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この世界はなんてつまらない世界なんだ  作者: 折原さゆみ
第1章 こんな学校嫌だ
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思い出した前世

「私たちはみんな、ユウトが好き。お互い、ユウトを譲る気は全くない。だから、ユウトはみんなのもので独り占めはしないということになったの。私たちの誰かを選べ、なんて言わない。ユウトは優しいから、私たちの中の誰かを選んだら、他の人が悲しむと思っているでしょう。それくらいだったら誰も選ばないなんて言いそうだもの。それはつまり誰もユウトの特別になれないってこと。それではみんな納得できない。だから、ユウトも無理に私たちの中から一人を選ばなくていい。私たちを平等に愛してくれさえすればそれだけでいいの。だって、ユウトがいてくれるだけで幸せになれるから。」


 彼の幼馴染のカナはそう言って、はかなく微笑んだ。


 彼は小説をそっと閉じた。これは少年が生前生きてきた世界での思い出である。それがなぜ小説の中の一ページに描かれているのだろうか。


 彼は普通の少年だった。別にこの世界を悲観もしていないし、過度に期待もしていない。友達と遊び、学校の勉強が面倒くさいと言いながらも宿題に励んでいた。 世界という大それたものについて考えたこともなければ、この世に別の世界があるということも考えていない。それが変化したのは中学生の時だった。


 中学校1年生の時に読んだある小説をきっかけに、彼は自分が転生者であることを思い出した。その小説を読んだ瞬間、彼は自分の前世を思い出した。そして、その小説の舞台こそが彼が前世で暮らしていた世界そのものだったのだ。


 さらには主人公の名前こそ違うものの、書かれている内容が彼の生活そのままだった。冒頭の小説の一説も彼が幼馴染に言われたことそのままである。これは偶然だろうか。


 小説のタイトルは「彼に惚れた少女たちは彼に全てを捧げる」。ちなみにこの小説は男の主人公が高校に入学し、ハーレムを築き上げていき、彼女たちの願いをかなえていく話である。中学、高校生の学生に人気のライトノベルである。


 しかし、その小説は完結していなかった。彼はその小説の新刊が出るたびに購入し、真剣に読んだ。ところが、なぜか主人公が高校の卒業式を迎える直前で話が止まっている。そこからずっと新刊は出ていない。そして、彼の前世の記憶もそこで止まっている。

 

 彼は、自分が高校3年生の卒業式当日にトラックにひかれたことまでは覚えている。その後のことは覚えておらず、この小説を読むまでは自分が転生者であることにも気付かずにいた。小説では、卒業式の前日までが描写されていて、彼が卒業式当日にトラックにひかれるところまでは描かれていない。

 

 これは自分がこの世界に転生することになったことと何か関係あるのだろうか。そう思い、彼は小説の作者に問い合わせしようとしたのだが、受け付けてもらえなかった。

 作者は自分の書いたものに対して感想や質問を受け取らない主義であった。さらに作者は極度の人見知りで、家族や編集者などの自分にかかわりのある人以外には基本的には会わない人のようであった。そのため、いまだに彼は作者に質問をするどころか、作者に合うことさえできないでいた。


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