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51 兄と弟(アップロードミス修正)

 俺の魔導師としての欠陥が明らかになった時。

 精神は肉体の影響を受けるためか、多くの子供がそうであるように俺は家族から失望されたのではないかと恐れた。

 だから……つい俺は心術で父さんの心を読もうとしてしまった。


 父さんの心は防御魔法で一分の隙も無く守られていた。


「バズさん」


 呼ばれて俺は目を開けた。

 窓から差し込む朝日が眩しい。


「バズさん大丈夫?」


 リアが心配そうに俺の顔を見つめている。


「うなされてたよ」

「小さかったころのことを夢に見てね」

「良くない思い出だったの?」

「家族から拒絶された、俺が魔導師として欠陥品だと分かったときのことだよ」

「……バズさんの家族のことは分からないけど、私はずっとバズさんの味方だよ」

「ありがとリア」


 髪を撫でると、リアはくすぐったそうに笑った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 きっかけはナヴィだった。


「バロウズ様、気になる点があります」

「なんだナヴィ」


 ナヴィがテーブルに広げたのは何かの帳簿の写しだった。


「これをどこで?」

「友人が手に入れたものです」

「友人……」

「逃亡奴隷です。今はアウトローな悪党をやっているそうですが」

「そんな友人がいたのか」

「バロウズ様とも知り合っているはずです」

「なに?」

「ミリアという方です、河原で魚をごちそうになったとか」

「あいつか」


 川で訓練していたときに出会った女だ。

 只者ではないとは思っていたが、ここであいつが出てくるのか。

 そしてナヴィの知り合い。


「それで、帳簿には何か気になる点があったのか?」

「はい、まず屋敷の人数に対して食費が多すぎます」

「多すぎる?」


 ほとんど食事をしていなかったこの屋敷の住人の様子からは真逆の印象を受ける。

 三日間の間、調べていたが、この屋敷の住人は一日に二度、スープ皿一杯のスープしか口にしていない。

 また、あのスープは俺たちには提供されないようだ。


「ちょっと待て、俺はこの屋敷のやつらはスープを飲んでいるところ以外一度も見ていないぞ。パンすら口に入れていない。あのスープはそんな高級品なのか?」

「……ご覧になった方が早いでしょう、こちらがその内訳です」

「なんだよこれ、ここに書いてあるのは普通の食材だ、それもこんなに大量に」


 百人分はある。それも毎月購入されている。


「人件費はそれほどでもないな、どういうことだ。近隣の村に配っているのか?」

「ここ周辺で食料が不足しているという話は聞きません。だからこそこれだけの食料を購入できているのでしょうし」

「しかし、ここに無いとするとどこかに送っているはずだ」

「ええ、これだけ大量の食料を運ぶなら荷車は必須です。わだちが必ずあるはず」

「ミリアさんはなんて?」

「さすがご主人様、察しがいいですね。はい、すでにそれも調べたそうです」

「これくらいの洞察は誰でもできる、ミリアだって疑問に思って調べるだろう」

「場所はアンダー・オブ・サルナス、サルナスの大迷宮です」


 おいおい、ここでダンジョンが出てくるのか。

 一体サルナス家と兄さんは何を企んでいるんだ。


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