表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/96

4 vsニードルベア

 うちの領地にニードルベアが出たらしい。


「どうしたものか」


 父さんは渋い顔をしてこめかみに指を押し当てていた。


 ニードルベアはヒグマの背中にフェンシングのフルーレのような針が生えたような怪物で。針からは麻痺性の毒液が分泌している。ニードルベアは背中の筋肉によって毒液の圧力を上げ、針を毒液と共に発射する能力がある。並みの戦士では手に余る怪物だ。

 被害を前提として兵を派遣するか、凄腕と呼ばれる冒険者を雇うか、賞金をかけて広く冒険者を呼び寄せるか。どの方法もお金や治安の問題がある。

 こうした場合に、この国の領主がよくやる方法が……


「しばらく様子を見るか」


 問題の先送りだった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「領主は面倒臭いのう」


 爺ちゃんは父さんの話をすると決まってそう言う。昔はなんかの褒美に領地をもらい領主だった時代もあったらしいが、すぐに飽きて側近に全部丸投げして逃げたそうだ。


「モンスターによってある程度被害が出れば、国王に納める今年の税を減税する理由になるからみたいだね」

「面倒臭いのう」


 俺は整備を終え、弾を込め終えた愛銃を腰に差す。


「だからといって被害が出るのを放ってはおけないね」


 ニードルベアくらいなら俺でもおそらく倒せる。被害が広がる前に片付けてしまおう。



 ニードルベアを見つけた時には、もう夕暮れになっていた。


 『グルル!』


 体長3メートル、体重400キロくらいの怪物だ。こうして相対すると、背中の逆立っている針のせいか実際のサイズ以上に大きく見える。あんなバケモノに槍を頼りに挑む戦士たちの勇気は賞賛すべきだ。

 爺ちゃんもついてきてくれているが、基本的に手助けするつもりはないだろう。ピンチの時は助けてもくれるだろうが、これくらいは一人で倒せなくては爺ちゃんの弟子の名が泣く。


 幻術で完全不可視になった俺の動きを知覚できないはずのニードルベアは、ゆっくりとだか俺の方へ顔を向ける。俺が動くときにわずかにゆらぐ空気の流れ、俺の体温は感知できなくても俺の体温が移った大気に残る僅かな熱、そのような僅かな気配からニードルベアは俺の位置を大まかにだが推測できている。


 達人の能力を生まれつき持ってるんだから、モンスターってスゴイ。


 いつまでも隠れていても仕方がない。俺はホルスターから銃を引き抜き素早く2発発射する。

 バチバチと弾丸がニードルベアの額と肩に命中するが、分厚い筋肉や骨に阻まれて致命傷には至っていない。

 ニードルベアが咆哮を上げながら背中の針を俺のいる位置にめがけて飛ばす。

 俺は直撃コースの2本を拳銃で撃ち落とした。残った針は俺の周囲の地面をえぐった。

 だがそれがニードルベアの狙い。撃ち落とされた針のコースに俺がいると確信したニードルベアが咆哮を上げて恐ろしい勢いで突撃してくる。

 俺は不可視を解除し右へと飛んだ。強化魔法の無い俺の跳躍よりもはるかに速く、ニードルベアの爪が俺を引き裂いた。


「残念、それも幻だ」


 本物の俺はニードルベアの真下。顎の下から1発の弾丸を撃ちこむ。これで5発目。骨の隙間を縫うようにして弾丸は脳へ到達し、そしてさっきと同じ様に分厚い頭蓋骨に弾かれ、跳弾する。

 弾丸はニードルベアの頭の中を暴れ回り、拳銃弾一発で巨大なニードルベアを倒しきった。


「我が弟子ながら末恐ろしいのう」


 ニードルベアの身体がぐらりと揺れ、慌てて下敷きにならないようその場から逃げ出す俺を見て、爺ちゃんは楽しそうに笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