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5:マリンカ

追記:少し改稿しました。メインストーリーに影響はありません。

 ……何か変な事を言ったのだろうか?


 いや、言ったからこそ、この気まずい空気が流れているんだろう。


 なんでだろう、会社に居る時より死にたくなってきた。


「……い、いや、ち、違います……名前は、マ、マリンカで、す……」


 なんとか名前を聞き出せた。


 聞き出せたは良いが、名前が闇属性?なんて聞いたから完全に頭がおかしい奴だと思われている。


「うん。よろしくねマリンカ」


 思い切って呼び捨てで呼んでみる。


 この夢の世界の重要な人物な為、少しでも距離を縮めたい。


「……!よろしくお願いします……」


 呼び捨てに少し驚いたようだが、まぁセーフだ。


 後は、この世界の事を少しでも知っておきたい。


 夢とはいえ、この世界を楽しんでいきたいからな。


 なぜなら、起床してしまったら『会社』という地獄の始まりなのだから……


「……あ、あの、クロサワショウヤさん……」


「あ、翔也で良いよ」


「……え……?」


「え?」


 なんでそんなに驚いているのだろうか?


「……も、もしかして……姓をお持ちなのでしょうか……?」


「う、うん。そうだけど。もしかしてなんかマズかった?」


「……い、いえ!貴族の方だとは知らなくて!ご無礼をお許し下さい……!」


 マリンカが急に頭を下げてくる。いや、土下座までしてるんだけど!?どういうこと!?


「いやいやいや!ちょっと待って!俺は貴族じゃないよ!?」


「……え……?……で、でも、姓を持たれるのは貴族の方だけのはずです……」


「確かに俺は姓を持っているが貴族じゃない。ただの一般市民だよ」


「……?」


 マリンカが困惑した表情を見せる。


 この世界は貴族しか姓を持たないのか。


 面倒くさい世界だな。夢なんだから、そこら辺はどうでもよく設定されても良いと思うんだが。


 ……もしかしたら、俺が学生時代に読んでいた漫画とかラノベの話が混ざっているのかもしれない。だとしたら……


「もしかして姓が翔也だと思ってる?」


「……え?違うのですか……?」


 やっぱり。異世界物だとお決まりだな。


「黒沢が姓で、翔也が名ね」


「……もしかして東の国から来られた方なのですか……?」


「え?あぁ、まぁ……」


 東の国ねぇ……名前も知らないし、どういう場所かもわからないが、そういう設定にしておこう。


 どうせ夢から覚めたらこの設定も全て消える。それと……


「俺は貴族じゃないから、その話し方じゃなくても良いよ」


「は、はい……う、うん、そうしま、する……」


 お互いにこうした方が気持ちが楽だろう。


 俺も、敬語とか使われるのはなんか嫌だしな。


 よし、なんとか自己紹介は終わった。


 とりあえず、この世界とマリンカについて聞きたい事が沢山ある。


「じゃあ、ちょっと質問して良い?」


「う、うん。知ってる事なら答える」


「俺はこの世界の記憶がほとんど無いんだ。多分、記憶喪失だと思うんだけど。この世界には魔法とか魔物とかって存在する?」


 記憶喪失ってことにしておけば、この世界では当たり前の事を聞いても多少大丈夫だろう。


「……あ、ある。魔法はその人が持っている属性の魔法しか使えない。あ、あと、その人の魔力量で使える魔法の規模が決まる……」


 その人が持っている属性の魔法しか使えないのか。


 あと魔力量って、ゲームでいう『マジックポイント』みたいなものか?多分そんなものだろう。


 俺の属性は何だろう?


 俺には魔力量もあるのだろうか?


 まぁ、夢の中だから俺はチート属性でチート並みの魔力量があると信じよう。


「……魔物は倒し続けていると自分の魔法やスキルの幅が広がったり、強くなる……強い魔物を倒すほど、成長が早くなる……」


 経験値か……


 魔法や魔物、経験値があるとすると、この世界はロールプレイングゲームの世界みたいな感じか。


 分かりやすい世界でありがたい。


「ちなみに、属性と魔力量ってどうやったら分かるの?」


「……ギルドとかに行けば、自分の属性が分かる水晶が置いてある……魔力量は魔法を使って確かめるしかない……」


 一瞬マリンカが複雑な表情になる。何か問題でもあるのだろうか?


