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<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ニートが頑張る話

作者: 織田優

誤字脱字が多々あります!指摘お願いしますです!

あ、そのへんごりょーしょーよろです!

「あっちぃ〜...」

誰もいない部屋で一人パソコンをいじりながら口にした。

季節は夏、外では蝉達が己の生命を知らしめるように鳴いている。

この男の名は田中太郎、二十五歳ニート。親のスネを齧り倒しながら生活してる社会のゴミと呼ばれるような存在である。

その日太郎は何時も聞くアニソンをリピートで聞きながらネットの世界を巡っていた。

「ん?なんだこれ!?」

太郎はその日見つけてしまったのだ。見つけるべきではないそのサイトを。

「無人島でサバイバル生活...生き残れば...」

「一千万円!?やるしかないだろ!」

内容はこうであった。

様々な危険がある無人島で一週間生き残れば一千万円の賞金。しかし、どんな状況であろうと一週間経つまでは外から誰も助けにこない。参加人数は二十五人まで。

太郎は急いで応募用紙に打ちこんだ。

自分の名前、年齢、職業、身長体重、住所などありとあらゆるものを書いた。

「一千万かぁ...ふひ、何に使うかな」

これから起こることもいざ知らず、太郎は自身の妄想を膨らませていた。



2週間後、太郎のパソコンに一通のメールが届いた。メールの内容はサバイバル生活の参加を認めると書かれている。

「よっしゃあ!」

太郎は喜んだ、無駄に自信がある太郎は自分がサバイバル生活に失敗する可能性など一切考えなかった。俺はやれば出来る、そう思って応募したのだから。

メールには続きがあり、この無人島サバイバル生活は三日後行う、また物を1つだけ持ってきても良いと書かれていた為、太郎はまたしてもネットを使い無人島に1つ持っていくなら?と調べた。

「サバイバルナイフか...」

早速ネットで聞いたことを参考にネットショッピングサイトを開き迷わず購入ボタンを押した。勿論親の金で買っている。

太郎は柄にもなくウキウキしていた、太郎がこんな風にてるのは好きなアニメのグッズなどを買いに行く時くらいの為、傍からみたら相当気持ちの悪い光景である。

「絶対千万ゲットするぞー!」

太郎は三日後を夢見ながら眠りについた。



遂に無人島サバイバル本番の日になった。

買ったサバイバルナイフをポケットに入れ集合場所へ向かう。


「ここ...だよな」

少し周りを見渡すと看板を持った女性がいることに気がついた。

太郎は久しぶりに女性に話しかける為、少し挙動不審になりながらも質問をする。

「あ、あの、無人島サバイバルしぇい活の人でしょうか...じ、自分は田中太郎っていうんですけど...」

太郎は自分の噛みっぷりに赤面するが相手の女性は気にすることなく答えた。

「はい、あってますよ。あ、まだ全員揃っていないのでもう少し時間がかかってしまいます、私の後ろの列に並んで待っていて下さい」

女性がサイトの人間であることに安心した太郎は素直に後ろの列の最後尾に並ぶ。すると、前に並んでいた男が声をかけてきた。

「お?あんたもこれに参加するのか?俺は高山信介だ、よろしく頼むぜ」

高山信介と名乗った男は自分と同じ位の身長で筋肉質なのがわかる男だった。相手が自己紹介をしたのにも関わらず自分がしないというのは不味いなと思った太郎は自分の名前を名乗った。

