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麗しき梓は失われし花 (Koushi -1)
「あずさ」という樹種は古代の「梓弓」の材料として言及されるが、現在は稀な方言として以外は廃れている。
そのため、古代における梓の実体については、系統的にも大きく異なる諸説があったが、現在はほぼ確定している。
<以上、wikipediaより引用>
俺が、西藤浩志が、あの愛すべき柚木梓を初めて知ったのは中三の秋だったが、初めて出会ったのはその冬だった。
そして梓への愛を知ったのはもっと後で、それから数年後のことだった。
俺は広島生まれだが、転勤族の父に連れられて、岡山・福岡・川崎・大阪を転々とし、中三の秋という至極中途半端な時期に神奈川の公立中学に入学した。
そこは公立と言っても進学校であったから(ちなみに俺は成績が良かったから特別に入学を許された)、周りの連中は受験モードで殺気立っており、わざわざ俺と新しく親しくなろうとするやつはいなかった。
いじめられたわけではないし一緒に昼食を食べる程度の仲のクラスメイトはいたから、問題はなかった。
ただ、その中学校での思い出が全くないだけだ。梓についての記憶を除いて。