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5:化け物じゃないってば!

本当に遅れてすみません!最近忙しく、ありえないほど遅れてしまいました……!

 捕まっていた2人の男性を連れ、紬の元へ向かう。


 向かっている間、2人はギルの事について色々と見解を話し合っていた。


 何度か俺にギルについての質問をされたが、秘密とだけ言っておいた。ギルの事に関しては邪神という事しか知らない。だって、俺も今日ギルに出会ったばかりなのだから。


 ギルの方にも質問があったが、「俺は召喚獣だ」としか言わなかった。


 しばらく洞窟の中を進むと、広い空間が見えてくる。


 女性達が拘束されていた場所だ。


 その女性達は今、マリンカと紬、クラリッサさんに介抱されていた。


 目を瞑って動かないが、寝ているだけだよな?


 メアナの方は出入り口を見張っているらしい。この洞窟には姿が見えない。


 2人を連れて紬達に近づくと、連れてきた男性達が拘束されていた女性達に駆け寄った。


「ローズ!ティアミン!大丈夫か!?」


「安心してください。お二人は疲れて眠っているだけです」


 やっぱり寝てるだけだったか。良かった。


 男性達も安心したのか、その場に力なく座り込んだ。


「本当にありがとうございました……!貴方達が来てくれなかったらどうなっていたか……」


「あぁ。本当に感謝しかない。礼を言わせてくれ。ありがとう」


「いえいえ。私達は、ここに盗賊達に襲われた仕返しに来ただけですから」


 仕返しというか……面倒事を避けるために先に潰そうとしたんだがな。


「紹介が遅れました。僕達4人は冒険者パーティです。一応リーダーという事になってます。ガイムです。それで、こっちが盾役のジミル。眠っている2人は魔法使いのローズとティアミンです」


 冒険者パーティか。


 という事は、依頼か何かの途中に盗賊に襲われたんだろうか。

 災難としか言いようが無い……


「それじゃあ、こちらも自己紹介をしましょう。私はツムギです。そして、こちらが翔也さん。その上に憑いてる化け物がギルさん」


『だから化け物って言うな!』


 紬の化け物呼ばわりに華麗にツッコミを入れるギル。


 何か化け物呼ばわりされるのがお決まりみたいになってるな……


「そして、こちらがマリンカちゃんとクラリッサさんです。あと一人、外で見張りをしてくれている魔法使いがいます。そちらはメアナさんです」


 やっぱり外で見張ってくれていたのか。1人で大丈夫なのか?


 ……いや、メアナは滅茶苦茶強いし、ギガントゴーレムという巨大なゴーレムを出せるから心配ないか。


 そんなことを思っていると、丁度メアナが戻ってきた。


「魔物も盗賊の残りもいないっぽい。多分外は大丈夫」


「お疲れ様です。それでは、メアナさんも来たので、これからの事について話し合いましょう」


 紬の一声で、俺達とガイムさんとジミルさんは円を作って話し合う。


「そうですね……まぁ、これからの事と言っても、街へ向かうだけですけどね」


 苦笑気味に応える紬に対し、ジミルさんが質問をする。


「街って、どっちの事だ?ディーバロンか?それともミャルミアか?」


「……それはですね……」


 紬が困った顔をする。


 目指している街の名前が分からないのだろう。俺だって分からないし。


「ミャルミアだね。あたし達はディーバロンから来たから」


 即座にメアナが助け船を出してくれた。


 紬がこちらの世界の人間ではない事を知っている彼女は、紬が地名を知らない事をすぐに察してくれたのだろう。


「ミャルミアですか。なら、ミャルミアへ向かう間、僕達が貴方達の護衛をする、というのはどうでしょう?少しはお役に立てると思います」


『護衛か……俺は悪くないと思うが、旦那はどうだ?』


 護衛ねぇ……


 正直に言うと、ギルと皆が入れば大抵は何とかなる気がする。


 だが、彼らの好意を無下にするのもどうかと思う。


 結果、護衛を頼むことにした。


「わかりました。護衛の方を任せてもいいですか?」


「任せてください!助けてもらった分以上に働きます!」


 ガイムさんの張り切った返事の後、もう夜なので寝支度をする事に。


 寝る場所はこの場所。盗賊のアジトだが、盗賊は1人も残っていないし、メアナが洞窟の入り口と洞窟の奥へ続く穴の全てに魔法で土の壁を作ったので、外から魔物が侵入してくる心配も無い。