それから暫く信介と喋っていたら、いつの間にか全員揃っていたようだ。

「皆様!これから飛行機に乗ります!私に着いてきてください!」

先程の女性が少し大きな声で皆に呼びかけ歩き始めた。

「つ、遂に始まるのか...」

太郎は少し緊張した顔で前を歩く人達について行った。


全員が飛行機に乗ったことにより、今乗っている飛行機が自分達サバイバルに挑戦する者しかいないことに気がつく。

「皆様、本日は来て下さりありがとうございます。これから一日程飛行機による移動をし、目的地行きの船に乗ります。ご了承ください。」

そういえばどんな場所に行くか聞いてないな...と太郎は思ったが大して気にすることなく、周りの人間の観察を始めた。

チャラそうな男、露出が多い服をきた女、少し歳をとっている男、高校生くらいの男と女、太った男、ボサボサの髪の女、先程話していた男など様々な人がいる。

その中でも少し変わった雰囲気を出している人がいる。ピエロの様な仮面を付けた男だ。周りと明らかに離れた席に座っている。ただそれだけなのにとても異様に感じられた。

ピエロ男の方を見ていたせいだろうか、ピエロ男がこちらに首を向けた。

ニコッ

寒気がし、体から汗が吹き出る。太郎は凄い勢いで顔を窓の方に向ける。

やばい、あいつはやばいと脳が危険信号を出している。

太郎は少し震える足を押さえつけながら外の景色をみる。真っ白な雲が太郎の震えを少し落ち着かせる。

疲れた、そう思った太郎は眠りにつくことにし、意識を切った。

それから1日程たち、無事飛行機から降りる。

「さて、皆様これから船に乗ります、酔いやすい方は注意して下さい」

女性の声を聞きながら船に乗り込む。確かに少し揺れるが酔うほどではないと思い、太郎は無人島につくのを待った。


「やっとついた...」

太郎は思わず声に出してしまう。

それもそうだろう、今まで座ったり寝たりばっかりで何もなかったのだから。

「それでは皆様サバイバル生活を開始致します。一週間後のこの時間にまた迎えに参りますので、皆様頑張って下さい。」

そういうと女性は頭を下げ、船の中に入っていった。

そのまま船は再び動き出し、太郎達をおいて島を離れていった。

「えっと、まずはチームに別れるってのはどうですか?」

沈黙を壊すように高校生っぽい男が意見を出した。

確かに、生き残ればいいんだ、態々一人で沢山のことをやる必要はない。太郎はそう思いその意見に賛成した。

「んー、まぁいいんじゃね」

チャラい男がそういうと全員が頷いていた。

「っとー、じゃあ大まかに決めましょうか」

そういうと浜辺に円を描いた。

「二十五人いるので五グループにわかれましょう」

その後高校生が仕切り、グループがどう動くかが決まった。

グループは五つ、山菜取りグループ、魚取りグループ、建築グループ、夜番グループ、探索グループだ。

太郎はニートで生活が昼夜逆転していた経験を生かし、夜番グループになった。

夜番グループは夜寝る時に交代でみんなが寝てる周りに危険がないかを見るのが仕事だ。

「じゃあそれぞれのグループで行動開始!」

高校生がそう言うとそれぞれのグループで話合いながら行動していく。

「あのー、同じグループですし一応自己紹介しときません?」

三十代くらいの男がそう言った。すると、特に特徴の無い女性が名乗り始める。

「じゃあ私から、私の名前は水又花です。二十歳です。」

次に少し筋肉質の男が名乗る。

「あ、俺は佐竹進吾です。十八歳です。」

その後、飛行機で印象に残ったボサボサの髪の女性が名乗る。

「私は谷村美里です。二十六歳です。」

どうやら太郎は最後のようで、谷村さんの後に三十代に見える男が名乗る。

「僕は中原武です。三十四歳です。」

そして最後に太郎の番になった。太郎はどもらない様に声をいつもより大きくして名乗る。

「俺は田中太郎です。二十五歳です。」

太郎はニートの為人と会話することがない。その為、太郎的には大きな声でも周りには普通に聞こえるレベルの声だった。

全員の自己紹介が終わったが何を話せばいいのか分からず、暫く沈黙が続いた。それも仕方ないだろう、今初めて喋ったのだから。

すると遠くの方から声が聞こえる。

「僕達探索行ってきまーす!」

探索グループはもう森の中に入るようで、浜辺周辺にいる人達に声をかけた。

「あ、そうだ、夜の見張りの時間決めましょうか」

中原は思い出したかのように言った。

「夜に寝ないってのは良くないですし、前半後半に分かれて見張りましょう」

チーム分けはこうだ。

前半の太郎、水又、中原の三人

後半は佐竹、谷村の二人で分かれた。

佐竹は中々力が強そうで、本人も自信がある様なので、一番弱そうな谷村さんとペアになり、その他はニートの太郎とおじさんと女性というチームになった。

