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3:メアナ

追記:少し改稿しました。メインストーリーに影響はありません。

 俺達は今、『ギルドより東にある研究所』だと思われる建物の前に居る。


 恐らく、この建物だと思う。


 周りの家よりも明らかに造りが違うしな。


「……なんか、研究所っていうか、魔女の家みたいだな」


 地球にある研究所のイメージと全く違う。


 完全に魔女の家。


 怪しいポーションとか作ってそう。


「本当にこの場所で合ってるんですかね?」


「……多分、ここだと思うけど……」


 紬もマリンカもよく分からないらしかった。


「ここが研究所かどうかは、ここに居る人に聞けば良いか」


「それもそうですね」


 玄関だと思われる扉をノックする。


「すみません。ギルドから来た者ですが」


 しばらくすると、物凄い音と共に誰かが勢い良く扉を開けてきた。


「ギ、ギルド!?っていう事は光属性か闇属性の人!?」


 興奮した様子で出てきたのは茶髪で、服装が完全に魔法使いの女性。


 俺より少しだけ身長が高い。


 それよりも目が怖い。


 完全に獲物を捕らえた目だ。


「は、はいそうです。ここが研究所で合ってますか?」


「合ってる合ってる、超合ってる!ギルドから来たって事は、君達はあたしの依頼を受けてここに来たんだろう?さぁ、早く入った!」


 依頼人の女性に強引に引っ張られ、研究所の中に入る。


 その俺の後ろをマリンカと紬が付いて来る。


 研究所の中は意外と狭く、壁際に本が所々倒れて並べられている本棚がある。


 そして、沢山の本と何かの粉、何かのポーションが真ん中の机に雑に置いてあった。


 もしかして片付けとか面倒くさいタイプの人か?


「ほら、適当に座って。机の上がごちゃごちゃなのは気にしないで」


「は、はぁ……」


 言われた通り適当に座る。


 俺の隣にマリンカ、その隣に紬だ。


「さて、早速本題に入ろう。誰が光属性、もしくは闇属性の人かな?」


 その問いかけに、俺とマリンカは目を合わせる。


 ここに来たはいいものの、どうしたものか。


 俺は光属性だから警戒される事は無いだろう。


 しかし、マリンカは闇属性。依頼をしているぐらいだから差別はしないと思うが……


「……俺が光属性で、こっちが闇属性です」


「え!?まさかの光属性と闇属性両方来るなんて!今日はなんて素晴らしい日なんだ!!今まで待ってた甲斐があった!」


 依頼人が物凄くはしゃぎ始めた。


 ともかく、差別する事は無いようだ。


 だが、マリンカと紬が少し引いていた。


「あ、そういえば自己紹介がまだだったね。あたしはメアナ。堅苦しいのは嫌いだからメアナって呼んでくれ。あたしは、ここで光属性と闇属性の研究をしてるんだ。と言っても、あたしは地属性だけどね。ま、よろしく頼むよ!」