 まさに、安全地帯だった。


 寝場所の安全を確保した後、枕と割と大きめのタオルケット、毛布が入ったバッグをマリンカに渡す。


「……これは……」


「皆で使ってくれ。毛布は、ローズさんとティアミンさんにかけてあげてくれ」


「……わかった……あ、ありがとう……」


 両手で重そうにバッグを持って女性陣の方へ向かっていくマリンカを見ていると、ギルが上から覗き込んでくる。


『流石旦那。優しいですねー』


「普通の事しただけなんだが」


 逆に、俺が毛布使って寝てたら印象最悪だと思うんだけど。


 俺がギルと話していると、紬がこちらにやって来る。


「すみません。着替えを忘れていました」


 着替えか。


 確か、着替えが入っているのはキャリーバッグだったな。


 キャリーバッグを手に取り、紬に渡す。


「ありがとうございます。それでは、私達は着替えるので、男性陣の方は反対側を向いていてください」


 そう言うと、キャリーバッグを転がし、皆の下へと戻って行った。

 だが、途中で立ち止まると、俺の方へ戻って来る。


 そして、耳打ちするように俺の方へ近づいた。


「翔也さんなら見ても構いませんよ?」


 ……何を言っているんだ?


「…………結構です」


 俺がそう答えると、紬は残念そうに皆の方へ戻って行った。


『旦那。若干だが、心臓の速度が早くなったぞ。元神の姉ちゃんに何言われたんだ?』


「……何でもない」


 恐ろしいな、この邪神。心臓の速度がわかるなんて。

 ギルに嘘は吐けないな。覚えておこう。


 頭の上に疑問符が浮かんでいるギルを無視して、ガイムさんとジミルさんの元へ向かう。


 2人は、女性陣に背を向けるようにして、何やら話していた。

 俺が近づいたことでこちらに気づいたのか、笑顔で迎えてくれる。


「ショウヤさん!今日は本当にありがとうございました!」


「いえいえ。気にしないでください。それよりも、何を話していたんですか?」


「もう二度と危ない目に遭わないように、この辺の魔物の出現場所や、盗賊の出現場所を話し合っていたんですよ。まぁ、盗賊といっても、皆さんが倒してしまったようですがね」


 なるほど。作戦会議的な事を話していたのか。


「魔物は特に、ブラッドウルフに注意が必要だな」


 あー……あの目が赤い狼か……


 嫌な印象しかないんだが。


「何故かは知らないが、この森や近辺の町、村に大量発生したんだ。ショウヤ殿は、原因は分かるか?」


 ブラッドウルフを今日知った男に大量発生の原因などわかるはずもない。


「いえ……全く……」


「そうか……俺は、最近出来たっていうダンジョンが怪しいと思っている」


「え?ダンジョン?」


 ダンジョンが出来た。つまり、魔王が降臨したことを意味する。


 メアナの話では近辺にダンジョンは無いと言っていたが、メアナの勘違いだったのか?


「ショウヤさんはご存じないようですね。数ヶ月前に、ミャルミアからコーフィエレの間の森の中に城型のダンジョンが出現したんですよ」


「ただのダンジョンじゃない。魔物どころか、即死トラップが無い。死ぬ要素が無い、わけわからないダンジョンなんだぜ?しかも、ダンジョン内のトラップをクリアしたら、魔王から直々に褒美が与えられて、ピンピンしたまま帰ってこれるって話だ。怪しいだろ?絶対になんか裏があるぜ」


 ……なんだソレ。


 なんだか、俺の思っていたダンジョンのイメージと違う。


「……それって本当にダンジョンですか……?」


「……俺達も最初は信じなかった。だが、実際に行ってみたら、本当に魔物も、即死トラップ無かった。ダンジョンというか……まるでカジノだ」


 まぁ、試練に挑戦して褒美を貰うから、カジノっていうのも間違ってはいないのか。


 ……カジノを造るなんて、本当にソイツ魔王か?


「変な魔王もいるもんですね……。ちなみに、名前は何て言うんですか?」


「魔王アサヒだ」


 ……


 …………


 ………………え?


 『アサヒ』……聞き覚えがある。というか、ありまくる。


 俺の親友、いや、戦友の名前。『甲賀朝陽』の名前と同じだ。


 まさか……いや、アイツは自殺したはず……自殺?


 そういえば、俺も自殺(事故)しようとして、この世界に飛ばされた。


 そして、1回目の盗賊を撃退した後で紬とギルが話していた内容。


 神界では、勇者召喚や魔王召喚が流行っていた。


 ……ちょっと聞いてみるか。


「……その、魔王アサヒの外見ってどんな感じでした?」


「外見かぁ……俺達は直接見たことは無いから、聞いた話でしかないが……黒髪って事くらいだな……」


 黒髪。朝陽も黒髪だ。


 だが、黒髪なんて幾らでもいる。


 次は、もっと確信できる質問をする。


「ガイムさん。さっき、数ヶ月前って言ってましたけど、もしかして3ヶ月前じゃないですか?」


「はい。確かその位だったと思います」


 ……間違いない。そう俺は確信した。


 3ヵ月前。それは、朝陽が自殺した月だ。


 これは予想でしかないが、朝陽も俺と同様に神様にこの世界に飛ばされた。


 そして、神様達の間で流行っているという魔王召喚に巻き込まれ、現在は魔王としてダンジョンを築いて、生活しているのではないか?