そして、夜が来た。

山菜グループと魚取りグループが取ってきたものを各チームに分ける。

「あれ、探索グループは?」

魚取りグループの一人が疑問の声をだす。

そう、夜になっても探索グループが帰って来ないのである。

「もう暗いですし…大丈夫でしょうか」

中原も心配そうにしている。

そこで太郎は嫌な考えが頭に浮かんだ。

たしか探索グループにはピエロがいた…まさかピエロがグループの人達を…。

「探しに行かねぇか?」

佐竹が全員に呼びかける。

しかし、周りはあまり乗り気ではないようだ。確かに心配ではあるが、夜ということもあるし森の中は危ないと全員が思っているのだ。

「…俺は探しに行く」

賛成の声を上げたのは意外にも太郎であった。太郎の中ではもうピエロが何かしているという考えしか残っておらず、怖いが何とかしようという思いと、夜番グループは特に何もしていないから体力がまだあるという理由で賛成の声をあげたのだ。

「それでは僕も行きます」

中原も行くようだ。

その後、谷村と水又も行くといい、結局夜番グループだけで行くことになった。

「じゃあ行くか」

佐竹を先頭に固まって動く。

佐竹は持ってきていい物にライトを選んだようで、足元が明るくなっている為危なげなく進めている。

暫く歩いたが中々見つからない。

声を出して探せばもっと見つけやすいかも知れないが、ここは無人島、どんな凶暴な動物が出てくるか分からないのだ。

「…ん?」

谷村が何かに気が付いた様だ。

「これ…血じゃないですか?」

谷村が指さす方向を見てみると、確かに血のような液体で水溜まりが出来ていた。

「これは…やばくないですか?」

水又が少し震えている。

それもそうだろう、もしこれが本当に血だとしたら何か危ない動物などがいる可能性があるのだから。

「戻るか?」

太郎が佐竹に聞くが佐竹は首をふる。

「死んだと決まったわけじゃない、まだわかってないのに諦めるわけにはいかないだろ」

太郎は佐竹にバレないように舌打ちをした。なんでこんな危なそうな所に態々行かないといけないんだと。

先程までの心配の心は消え、ただ早く戻りたいという思いが強まる。

突然、ガサッという音が先から聞こえた。

「ひっ」

水又が小さく悲鳴をあげる。

「だ、誰かいるんですか?」

中原が声をかける。

「お、おい、脅かそうと何かするなよ?」

佐竹が少し震えた声を出しながら、ライトをその方向へ向けた。

人だった。

な、何だ、ちゃんと生きてんじゃないか。と太郎は安心したが少し様子がおかしい。

背筋は曲がっており、両手をぶら下げて少しフラフラしている。その表情は見えないが口が半開きになっていることもわかった。

ゾワッと寒気が走る。

体格的に男の様だが、その男の首の辺りから中身が見えているのだ。

血が滴り、立っている場所に血溜まりを作っている。

おかしい、普通あんな量の血を出していたら立っていられ無いはずだ。

太郎は怖いものが苦手であまりそういうのは見ないのだが、その男の立ち姿、首の抉られ方、そこから一つの答えが浮んだ。

ゾンビだ。

「お、おい、これは不味いだろ」

佐竹も流石に怖がっている。

ゾンビがこちらに気が付いた。

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛と雄叫びの様なものを上げながらこちらに向かって走ってくる。

「逃げろ!」

佐竹が指示を出し走る。

それにつられ中原や太郎、水又や谷村も走り出した。

佐竹、水又は問題なく走れているが、太郎は太っている為遅いし、中原は歳をそこそこ重ねている為遅い、谷村も運動が苦手なようで足があまり動かない。

「きゃっ」

谷村が転んだ。

だが佐竹や水又は気がついていないようで走っている。

「あぁ、大丈夫ですか!」

中原が声をかけながら傍に行く。そして太郎も近寄った。

「も、もうだめ、死んじゃう!」

谷村は絶望した表情で言う。

ゾンビはすぐそこまで来ている。しかし、谷村は足を怪我してしまったようで録に走れなさそうだ。

太郎は自身のポケットにサバイバルナイフが入っていることを思い出し、取り出す。

「た、田中さん!何を!?」

谷村が太郎に聞く。

「お、俺がこいつを殺る!だ、だからその内に二人は逃げて下さい!」

中原は驚いた表情でその言葉を否定する。

「む、無理だ!ゾンビですよ!?噛まれたら太郎さんまでゾンビになってしまう!」

ゾンビはもうすぐそこだ。どちらにせよここで逃げようとしても運動神経のない奴らは捕まってしまうだろう、そう太郎は考えた。

「早く逃げて!」

中原は谷村をおんぶし駆け出す。

ア"ア"ア"ア"ア"

