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0、夜闇の世界

はじめまして(?)製造物でーす!

なんだかんだでまた新作ですね、分かります。

飽きる可能性は大ですが頑張っていきます!

ちな、この作品は結構使いまわしてるものです。

ご容赦を。

 その世界は光のない世界。


 本来夜であれば見えるような星も灯も一切を断ち切った世界。

 しかし世界の輪郭は感じ取れる。人も道路も色も感じ取れる世界。

 何も見えず、されど感じられる世界。


 そんな静寂にある世界で轟く断末魔。連鎖するように何かが砕ける音が鳴り響いた。

 夜闇から放り出されたように吹き飛ぶ巨塊。勢いよく吹き飛んだそれは地面に散々に転がされ、引きずられていく。

 やがて推進力がなくなると壊れたマリオネットのように脚を力もなく地面に叩きつけ、倒れる。

 そこからは一切なりとも動くことは無かった。


 それは生物のようではあった。

 されど動物には有らず。

 言うなれば異形、そういうのが正しいのだろう。

 脚などの器官は有れどそれは機能として発揮しているのかもわからない。その鳥のような脚は獅子のような巨体に対してあまりにも頼りなさすぎた。

 目にしても歪なほどに数が多く、血の色をした瞳孔はべとりと現実味のない気色悪さがあった。


 そんな巨体を吹き飛ばした()()は地面にヒビを入れつつも着地した。

 体は夜闇に紛れている。唯一顔だけが露出しており、知覚できる。


 彼女は辺りを見渡すこともなく怪異の元に近づいていく。

 この世界の歪さなど見飽きたように他の物に目をくれることもなく静かに進んでいく。

 パキパキと指を彼女は鳴らす。その音に怪異は怯えるように震えた。事実震えたのだろう。怪異の幾多もの目玉の照準は一切合っていることはない。


 やがて彼女の足が怪異の頭の元までたどり着くと静かに怪異を見下ろし、目を閉じた。手足はだらんとぶら下げられている。

 数秒間もの間。

 怪異はこの後また受けるであろう末路に怯え続け、されど何もできずに震える。

 彼女は黙祷のつもりだったのだろうか。ゆっくりと開いた目には慈悲のような何かがあった。

 それにまた怯えたのか。怪異から絞り出したような悍ましい声が鳴る。


 ただし慈悲はあれど迷いは有らず。


 瞬く間に振りかざされた彼女の右腕。

 鞭打つように腰まで伸びる三つ編みがしなる。

 夜闇を切り裂くような風の轟音。

 そして風が猛威を振るい、拳が唸りを上げた。


 激震


 ただ一人の少女の一撃は空をも揺らす一撃へとなる。

 血が辺りを穢し、彼女の包帯にこびり付く。生き物の死臭が辺りを支配した。

 そんな中彼女は慣れたように拳を肉から引き抜き、踵を返す。血で汚れていない左手を耳に添えて、聞き慣れない何かをポツリと呟く。


 すると彼女は耳元で叫ばれたように肩を跳ねあげる。

 しばらくその場でうずくまり、耳を抑える。

 やがて立ち上がると誰もいないその場で彼女は叫んだ。


「ーーーーっ!! うっさいのよ、アンタ!! 自分の声の大きさ自覚しなさいよ!! ……勿論よ!! ちゃんと任務は果たして来たっての!!! …………アンタイチオシのアイドルの話を仕事疲れの人間に話しかけてくんな!! そんなことよりもやっぱりここおかしいわよ! ……アンタ、マジで仕事してんの!!? 今までアイドルの番組見てたとかじゃないでしょうね!! あっ! ちょっ! 待ちなさーい! ………逃げたか、あんのアイドルバカぁーー!!」


 何とも夜闇に叫んでいる変な人、という印象を受ける。

 しかし彼女の言葉から察するに何かしらの通信手段で誰かと話していたのだろう。そうでなければ彼女はただの変人になってしまう。


「…はぁー。マジでなんなのここー。ヤケに()()()()()の数も多いし、謎の()()()展開されてるし。相方は例のごとくアイドルバカだし。第一…」


 叫び終えると彼女はその場に項垂れ、ぼつぼつと呟いていく。周りなど気にしておらず鬱憤を晴らすように独り言を積み重ねていく。

 気持ち会社で酷い目にあった会社員の酒の席の光景に似てなくも無かった。積もりに積もったストレスを夜の中、少しずつ発散していく辺りが主に似ていた。


「…それでもやらなくちゃだし。冷静に行かなくちゃね」


 そしていつもと同じように彼女は空を見上げる。

 そこにあるのは唯一の光。

 しかし光源としての役目は果たしておらず、ただ空に浮かぶだけ。

 それでもやはりこの世界は歪だった。


 赤い月。


 この世界がいつもの安寧そのものたる世界とは違うことを認識させられる真紅。

 血のような気持ちの悪い赤では無く、薔薇のような紅。

 華やかな光は地上を照らさず、ただ空にこの世界の歪の象徴であるが如く澄みながらも輝いている。

 地上を照らしていない時点で照明と言うには怪しいが、それにしてはあまりにも眩しすぎる。

 あってはならないような矛盾。

 それがこの世界ではいくつも巻き起こっていた。


 つぎはぎだらけの、あらぬ矛盾を抱えたこの世界。


 そして彼女は三つ編みを手で揺らし、堂々と胸を張る。


神無月 茜(かんなづき あかね)、この程度でおくしたりはしないわ!!」


 そうしてまたこの世界に魅入られたものが入り込む。









 《一章、闇夜の世界で英雄は剣を握る》

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