86 戦竜教団の心術防御
外はオイノとエカヌスが作り出した猛吹雪と怪物達によって撹乱されている。
だがそれがいつまで持つか分からない。相手は、千年以上も魔導師を相手にしてきた真竜の眷属なのだから。
だけど……。
「くそ、また違う!」
開いた扉の先にはガランとした部屋が広がっている。
「占術防御も万全じゃな」
爺ちゃんの声もいつものような余裕はない。目に見えないものに対して唯一効果のある占術だが、占術を防ぐ方法も防御術には存在する。
亜竜文明のマジックアイテムは、爺ちゃんほどの使い手ですら防ぐ手段、おそらく占術という魔法そのものの発現を妨害する理論が存在するのだろう。
「どうする……」
「師父達なら知っているかもしれません、他に知っている人がいるとすればですが……」
少し考えて、ナヴィが言った。
確かに上位の権力持ちを捕らえて心を読むしかないか。だが、ナヴィの言葉は大師父の居場所を知っているヤツは誰もいないという可能性も指摘していた。
「方針変更だ、師父を探すことにしよう」
他に手はない、俺たちはここに集まっているはずの師父を捜すことにした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
貴賓室にいた、アルカー師父は北方の集落を率いている男だった。
「おのれ!」
両膝を銃弾で砕かれたというのに、腰にさしていた投斧を投擲して抵抗する。
「マーシフル・バレットは効かないか」
痛覚を麻痺する技術かマジックアイテムを持っているのか、痛みを与えるマーシフルの弾丸は効果がない。
「大師父戦を控えているのに魔力は消耗したくないんだけれど……仕方がない」
例えマジックアイテムで防御していてもこれだけは通る。
「魔束射心縛」
銃の系統は既存の魔法防御を貫通する。
たとえそれが亜竜の遺産であってもだ。
「な、に……」
アルカー師父はこちらを射殺すような視線を向けながら、床に倒れた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
目の前にはアルカー師父の頭から引き出した大師父の部屋の扉がある。
「ボクルグ神よ」
パレアが短い祈りの言葉を述べた
俺も半ば祈るような気持ちで扉を開く……。
だが神の加護は俺たちには届かなかった。そこもがらんとした空き部屋だったのだ。