ゾンビが太郎に襲いかかる。

「くっそぉ!」

太郎はナイフをゾンビの頭目掛け振った。

グチャッと肉を切る音が耳に入る。手に殺した感覚が伝わった。

ゾンビは崩れるように倒れた。

「あ、ああ」

体が震える、目の前には人だったものが転がっている。自分が殺したのだ。仮にも昼頃には生きていた人を。

徐々に意識がハッキリしてくる。先程まで体が震えていたが、それも大分収まり、考えることが出来るようになった。

早くみんなの元に帰ろう。

太郎は早足で来た道を戻った。


火の光が見えてきた。

そこそこの距離を移動し、みんながいる所に行く。きっとあの四人は心配しているだろうから、はやく生存報告しなきゃ。太郎は小走りで向かう。

「今戻りました!俺は無事です!」

安心感のおかげか、普段より倍の大きな声が出る。


ア"?

沢山の人だったものがこちらを見る。

そこにいたのは一緒に無人島に来た人達、高校生やチャラ男もいる。

そして、佐竹、水又、中原、谷村も。

まさに地獄絵図と呼べるものだった。今までネットで見てきたものが比べ物にならない程の恐怖。

「ひっ」

悲鳴を上げてしまう。さっきまで生きていて、一緒に喋っていた仲間がゾンビになっている。肩や腕、お腹や顔など、様々な所から血や中身が飛び出ている。

絶望的な光景の中にやばいものが混じってるのがわかった。いや、この場にいる全てのものがやばいものだが、更にやばいものがいたのだ。

ライオンだ。その場にライオンのゾンビがいるのだ。

ライオンといえば誰もが知っている動物界でもトップに並ぶ生物、百獣の王とも呼ばれるライオンがゾンビとなり、この場にいるのだ。

ライオンのゾンビが大声で唸る。

それに合わせ、その場の全てのゾンビが太郎に向かい走ってくる。

そして、太郎は再び森の中へ走った。

絶対に死にたくない。俺は生き延びる、と心の中で唱え、今までの人生の中で一番早く走った。森の中は障害物が沢山あり、走りにくいものなので、ゾンビの中でも転んだりしているものがいることがわかる。

自分の後ろには自分の肉や血を求め走ってくる元人間がいると考えると吐きそうだし、実際もう喉の辺りまで吐瀉物がきている。しかし、走ることをやめるわけにはいかない。

生きる為には血を吐いてでも走らなければならないから。

ゾンビと大分距離が開き、森の中に小さな穴を見つけそこに入る。

「はぁはぁはぁはぁ」

今までにないほど走った為、気持ち悪さが押し寄せてくる。地獄絵図をみてただでさえ気持ち悪さがあるのに、それに加えてやってくる吐き気に耐えられず、夜ご飯として食べた魚などを吐き出す。

