プロローグーα
何十という顔が、一斉に前を向いていた。というがその人にもいろいろと種類があり、緊張してやや頬が朱色に染まっている人や足をぶらぶらしている人、下を向いている人などたくさんの種類がいる。その中でも特に印象を与えずにとにかくぼーっとしているような人も何人もいた。それはそうと何人かの男は女に対してなんだかいやらしい視線を迎えてくるのでやめてほしい。こんなことばっかりしている馬鹿まるだしの人たちと同じような目で見られても、俺は知らないぞ、と思いながら、和斗は息を吐いた。とくに理由なんてものはない。すると、司会の人が次は吹奏楽部の演奏です、と言った。その言葉を聞いて、和斗はすこし心臓が高鳴った。和斗は小学校6年の時になんとなく見ていたTVの内容が偶然吹奏楽のものであったため、興味を持った。和斗は演奏に注目する。前の指揮者の男が指揮棒を上げた。トランペットやホルンやサックスなどの楽器がほぼ一斉に上がる。和斗はつばを飲んだ。指揮棒が揺れ、楽器から音が出た。この曲が何かは知らないが、初心者から見ればなかなかうまいと思う。和斗は周りを見回し、一人、なんだか唖然としている男を見つけて、和斗は少しの間ぎょっとした。