8.魔法の本
よ、ようやく魔法の特訓に…長かったな。毎回ここまでが長いんだよ…。
ババアに対して怒りながら啖呵を切ってしまった。喉元過ぎればなんたら~のように今では微塵も怒りは残っていない。人間の怒りは30分も持たないって言うけれど俺は1分ぐらいしか持たなかった。
すぐに果ててしまう俺は早漏やろうと言われてしまうだろうか…。まぁそれは置いておいてだ。
じゃじゃーん!魔法の教本!!
ババアに近づいた隙に拝借してきてしまった。手癖の悪さが顕著に出てしまったかな?まぁ、出来心というか今までの迷惑料として借りるだけだ。そのうち返す。たぶん。きっと。
黒いハードカバーで、意外と薄い。中を開いてみると手書きで色々書いてある。ごちゃっとした感じで、メモ帳と言ったほうが正しいかもしれない。おそらく元々書いてあった内容にババアが書き足していったのだろう。細かなコツとか注意事項とか書いてありそうだ。
なになに…1.魔法を使う前にというページから読んでいこう。
【魔力が見えない方は魔法を使う才能がありません。すぐにこの本を売りましょう。あなたの役には立ちません】
こんちくしょー!!
ババアがやる気がなかったのはこの為か!元々魔法を使うためには魔力を視認できないといけないようだ。そんなの知らんかったよ!というか視認できるかどうかでわかるんなら一発で適正判断できるじゃねーか。最初に会った時に一言教えてくれよ!
しかし、諦められない。せっかく魔法の使える異世界に転生したというのに魔法が使えずに親指加えているだけとかありえない!女神さまもそこらへん配慮してくれてないのだろうか。
とりあえず次のページに魔力の練り方が書いてあるので実践してみることにした。
【見えている魔力を体内に押さえ込み圧縮するように押し込み、手の先から絞り出すようにして使用する】
簡単に言ってしまえば全身からダダ漏れているのを一箇所に集中することで使いやすくしているのだろう。たぶん…。
目に見えないけれど、全身に意識を集中させる。
どうしても魔法が使いたい、せめて魔力を感じることができればほんの少しだが魔法が使えるのではないか…?心臓の音が聞こえる。窓の外から鳥たちの鳴き声や使用人がドアの外を歩いていく物音も聞こえる。
もっと集中だ、集中。
徐々に音が消えていく。
自分の世界を構築し、そこに没入する。
自分の生命を感じろ…。
そこは無。何もない世界…。
気がついたら眠っていた。
はっ!
ここはどこだ!?本当に眠ってしまっていたらしい。夢の中だと自然と理解できる時があるけれどそういう状態だと思えた。でもどこかでこの場所を見たことがある気がする。真っ白な空間、ただただ続いていく通路。
そうだ…ここは…
「坂道 昇さん、いえ今はアルフォンス=エルロードでしたね」
「あ、女神さまどうもご無沙汰です」
そこには転生する前にであった女神さまがいた。前回会った時よりも少しやつれているというか疲れているように見える。それでも有り余る神々しさ、白を基調とした衣装はとても美しい。
ネット小説だとよくある展開だ。きっと女神さまが俺の願いを聞き届け、魔法を使えるようにしてくれるのだろう。
「最近はいかかですか?自分の望んだ人生は送れていますか?」
「いいえ、まだ4歳なので何かと自由には行動できませんし、魔法の才能がないらしいので魔法が覚えられないそうなのです」
「それは大変ですね!私も陰ながら見守っていますよ。ではさようなら」
「はい…さよう…っって待ってください!!!普通こういった場面では女神さまが俺にでは魔法の見えるようにして差し上げるんじゃないですか!」
「いえ、私にそんな力はないですからね…。現世の人に干渉するとどんな影響が出るかわからないですしねぇ…」
「エェ…じゃぁなんで今日呼んだんですか。完全に無駄足じゃないですか」
「いや、呼んだもなにもアルフォンスさんが勝手に来ただけですから」
「そうなんすか。それは失礼いたしました」
「はい、では気をつけて帰ってくださいね。次はあなたがその生命をきちんと全うした時に会いましょう。あ、あと女神らしくアドバイスを一つ」
可愛らしくウインクをすると
「あの世界の魔力を感知する才能は単にショック療法です。子供の頃にしか適用されませんが…。アルフォンスさんの歳ならまだギリギリ間に合うんじゃないでしょうか。それにあなたは転生というある意味大魔術を受けているんですから、きっと枷になっているのは魔法が使えない世界の記憶が影響しているんじゃないかと思いますよ。ちょっとお節介が過ぎましたかね。
では―――あなたの人生に祝福があらんことを」
パチリ。
目を覚ますと自分の部屋にいた。絨毯の上でよだれを垂らして寝ていたようだ。
ふと視線を自分の体に移してみると薄い煙のようなモノが見えるようになっていた。なんだかんだ言って女神さまは俺に魔法を使えるようにしてくれたようだ。しかしショック療法というのはどういうことだったのだろうか。
前世の記憶を持つ故に自分は魔法が使えないと本能的に思い込んでいたのだろうか?
とりあえず魔力が見えるようになったので、先ほどあった魔力を練り上げる方法をもう一度試してみる。
するとすごい勢いで体の内部に魔力が集まりだし、圧縮される。その状態を維持するのにも魔力を消費していく。
…おかしい。
だんだんと力が抜けていき俺は絨毯にブッ倒れた。
自力では起き上がれない。
どうしても眠気に勝てずに俺は再び眠りに落ちる。
結論。
魔力の練りすぎで、少ない魔力があっさりと消費されたため仮死状態に陥り女神さまのところに逝ってしまっていたようだ。
その影響で図らずともショック療法が行われていたようだ。
一歩間違えれば死んでいたのかもしれない、というか半歩ぐらい死んでたし。
なにはともあれ魔力は見えるようになったのでこれから魔法の特訓をして、あのババアを見返してやるぜ!!
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