太郎は深呼吸をし、考える。

そもそも何故ゾンビがいるのかを。

そして思い出した。あの日、サイトを見つけた時に書いてあった文章。

【様々な危険がある無人島】という文を思いだした。

そもそも何故気が付かなかったのだろうか。

一千万なんて大金を二十五人に渡すなんてそんな話があるわけが無いのだ。

テレビの撮影という風には考えられないし、元々がおかしかったのだ。

ただ一千万というお金につられ、まんまと罠に引っかかったんだ。

無人島に到着した時も違和感を感じたのだ。殆ど手が付けられてない様に見えたのに、鳥の声などが聞こえないし、何だか気味が悪い様子だったのを思い出した。

何故もっと早く危険に気が付かなかったのだろう。色々疑問に思ってもいい点があったはずだ。

と、色々考えてた太郎に話しかけた人物がいた。

「ねぇ君」

「ひっ!」

悲鳴を上げてばかりだが仕方ないだろう、考え事をしている時に急に話しかけられたのだから。

「あ、あんたは…!?」

そこにはピエロの男がいた。自分が無人島生活に参加したメンバーの中でもっともおかしいと思った人物がすぐ側にいた。

「酷いねぇ、せっかく生存者に会えたっていうのにぃ…」

この男は何故こんな所にいるのだろうか、頭が回らない。

「なんでここに…」

遂に太郎は質問をした。本当に疑問なのだ、このピエロ男は探索グループの一人だったはず、それなのに生きてこんな場所にいるのだ。

「ああ、そこかぁ。んー、僕が探索グループにいたのは知ってるよねぇ?」

「あ、ああ、知っている」

「あの時、ゾンビとあっちゃってねぇ、他の人達を犠牲って言っちゃ悪いけど、おいて逃げてきたんだぁ」

探索グループはどうやらそうとう深くまで行ってしまったようで、奥の方にいたゾンビを連れてきてしまったそうだ。

そして、そのゾンビから逃げてこの穴でずっと隠れていたと。

「こ、これからどうすんだよ」

太郎はこのピエロ男が怖い為早く二人きりから逃れたかった。しかし、ずっとゾンビに追われていたからか、人がいるというだけで安心感が少しあるのが悔しい様だ。

「ん〜そうですねぇ、取り敢えず夜明けまではここにいるのが良いと思いますよぉ?」

まぁ確かに、ゾンビの姿が見えない状態で外に出るのは危険だ。と太郎はピエロの意見に賛成した。

「あ〜、私の名前は吉野大志です。よろしくお願いしますねぇ」

「俺は田中太郎だ」

「よろしくお願いしますねぇ太郎さん」

ゾワッと背筋が凍った。男、しかもこのピエロもとい吉野に名前を呼ばれるのが気持ち悪いとは…

「確か太郎さんは夜番グループでしたよね、交代で見張りましょうか」

先に太郎が寝て、後に吉野が寝ることになった為、太郎は少し離れた所で眠りについた。


「あの〜、交代の時間ですよぉ?」

吉野に起こされ意識を覚醒させる。

「では、私は寝るので、よろしくお願いしますねぇ?あ、襲わないで下さいよぉ?」

やはりこいつは苦手ってか気持ち悪いな、と心の中で呟く、襲わねぇよと否定してから外をみる。

虫の鳴く声だけが聞こえることに少し安心しながら外をボーッと眺める。

長いな…と思う。少しの辛抱とはいえ何もすることが無いのだからそう感じても仕方ない。

「パソコン…」

ニートには何もすることがない時は常にパソコンをいじっているのだ。

暇なので目を閉じ耳を澄ます。

ここはきっとゾンビなんて存在がいなかったらいい場所なんだろうと改めて思う。

そこで、少し遠くから呻き声がすることに気が付いた。さっきのゾンビ達の声だ。

太郎は急いで、そして静かに吉野を起こす。

幸い寝起きはいいようで少しフラッとしていたが事情を説明するとすぐに眠気が飛んでいったようだ。

「ナイフで撃退するか?」

太郎は吉野に聞くが首を振った。

「相手が何人か分かりませんしぃ、やめて静かに逃げましょう?」

静かに穴を抜け出し、音のする方向の逆を進む。

パキッ

太郎は木の枝を踏んでしまった。ここは森の中、道はでこぼこだし、葉っぱや枝も沢山落ちている。

ア"ア"ア"ア"ア"

不味い、そう思った時にはもう遅く、ゾンビが大声で仲間を呼ぶようにしながら太郎達の方に走ってきた。

「くっそぉ!」

太郎が再びサバイバルナイフを出す。

「く、くらぇ!」

しかし、そのナイフがゾンビに当たることは無かった。

スルッ

振りかぶった時に持ち手が滑りナイフが落ちてしまったのだ。やばいと思い直ぐに拾おうとするがゾンビは真ん前、ナイフは何処に飛んでいったのか見ていない。

ア"ア"ア"ア"ア"