「何か問題でもあるの?」


「……い、いや……ギルドは嫌な思い出しかないから……」


「何かあったの?」


 嫌な思い出があるという事は、少々面倒な場所なのだろうか?


「……小さい時に、両親と一緒に自分の属性を見たら……闇属性だって知って、両親と周りの人は悪魔だ、死神だって言ってきた……それから私は親に捨てられた……もし、ショウヤも闇属性だったら同じ目に遭う……」


 なんか聞いちゃいけない事を聞いてしまったか。まさか親に捨てられるなんて。


 なるほど、自分が闇属性だって言ってきたのは、俺から逃げる為だったのかもしれない。


「なんで闇属性ってだけでそんなに言われるんだ?」


「……闇属性の人は、悪魔とか地獄の使者とか言われてるから……」


 闇属性ってだけで差別されるのか。


 なんだこの世界……


 夢とはいえ酷すぎる。


「……逆に、光属性の人は神の使いだとか天使だって言われてる……光属性の人は周りから慕われて、尊敬される……」


 闇属性の逆の光属性は天使か。安直すぎる。


「……酷い話だな……」


「……私が闇属性ってことは悪魔かもしれないんだよ……?……どうして早く逃げないの……?」


 ……何を言っているんだこの少女は。


 俺は差別なんかしない。


 大体、何処の誰かも分からない男に色々と情報を教えてくれる少女が悪魔に見える訳がない。


「マリンカみたいな可愛い子が悪魔だなんて思わないよ。それに悪魔だったら、俺はもう死んでるかもしれないしね」


「……」


 マリンカが顔を俯ける。よく見ると顔が赤い。


 そういえば、夢の中だからって普通に可愛いとか言ってしまった。


 何でだ?まぁ、実際可愛いんだけど……ナンパみたいになってしまったか……?


 あれ?なんかこっちまで恥ずかしくなってきたぞ。


 またもや沈黙が訪れる。


 ……気まずい。話を変える事にしよう。


「そ、そういえばお腹減ってない?」


「……え?……えーと、す、少し……」


 マリンカはまだ顔が赤い。なんか申し訳ないことをしてしまった。


 俺は、マリンカの枕代わりにしていたバッグを開ける。


 そして、中から唐揚げ弁当を取り出す。この世界の食事がどんなものか知らないから、米と肉というシンプルなものを選んだ。


「これでも食べる?」


「……う、うん。ありがとう……」


 から揚げ弁当の蓋を外して、箸とともにマリンカに差し出す。


 ……なんだか俺も食べたくなってきたな……後で唐揚げ1つもらおう。


 そんな事を考えながらマリンカと唐揚げ弁当を眺めていると、マリンカが困った顔を見せる。


「……え、えっと、これの使い方が……」


 そう言って、マリンカが箸を示す。


 ……もしかして、箸の使い方が分からないのだろうか?


 まぁ、そんな予感はしていたが。


 代わりに先割れスプーンをマリンカに渡す。


「これなら大丈夫?」


「……うん、ありがとう……」


 スプーンを受け取っても、マリンカは全然食べようとしない。


 警戒しているのか?それともどんな食べ物か分からないのだろうか?


「……えーと、これは鶏肉でこっちが米だよ」


「……コメ……?」


「あー……東の国の食べ物。大丈夫。おいしいよ」


 適当に東の国の食べ物という事にしといた。夢だし、大丈夫だろ。


 マリンカは恐る恐るご飯を口に運ぶ。口に入れた瞬間、マリンカは目を見開いた。


「……凄く美味しい……」


「口に合って良かったよ」


 次にマリンカは唐揚げを口に運ぶ。


 こちらも、食べた瞬間に目を見開いた。


「……こ、こんな美味しい食べ物、食べた事ない……」


 それからマリンカは物凄い勢いで唐揚げ弁当を完食した。


 あ、から揚げを1つ貰うのを忘れてしまった……まぁいいか。


 食事も終わったし、どこかで寝床を確保したい。


 もっとゆっくり出来る所に行ってマリンカと色々話をしていたい。


 いつ、この夢が終わるか分からないからな。


「そういえば、マリンカはどこで暮らしているんだ?」


「……いつもは、そっちの方にある洞窟で暮らしてる……町は嫌だから……」


 町に行くと差別する人がいるからか。


 洞窟で暮らしているって……今まで食料とかどうしていたんだ?


「今まで食べ物ってどうしてたの?」


「木に生っている果実とか食べてた……」


 マジか。


 凄い生活だな。


 まさにサバイバルだ。

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