 ……あながち間違ってないような気がする。


「それとよ。その魔王、もっと訳が分からないのが、近隣の難民を保護して、ダンジョン内に住まわせてるって話だ。奴隷じゃなく、保護だ。何故魔王をやっているのか、理解が出来ん」


「僕もだよ。本当に、なんで魔王をやっているんだろうね」


「……フッ……」


「……?……どうかされましたか?ショウヤさん?」


「いや。何でもありません」


 思わず笑ってしまった。


 まさか、朝陽も自分と同じ世界にいるとはな。


 そうとなれば、目標は1つ。


 朝陽がいるダンジョンに行くことだ。


「皆さん。着替え終わりましたー」


 朝陽がこの世界にいるとわかったところで、着替え終わった女性陣がやって来る。


「よし。寝るか」


「そーだねー。あたしが魔法で出入り口は塞いだから、見張りも必要ないし、ゆっくり寝れるね」


「それじゃ。おやすみ」


 それぞれ挨拶をした後、女性陣はタオルケットと枕の元へ向かい、男性陣は地面にそのまま寝る。


 俺も地面に寝転がると、ゆっくりと目を閉じた。


 枕が無くて少し首が痛いが、疲れていたためか、すぐに眠ってしまった。






 意識がハッキリしない中、ゆっくりと体を起こす。


「……首が痛い……」


 これは寝違えたか?

 枕をせずに寝たからな……


 欠伸と背伸びをすると、目の前に巨大な白黒目を持った影が現れる。


『おはよう。旦那』


「うわああああ!?ば、化け物ッ!?」


 その異様な姿形に驚き、大声を出してしまった。


『何だよその反応!化け物じゃねぇ!俺だよ俺!ギルだってば!』


「……そうだった。ごめん、ギル」


『ちょっと傷ついたぞ……』


 ギルに謝罪し、ゆっくりと立ち上がり、周りを見渡す。


 俺の近くで寝るガイムさんとジミルさん。


 そして、マリンカ、紬、メアナ、クラリッサさん、ローズさんにティアミンさんが眠っていた。


 だいぶ大声を出したが、それによって誰かが目覚めることは無かったようだ。


「……また俺が一番最初に目覚めたのか。早起きに慣れたのかな……」


『旦那。俺が一番最初です』


「あ、そう……」


 どうでもいい事だが、ちょっと残念。


「さて、着替えて、出発の準備でもしておくか」


 バッグの元へ行き、着替えを出して着替える。


 そして、朝食用のパンを取り出そうとバッグを探った。

 ……が、パンは無かった。


 代わりに、少ししかないスナック菓子と、日本にいた時に朝陽から貰ったカルパスが見つかった。


「ヤバい。本格的にヤバい。もう食料がほとんど残ってない」


『これは……旦那の居た世界の食料か。確かに、ここにいる全員分の食料としては少ないな』


 そう。どう考えても足りない。


 俺は食べない計算でも、圧倒的に足りない。


 俺がギルと食料について考えていると、ガサガサと音が鳴る。


 音のなる方を向くと、マリンカが目を擦りながら体を起こしていた。


 二番目はマリンカか。そういえば、この前も俺の次に起きていたな。マリンカも早起きなのか。


「おはよう。マリンカ」


『おはよう。嬢ちゃん』


「……おはよう……」


 お互いに挨拶を済まし、マリンカがこちらに寄って来る。


「……これは……?」


「俺が持ってる唯一の食料。これじゃあ、ここにいる全員分の食料を確保できないんだよね。マリンカはどうしたら良いと思う?」


 俺がそう質問すると、マリンカは少し考える素振りを見せると、再度話し始める。


「……足りない分は、近辺に生ってる果実で代用するとか……かな……」


「なるほど。そういえば、マリンカは前に果実とか食べてるって言ってたな。もしかして、食べられる果実とかわかるのか?」


「……少しだけど……」


 凄いな。流石、サバイバル生活をしていただけはあるな。


「それじゃあ早速……と行きたいところだが、メアナの魔法で外に出れないな。メアナが起きるまで待つしかないか?」


『それだったら、俺がこのアジトに突入した時みたいに、壁を無理やりぶっ壊すっていうのはどうだ?』


「そんなことしたら皆驚いて起きるぞ……」


 ギルの脳筋的な考えに呆れる。


 この邪神、邪神になる前は破壊神だったとかじゃないよな?


「メアナが起きるまでしばらく待ってよう。マリンカもそれでいいか?」


「……うん……」


 こうして、メアナが起きるまで俺とマリンカとギルは、しばらく待つことにした。

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