その声を聞き思わずしゃがみ頭を抱える。

くるっ!そう思い目を瞑るが中々衝撃が来ない。

あれ?っと思い目を開ける。

ゾンビの頭にはナイフが刺さっていた。先程太郎が投げ飛ばしてしまったナイフが刺さっていた。

まさかと思い後ろを見ると吉野が微笑んでいた。しかし、足は少し震えている。

「ち、ちゃんと握ってないとダメじゃないですかぁ」

おどけた口調で吉野は言う。

何が起こったのかというと、

太郎が飛ばしてしまったナイフは吉野の方へ飛んでいき、それを吉野が拾い、太郎がしゃがんだ瞬間に投げたのだ。

「お前…天才か?」

太郎は思わず口に出してしまう。

「ショーなどでよくやってましたからねぇ」

何はともあれ助かった。そう太郎が安心した瞬間、

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛

ゾンビの大軍がこちらに走ってくるのがわかった。その中にライオンのゾンビも混じってるのがわかった途端足がすくむ。しかし、吉野が太郎の手を引っ張り立たせ、走らせる。

吉野が怖かった太郎であったが、その手に安心感を覚え、足のすくみが収まると手を引かれることなく走る。

後ろからはたくさんのゾンビ達の声、チラッと後ろを向くとライオンのゾンビがどんどん近ずいてくるのがわかった。

太郎は再び吉野にナイフを渡す。

「こ、これで、あの、ライオンを、殺れないか?」

走りながら何とか説明する。

吉野は珍しく太郎から喋りかけてきたことにびっくりするが頼られたことが嬉しいようで、任せてくださいと言う。

吉野は全力でナイフを投げる。

ナイフは真っ直ぐライオンの頭に向かっていく。

ライオンはナイフに気づき、しゃがもうとするが時すでに遅し、しゃがんだことによりナイフはライオンの脳天を切る。

ライオンは死に、勢いそのまま転がっていく。

「あっ!?」

ライオンを仕留められたことに思わず緊張を緩めた吉野は転んでしまう。

「くぅ…」

どうやら吉野の足に草が絡まってしまったようだ。

太郎は慌ててナイフを取り出そうとしたが、その時太郎は先程吉野にナイフを渡して投げさせたことを思い出す。そして、後悔した。

あの時焦らずナイフを所持したままだったらこんな時助けられたのにと。

「私のことは大丈夫です、先に行って下さい」

吉野がいつもの口調ではなく、真面目な口調で言った。

「また何処かであいましょうねぇ?」

吉野は微笑みを浮かべながらそう言った。

「くそっ!」

太郎は吉野を見捨てた。いや、きっとこういう場では吉野を信じて走った。などと言うのだろうが、太郎の頭の中では見捨てた、という言葉がずっと頭の中を回る。

太郎は重たい体を無理矢理動かし走る。

少し後ろではゾンビ達が吉野に群がる声や音が聞こえる。それでも太郎は後ろを振り向かずに走った。足からブチッという音が聞こえる、二十五年生きてきた中で初めて聞くような生々しい音が体を巡り脳に響き痛みと吐き気を起こす。それでも太郎は走っている。長らく外を出ていなかった為運動は全く出来なくなっているが、小中高での運動部時代を思い出し、全力疾走を続ける。

既に限界を越した足を使っていた為か足が何かに引っかかり転ぶ。やばいと思い急いで立ち上がったが後ろをみても何もいなかった。

ふぅ、と一息ついたが直ぐに吉野のことを考えてしまい心臓が爆発しそうになる。

体がふらつくため座る、心臓のあたりを押さえつけながら涙を流す。

久しぶりに現実のことで泣いた。ずっと引きこもりアニメをみて涙を流していた自分を笑ってやりたくなる。ため息にも似た声を漏らす。恐怖と見捨てたという思いを消す為、はあぁぁと息を思いっきり吐く。

少し落ち着いた太郎は先程足に引っかかったものは何だろうかと、見てみる。

そこには地下に向けて作られている鉄のハッチがあった。

太郎はここに入れば安全だと考え、急いでハッチを引っ張り開ける。

ギギギっと音をたてながらハッチが開く。

中は鉄製の用で、梯子がかかっている。

太郎は恐る恐るその梯子を降りる。なぜそうも恐れているのかと言うと、ゾンビは何処にいるかわからないからだ。最初にみつけたゾンビは森の奥と聞いたし、もしかしたらこの辺にもいるかもしれないのだ。

