楽しみだろー!!」

「まあ、それなりにな」

「好きでも嫌いでもない」

「そんなこと言うなって!」


 そんな太陽は意外なことに随一のオカルト好きであり、この興奮様から見るからに今日も何かしらのネタを持ってきたようだ。

 別に嫌いというわけでもないので紫苑と桜はその話を聞くことにした。


「いやな、つーのも今回はすっげー信用できるツテの話なんだよ!」

「いつも言うよな、それ」

「はい次」

「お前ら判断早えよ!! …でな、つーのもここらじゃ最近行方不明の人が増えてるらしい。しかもその事実は全て無いものとしているらしい」

「そんなことあるか?」

「ないな」

「…そんでだ! そう言うのもその人達は余すことなく別世界に行っちまった、ってこった!」

「「異世界転生?」」

「だからそんなんじゃねーよ!! そんなの都市伝説でもオカルトでもねーっての!!」


 太陽はそこから胸を張るように一言を溜めて、そして叫んだ。


「陰の世界だ!!」


 一方の紫苑と桜は…


「「胡散臭い」」


 怪訝な顔で太陽を見つめていた。

 それも当然と言えば当然だろう。確かに紫苑の存在も()()()()()()()とされているがその比にならないほどの胡散臭さがそこにはある。

 だからこそ否定する気にはならないが、正直な感想はまさしくそれであった。


「第一『陰の世界』て何だ? ネーミングセンスが皆無だ」

「しかもそれを誇らしく言えるお前もなかなか末期だな」

「そこまで言うか!? 普通!!」


『陰の世界』、確かに妙なネーミングセンスだ。

 それを思いついた人はなかなかに痛い。


「そんで? まさかそれで終わりとか言いださないだろうな」

「まさか! そんでだな、そこに引きづられると魑魅魍魎がたっぷりと、ごまんといるらしい。死ぬぜ、ぜってぇー」

「異世かーー」

「そこぉっ! 黙れぇえいっ!!」


 太陽はこの後滅茶苦茶なことしか言わなかった。その内容はとても信憑性が高いものだとは思えなかった。

 それは太陽の説明が悪いのか。はたまた元からそんな感じのオカルト話だったのか。

 どちらかは分からないが紫苑的には別にいい話だった。


 ホームルームの鐘が鳴る。

 そうして今日も()()()を紫苑は過ごす。

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