83 空飛ぶ魔導
「結論から言おう、あれは飛ぶな」
合流後、オイノが真っ先にそう言った。
「おそらく古亜竜の技術じゃろう」
「第三種族の……なんでそれを戦竜教団が?」
「さあて、なにせ何十万年も前に栄えた種族じゃからのう。こんな機械は残っておらぬはずじゃ」
「第二種族は資源の枯渇から耐用年数に優れた技術を発展させただけで、古亜竜はそういった技術はないはずだよね」
「うむ、あの機械は作られたのは最近……といっても何十年かは経過しておるが、古亜竜の時代のものではないな」
そういいながら爺ちゃんはメモを差し出した。
「なにこれ」
俺はざっと目を通す。
それは師父達を聖地に招集するように書かれた命令書だ。
「サインは大師父アク・ヴァンか」
戦竜教団のものと見て間違いない。
「機械の中に焼却されてあったものを魔法で再生させたものじゃ」
これを師父達が聖地に集合していて危険と見るか、それともチャンスと見るか。
「この機械はもう一台、ここに待機していたようじゃ。そっちはもっと大型じゃな。30人くらいは乗れるものじゃろう」
「ここに一度集合して、聖地に向かうとみるべきですね」
「最初から聖地に向かうはずだったよね。俺はこのまま追いかけようと思う」
「バズがそう言うのならワシらも異存はないぞ」
「はい、私もそれでいいと思います」
爺ちゃんとナヴィが言った。他のみんなも頷いている。
「ありがとう、でも聖地は遠いからね。相手は航空機を使ったのにこちらは徒歩じゃ時間がかかりすぎる」
「どうするつもり?」
「だったら俺たちもあれを使おう」
俺は残っている航空機を指差した。
「使うって……操縦の仕方なんて分かるの?」
パレアが不安そうに言うのに、俺はニヤリと笑って応えた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「やっぱりあなたデタラメよ」
雲の上を魔導の鳥が飛ぶ。
エンジンは無いが、込められた魔法が推進力を産み同時に不可視のフィールドを形成する。
このときに大気中に放出された魔力の残りが海中や大地に残っていたのが、緑魚達を引き寄せていたのだ。
俺の目の前には無数のボタンと水晶球が並んでいる。
もちろん俺の人生において、こんな機械に触れたことはないが……。
「他人の技術を一時的に得られる心術。誰にでも使える新流の魔法として構築すればそれだけで一財産は稼げそうじゃのう」
俺は戦竜教団員の脳内から操縦技術の技能を引き出し、こうして操縦しているのだ。
「空飛んでる! すごい!」
窓から外を眺めて無邪気に笑うリアの声を聞きながら、俺たちは聖地へと向かっていった。