タッタッタッと音が響く。体重が重い故に、そっと動くということが苦手ということと、足の筋などがむちゃくちゃになっている為音がたってしまう。

梯子の途中また一つハッチがあったので蹴り開ける。

光が見えた。白い光だ。思わず太郎は安心してしまう。まだ一日程しか経っていないが、久しぶりにみる人工的な光に心が落ち着く。しかし、それと共に少しの恐怖を感じた。ハッチがあるということは人がいるということ。そして、こんなにも鉄を使って作られているということは明らかに無人島の外から来た人物だとも分かる。

遂に下まで降り、また一つの扉を開く。


そこには一人の男がいた。

それも、過去に見たことがある。

「やぁ!よくここまで来たね!本当に尊敬するよ!」

「界人…?」

過去と言っても中学の頃、太郎がまだまだ青春をおくっていた時代に少し仲が良かった男、そいつの名前は

高坂界人…中学の頃は運動神経も良く勉強も出来ていたと思う。

そんな人間が何故こんな所にいるのだろうか。

「いやー、見ないうちに随分変わったね太郎!ん?なんでここにいるんだ?って顔をしてるね」

「当たり前だろ!なんでこんな所に…」

昔と変わらず界人は明るく話す。

「どうして此処にいるのか…か、そうだねぇそれは僕が主催者だからさ!」

「は?」

何を言っているのか分からなかった。

いや、分かりたくなかったのかもしれない。

界人が主催者…それはつまり…。

「多分太郎の考えてる通りだよ!

この無人島サバイバル生活のボスはこの僕さ!」

つまり…こいつがゾンビを作り出し…そしてこの島に人を呼び実験をしていた?

「じょ、冗談だよな?」

きっと冗談ではないのだろう。高坂界人は良くも悪くも正直者だったのだ。こんな状況で冗談を言うは考えられない。

「冗談なんかじゃないさ!この島の管理やサイトを書いたのも、全部僕さ!勿論ゾンビがいるのも僕が作ったからだよ!」

太郎は酷く困惑した。

高坂界人の人生に何があったのだろうか。学生時代の界人は正義感がとても強く、いじめ何かも絶対許さないやつだった筈なのに、今はゾンビを作って人を食べさせる様なやつなっている。

「いやー、それにしてもビックリしたね!サイトで募集かけてみたら太郎がいるんだもん!思わず採用しちゃったよ!でも死ななくて良かったと心から思うよ!」

ふざけているのだろうか。太郎の中で怒りがふつふつと沸いてくる。

「ふざけるな!何人の人が死んだと思ってるんだ!」

「何いってるの?様々な危険があるってサイトには書いたし、応募の最後の欄にも命の保証は出来ませんがそれでもよろしいですか?ってちゃんと書いたよ?」

「だからってこんな…!」

「いやぁ、凄かったよ太郎!カメラで君を見ていたけど上手く生き残ったねぇ!あ、そうだ!太郎に凄いものを見せてあげる!」

そういうと界人は大きなモニターに何かを表示した。

「実は僕の作ったゾンビウィルス!日本に放つんだ!ほらもうすぐだよ!」

太郎は頭が真っ白になった。それはつまり日本の全員をゾンビにすると言っているのだ。

「やめろ!なんでそんなことを!」

界人は笑みを浮かべこう言った。

「だって面白そうじゃん?」

界人はボタンを押した。

太郎は止めることも出来ず、ただそれを見ていた。しかし、暫くして太郎は走った。特に太郎にはできることもない、がしかし、こいつをぶん殴るという考えを実行する為に。

「おっと!危ない」

「ガッ!」

太郎は意識が飛びそうになる。界人がスタンガンを当てたのだ。

太郎は薄れる意識の中、楽しそうに笑う高坂界人の顔をただずっと見ていた。



それから太郎が目を覚ますと普通の部屋にいた。何気なく近くにあったケースを開けるとそこには一千万円が入っていた。

太郎は特に反応することもなく、その近くにあったリモコンを手に取りテレビをつける。

そこには、自分の住んでいた国が崩壊している様子が映し出されていた。

























オチが考えれない症候群

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