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雪の手紙

作者: 夜波



僕に一通の手紙が来た。その手紙を置いていってくれたのは知り合いの人だ。


白い封筒に雪のシール。僕はそれを見ただけで誰から送られたのか見当がついた。


封を開けて、手紙を取り出す。予想通り、あの子から送られたようだ。あの子が頼んで僕にこの手紙を届けてくれたのだろう。


色んな感情と共に手紙を読み始めた。雪が降る日のことである。



こんにちは、久しぶりだね。元気にしてるかな?


私は元気……とは言えないかな。やっぱりこの季節は冷えるからね。でも冬は嫌いじゃない。寧ろ好きなくらいだよ。


雪ってさ、不思議だよね。突然降ったかと思えば直ぐに溶けてしまう。でも宝石のように綺麗な景色を残してくれる。


小さい頃は君と一緒に雪だるまを作ったよね。覚えてるかな。次の日に雪だるまが溶けちゃって私が泣いていたら、君がまた作ろうよ。って言ってくれて。本当に優しかったね。君は。


いま、私がいるところでも雪が降っています。残念ながら雪だるまは作れないけどね。でも綺麗な雪だよ。君にも見せたいくらい。


今年は会いに行こうって思ってたけど行けなさそう。君に送る手紙も暫くは送れないかも。でも安心して。私は大丈夫だから。


やっぱり、少し寂しいや。また君に会いたい。君と一緒に雪を見たい。君と一緒に冬の星座を見たい。でもそれは叶わない?


違うよね。いつかは叶う。望めばその夢は叶うんだって君は言ってくれたもんね。


君は私に君のことを忘れてくれって言ったことがあったよね。そんなの無理に決まってんじゃん。だって今でも君のことが好きなんだよ? 君と離れてから何度も告白された。でも全部断った。私には好きな人がいるからって。


あとね、さっきの会えないっていうのは嘘。多分、君のところに行ける。君はそれを悲しむかもしれない。なんで、って言うかもしれない。でも私は君に逢えるからそれでもいいんだ。


その時にこの雪のことも話してあげる。出来たらこの雪を持っていきたいくらい。


少し長くなっちゃったね。すぐに君のところへ行くと思うから。その時は悲しみとかじゃなくて、喜んで迎え入れてくれると嬉しいな。


雪のように儚くて、それでも一瞬が美しい。そんな感じになれて私は嬉しいから。君の好きな雪であれて嬉しい。


じゃあ、またね。 雪より。




まったく、早すぎるよ……。僕の事なんて忘れてくれたら良かったのに。


そう思いつつも涙が出るのは何故だろう。


君が来たら僕は怒るだろう。そして、抱きしめてあげる。僕だって君に会いたい。けど望んではいけない事だから。


いつか来るって思ってたけど、こんなに早く来ちゃうなんて。


でも、その時はここで新しく暮らせるといいな。離れ離れになっちゃったけど、君とまた会えるならいつまでも待つつもりだったけど。


そうして、僕は雪からの手紙を冷たい石の上に置いてとめどなく流れる涙を拭いた。


積もった雪に触れようとしても触れられない。でも、何故か触れた感覚だけは感じられた。







時は過ぎて、数年後。


「雪、向こうで元気にしてるかな」


「元気にしていますよ。〇〇くんと一緒にいるんじゃないですか?」


「そうだな。雪、そっちで楽しくしているならお父さんは安心だ」


その男は涙を流しながら冷たい石に花を添えた。悲しみの涙ではなく、安心と喜びの涙だった。


その石には二人の名前が書いてあった。


雪と〇〇、ここに眠る。と。




雪と僕は遥かなる空の上で笑顔で話していた。今まで話すことができなかった思い出の話を。




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