1、始まりは騒がしく①
短く区切って投稿して行く感じになります。
どうぞヨロです。
『現在私はこちら鈴蘭市まで来ております! 警察の方では今でも行方不明とのことです。御家族の方や御近所の方々が続々と花を添えております。この謎の失踪事件、未だにその片鱗すらも見えて来ません。一刻も早く彼らが帰ってくることを願います』
テレビからそんなニュースが流れる。リビングの四人の子供たちはパンをモソリと食べながら微かに聞いていた。
なぜ微かに、かと言われれば単純だ。
「ーーそれにだねシオンっ!! いい加減におし、アンタって子はまた性懲りもなくケンカかい!!? 制服が汚れるからダメって何度も言っておいただろうに!!」
「そういうババアはまた制服の心配かよ!? それに俺が一方的に殴ったから制服は汚れてない!! つまり問題ないんだよ!!」
「問題しかないよ! このアホンダラ!!」
「ーーっ!! いたいんだよ!! ババアの拳骨! なんで上級生のヤンキーどもより死にかけババアの方がいたいんだよ!!!?」
「これぞ愛の暴力ってね!!」
「シスター的にアウトだろ! その発言は!!」
こんな騒がしいのが傍にいるからである。
一応慣れてはいるがそれでも大騒音を聞き流してテレビの音を拾う、などという芸当などつい最近中学校になったり、小学生になった子にできるわけはない。
テレビは映像だけで楽しむもの、それがこの孤児院共通の認識だ。
子供達的には「あーあ、またやってるよ」といった感じ。スルースキルは既にその歳に合わない場所まで達している。
だがそんな中一人の子がその中に突っ込む。子供達の中ではシオンと呼ばれた男を除き、一番身長の高い女の子だ。
ツインテールが可愛らしくもピョコピョコ跳ねながら、二人の仲裁に慣れた手つきで入る。ちなみに二人とも拳と拳で語り合っている。
ヤンキーらしき高校生君は兎も角、修道衣に身を包んだシスターがメリケンサック常備は役職的にどうなのだろうか。
そんなことも気にせずにツインテールっ子は魔法の言葉を。
「兄さんにシスター、もめるのはいいけど時間いいの?」
「「!!?」」
その言葉が耳に届いたのだろうか。激闘の真っ最中にピタリッ!!と微動だにせずに止まるという芸当を見せる。
そして油の差していないロボットのようにギギギ…と人体に出せるはずのない音を出しながら脇に見える時計を確認する。
結果…
「よし! 今日はこんぐらいにしといてやるババア!! 今日の夜覚えておきやがれ!!」
「ふん! そんなこと言いながら遅刻が怖いションベンガキが! 帰って来たらぶん殴ってあげるよ!!」
それぞれ九十度高速回転、およびクラウチングスタート!!
二人とも全力全霊を尽くし、朝ご飯をかきこんで瞬く間に着替えていく。本当に慣れた手つきだ。
そして互いにそれぞれの鞄を手に取り、扉を乱暴に開けて叫ぶ。
「それじゃ行くぞ! 鍵は閉めとけよ!」
「行ってくるからね、アンタ達! 火元と電気、窓は確認しときな!」
「「「「はーい」」」」
やはり慣れた感じで慌てふためく二人をあしらう子供四人。ツインテールの子も淡々と自分の準備を進めている。
そんな中、シオンこと主人公阿道 紫苑は学校まで駆けて行くのであった。