 堅苦しい言葉遣いも要らないと追加で言ってきたので、遠慮なく気楽に話をさせてもらおう。


「俺は黒沢翔也だ。黒沢が姓で、翔也が名」


「……マリンカです……」


「篠塚紬です~。あ、私も篠塚が姓で紬が名です」


「まさかの貴族様!?し、失礼致しました!」


 メアナが頭を下げてくる。


 またこの展開かよ……


「いや、姓があるけど貴族じゃないんだ」


「私も同じく、姓がありますけど貴族ではありません」


「へ?姓を持てるのは貴族だけじゃないの?」


 そんなこと言われてもなぁ……


 ここの世界事情なんてよく知らないし、答えようがない。


 マリンカの時は適当に誤魔化せたんだが。


「私と翔也さんの村では、そういうのが無かったんですよ」


「へー、そういう所もあるんだ。初めて知った」


 紬が助け船を出してくれたお蔭で何とか誤魔化せた。


 後でお礼をしなければ。


 お互いの自己紹介も終わり、早速依頼内容に入る。


「それじゃあ、実際に光属性と闇属性の魔法を使っているところを見てみたいんだけど。良いかな?」


「……えーと、俺は魔法を使った事が無いんだが」


「……私も無い……」


「なら、魔力量を調べるために魔法を使ってみてくれる?それなら問題ないでしょ?じゃ、早速裏庭へ行こう!」


 また強引に手を引っ張られて研究所の裏へ向かう。


 研究所の裏には、綺麗に整地された場所があった。


「じゃ、初級魔法から試してみよう。ショウヤは『シャイニングソード』、マリンカは『ダークソード』って、利き手を剣を構えるようしてから詠唱してみて」


 メアナから指示が出る。


 ついに……俺にも魔法を使う時が来たか。


 やっぱり、異世界と言ったら魔法だよな。


「『シャイニングソード』!」


 俺が詠唱した瞬間、右手から片手剣くらいの純白に光輝く剣が現れる。


「おぉ!魔法だ!」


「良かったですね!翔也さん!」


 嬉しすぎて声が出てしまった。


 でも、本当に感動だ。


「次は、マリンカだね」


「……う、うん……えーと……『ダークソード』……」


 今度は、マリンカの右手から漆黒の剣が現れる。


 マリンカも成功したようだ。


「……す、すごい……」


「マリンカちゃんも良かったね!」


「……うん……」


 マリンカと紬が笑いあう。


 二人の笑顔を見ると癒されるなぁ……


「とりあえず、魔力はあるみたいだね。次は中級魔法。ショウヤは『シャイニングビーム』、マリンカは『シャドウバインド』って、あの木に狙いを定めて詠唱してみて」


 ビームっていうからには、何処からか光線が放たれるのか?


 一応、手の平を木に向ける。


 なんとなく手の平から光線が出るような気がした。


「『シャイニングビーム』!」


 ……あれ?何も出ない?


「もしかして俺、やり方間違えた?」


「いや、それで合ってるよ。多分、ショウヤの魔力量は少ないんだろうね」


 え。


 何それ。


 特殊な属性を持っているのに魔力量が少ない……?


 おかしい。俺の記憶にあるラノベやゲームでは、異世界転移した主人公は決まって特殊な能力やチート性能を持っていたはずだが。


 光属性というところまでは良かったのに。


 どうやら俺は、チート主人公にはなれなかったようだ……


「まぁ、魔力量は人それぞれだから。気にしない方が良いって!」


 メアナに慰められる。


 なんか物凄い申し訳ない気持ちになってきた。


「役に立てなくてごめんな……」


「い、いや!光属性魔法を見れただけでもありがたいから!」


「……え、えーと……魔法を使っていいですか……?」


 マリンカが困惑した顔をしながら、魔法を使って良いのかどうか聞いてくる。


 ……なんか、俺の所為で微妙な空気にしてしまったな。


「ごめん、マリンカ。じゃ、マリンカの魔法を見せてくれ」


「……わかった……シャドウバインド……」


 マリンカが木に手を向けて詠唱すると、その先にあった木が影の輪っかのようなものに縛られた。


「……出来た……?」


「おー。マリンカちゃんは中級魔法も使えるみたいだね。次は、上級魔法の『ブラックホール』を詠唱してみて」


 ブラックホール?


 それって大丈夫なのか?


「……『ブラックホール』……」


 マリンカが詠唱するも、何も起こらない。


「マリンカは中級魔法までみたいだね。ありがとう!良いものを見せてもらったよ!」


 メアナは満足そうだ。


 ……はぁ……俺も中級魔法使いたかったな……


 一人悲しみに浸っていると、紬が何かを考え始めた。


「そういえば、私の属性って何だったんでしょうか?」


「……あ、言われてみれば」


 紬がギルドの水晶に手を翳した時、水晶は何故か爆発した。


 結局、紬は何属性だったのだろうか。


「ツムギは自分の属性をまだ調べてないの?」


「えーと……ギルドで調べようとはしたんですけど、私が水晶に手を翳したら何故か水晶が爆発しちゃったんですよね」


「……爆発?どういうこと?ツムギ、爆発する前に水晶に何か変な事が起こらなかった?」


「変な事……あ、確か爆発する前に、水晶が虹色に輝いたと思ったら一瞬金色になりました」


「虹色?金色?……どこかで見たような、聞いたような……」


 メアナは必死に思い出そうと奮闘する。


 もしかしたら、紬の属性が分かるかもしれないな。


「ちょっと待ってて。すぐに戻ってくるから」


 それだけ言うと、メアナは何処かに行ってしまった。


 研究所に戻ったのだろうか。


 しばらくすると、何かの本を持ってメアナが戻ってきた。


「えーと、たしかこの本に書いてあったような気がするんだよねー……ってあったあった。これだ。『水晶は基本、火、水、氷、毒、地、雷、風、光、闇の九つの属性の色を表すが、稀に虹色、金色が見られる。虹色は金色を表す前兆だと考えられている。金色は未だに解明されていない属性で、属性魔法も不明。今も尚、研究が進められている』……」


「……それって、凄い珍しい属性だけど、属性魔法が不明って事は役に立たないって事ですか……?」


「……まぁ、そういう事になるね」


 ……俺よりも悲惨な人がいた。


 恐らくだが、紬は元神様だから珍しい属性が出たんじゃないのだろうか?


