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2-α
僕は、あの演奏を聞いた後でも、吹奏楽部に入ろうと決心していた。なぜなら、いくら下手な演奏でも、僕は自分が演奏できればなんでもいいと思っているからである。それくらいの情熱が僕のトランペットに向けられている。僕は溜息をついた。「にしても……」あの演奏は下手すぎる。ほんとに、あれではコンクールで銀賞をとれるかどうかも怪しいレベルである。と、となりにいる女が不意に話しかけてきて、心臓が飛び散りそうになった。「なにが……にしても、ですが?」
僕は、そのときも今でも女に話しかけられることには慣れていないのである。桜さんの時のように。僕は言葉をつまらせたのだが、ゆっくりと発声した。
「えーと、それは。す、吹部の演奏が下手だな―とかなんとかかんとか」
そのことばに彼女はうなずき、「そうには思いませんでしたけど。そういえば、吹部、入るんですか?」
まぁ、僕はトランペット経験ありだからな。そりゃ入るさ。すると、彼女はなんの因果か、僕を驚かす言葉を発した。