 そんな考えはメアナには言えないが。


「でも、凄いよ!水晶が金色に光るなんて初めて聞いたし!そうだ、ちょっとだけ研究させてくれないかな?報酬は出すからさ。ね?」


「えーと……」


「じゃあさ。あたしがそっちのパーティに入るっていうのはどう?それなら問題ないでしょ?それに、あたし結構強いよ?」


 まさかのパーティに入る事を希望してきた。


 仲間が増えるのはありがたい。


 だが、一応マリンカと紬に確認をとる。


「俺は大丈夫だけど、2人はどう?」


「まぁ、変な事されなければ大丈夫ですけど」


「……大丈夫……」


「皆大丈夫みたいだし、改めてよろしく!!」


「……本当に良いのか?俺らは初心者だし、この研究所から離れる事になるかもしれないぞ?」


 しばらくはこの町に滞在するつもりだが、いつマリンカが差別されるか分からない。


 そうなった場合には、即座にこの町を出ていくつもりだ。


「いいんだよ。どうせ今までロクに研究も進まなかったしね。それよりも、君達といた方が色々と分かる事もあるだろうし。あ、早速荷物をまとめてくるね」


 そう言って、メアナは研究所に戻っていった。


 まさか、ここで仲間が増えるとは思いもしなかった。






 メアナの支度が終わり、今はギルドに戻ってきている。


 ここに戻ってくる途中でキャリーバッグの事をメアナに色々聞かれて疲れた。


 そして、ギルドから今回の報酬を受け取る。


 仲間になっても報酬はしっかりもらうが、結局報酬はパーティ全体の資金になるため、メアナにとって報酬は出していないのも同然になる。


 まぁ、こっちも魔法使わせてもらったし別にいいけど。


「今更だが、泊まる場所がまだ無い。ちなみにメアナの家って……」


「あたしの家は研究所だから、4人も泊まれるスペースが無いんだよね」


「じゃあ、適当な宿に泊まるか」


「それなら、あたしに任せて!案内するよ!」


 メアナの案内で宿に向かう。


 宿に行く途中でメアナは多くの人から挨拶されていた。


 この町では結構人気なのか。


 美人だし、当然か。


「着いたよ。ここの宿、綺麗だし結構安いんだよねー」


 安いのは助かる。


 金貨七枚もあれば大抵の所には泊まれるだろうが、安い方が良い。


「よ!宿屋のおっちゃん!久しぶりだな!」


「おー!メアナじゃねえか!久しぶりだな。中々姿を現さないから、町の連中はお前が何かの実験に失敗してぶっ倒れてるって噂してたんだぜ」


「酷い噂だな……ま、その通りだけど!」


「「ハハハハハハハ!!」」


 本当に、この町の人とは凄く仲が良いらしいな。


 メアナの人柄の良さが感じられる。


「で、あたしたちをしばらく泊めてくれないかな。研究所は狭いし散らかってるから他の3人を泊めれそうにないんだよね」


「なんだぁ?見ない間に仲間が出来たんか?」


「ま、さっきだけどね」


「あんたら、こいつは雑な性格だから大変だと思うけど、よろしく頼むな?」


「へ?あ、はい」


 急に話しかけられて変な声が出てしまった。


「それじゃ、改めて。何日泊まっていく予定だ?」


「とりあえず1日だけで」


「別々か?それとも全員一緒か?」


「えーと、どっちがいい?」


 他の3人に聞く。


 俺はどっちでもいい。


「私は一緒でも構いませんよ」


「……私も……」


「あたしも大丈夫だよ」


「じゃ、全員一緒で」


「わかった。夕食はどうする?」


「いや、大丈夫です。こっちで用意してあります」


 この世界の料理を食べてみたいが、元の世界の食料を早めに食べないと賞味期限が。


「なら、銅貨四十枚だ。」


「金貨しか無いんですが、大丈夫ですか?」


「大丈夫だぞ」


 先ほどメアナの依頼で手に入った金貨を取り出す。


「よし、確かに受け取った。これが釣りと部屋の鍵で、部屋は二階の一番奥だ。鍵は失くさないでくれよ?」


「分かりました」


 鍵を受け取り、部屋に向かう。


 階段を上るときに重いキャリーバッグを持つ羽目になってしまった。


 だが、何とか部屋の前に着き扉を開ける。


 部屋全体は思っていたよりも広く、ベッドも大きかった。


 荷物を置き、四人でベッドに座る。


 疲れた。


 まだ昼過ぎだが、物凄く疲れた。

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