6.恋の力
3000文字に少し足らず…。4000はいきたいんだけどなぁ。
感想と評価していただけたら嬉しいです!!ぜひぜひ!
あぁ、なんて清々しい日々だろうか!
生まれ変わってこの方、いや前世でもここまで生きていることが素晴らしいと感じることはなかっただろう。初恋(一応前世でもあったけれど)の呪い、恋の病に罹ってしまったというのはこういうことをいうのだろうか。
アリサは週に三日ほどウチの屋敷に訪れているようだ。いったいどのような様で来ているのか今度聞いてみよう。もし母上の嫌がらせなど受けていたら俺が断固として抗議するといったもんだ!華麗に駆けつける騎士のようにお姫様を助け出すのだ!
大丈夫ですか綺麗なお嬢さん♪とね!
「大丈夫ですか?アルフォンス様」
「ファッ!?はいぃいい。ん…ンン、大丈夫です」
ついついぼーっとしていてしまったか。最近家庭教師にメイドの一人が加わった。彼女の名前は「ハル」と言って、最近メイド兼俺の家庭教師役として雇われてきた人だ。どうも隣国から移り住んできたらしいが、学問に関してはとても博識で俺の質問にはほとんど答えを返してくれる。あの耄碌ばばぁとは大違いだ。
「ラナーク王国の南に位置するのがハル先生の居たリーナ王国なのですよね?」
「はい、現在ラナークとリーナはお互いに同盟を結んでおり、交易も盛んです。アムダムやジルベルトといった戦争に対し積極的な国々が存在する以上相互の協力は必要でしょう。リーナはラナークに多くの食料を、ラナークは潤沢な鉱石や技術をといったようにお互いに利が生じているためこの同盟は強固なものとなっています」
「リーナで多く取れるものってなんなんですか?」
「大麦や小麦といったものが多くありますね。あとは野菜の類が中心となります。リーナはラナークと異なり広大な平地が広がっているので大規模栽培が可能なのです。その代わり土地的に戦争等に陥った場合限りなく平地が続くため守りづらいといった点もあり、アムダムからの攻勢は頻繁にあるのが悩みの種とも言えるでしょう。…っとアルフォンス様には少し難しい話になってしまいましたね」
「いえ、全然かまいません!兄は僕と同じ年の頃にもっと進んだことを学んでいたと母が言っていたので」
「カイリ様ですか、まだ数回しか話したことはないですが優秀な方のようですね。アルフォンス様も負けていられないということですね」
そういうとニッコリとハルは微笑んだ。論理だててしっかり話すせいか少し怖い印象を他人に与えがちな人だけれど、笑うとすごく可愛らしい人なんだ。いつもこういった表情ができればモテると思うのだけれどなぁ…。
「アルフォンス様なにやら失礼なことでも考えておらっしゃいますか?」
「いえ、ハル先生は今日もお綺麗だなぁと思いまして…」
「ふふふ、ならよろしいです」
そう、ハル先生の唯一の欠点はいき遅れてしまっていることなのだ。本人もかなり気にしているようで年齢のことを話したりすると途端に機嫌が悪くなる。俺が初めて会った時に年齢を聞こうとしたらいきなり恐ろしい表情を浮かべ「・・・・・・女性に年齢を聞くのはとても失礼なことですよ」と急に剣幕が変わった。
故に年齢と結婚などといったことはハル先生の前では禁句なのだ。
「あの…ハル先生は魔法を教えることができますか?」
「残念ながら私は魔法の才能はなかったので教えることはできません。アルフォンス様には既に高名な魔法使いの方が家庭教師としてついていらっしゃると聞いていますが?」
「ま、まぁ…一応」
「ならば私から魔法関していうことはございません。下手に口を出してアルフォンス様に悪影響を出してしまったら元も子もありません」
できれば口を出して頂きたいのですが…。むしろ代わりにあの老婆の話を聞いててくれるだけで大助かりなんですが…。
アランは取り合ってくれないので、他の使用人に助けを求めるためにフローラ先生がボケているんだと伝えてもどうしてか信じてもらえない。奇跡的にその時だけ正気に戻っているようだった。
二日に一度やってくるフローラ先生の魔法の授業が最近憂鬱になってきていたが、拷問のような介護の授業が終わり午後になると必ずアリサがやってくるのでプラマイゼロと言えるだろう。
次の日になり、魔法の授業が始める。
「やぁやぁ、レイブン元気にしとったか!まーた肉ばっかり食べて丸々太っとったんじゃなかろーね」
「いえいえ、きちんと野菜もとっていましたフローラ先生。そして僕はアルフォンスです」
……もうこの件いや。
「フローラ様!今日こそは魔法を教えてくださいよ!!」
「クルトのくせに生意気言いおって全く…。お前にはまだ早いと言っておるじゃろ!ばかモン!一人で練習していろ」
「だからアルフォンスですってばー」
仕方ないのでフローラババアにはメイドに用意してもらった紅茶を飲んでてもらい、一人で魔法が使えないか試してみる。最近気がついたが、フローラは授業の時にいつも紅茶を飲む。それも何杯もだ。
しかし最初にポットに入れておいた以上に明らかに飲んでいる気がする。
あと何回注いでも湯気が立っているのだ。
…おかしい。この世界のポットは自然に給水できる魔法でも掛かっているのだろうか…とまで考えてようやく理解する。それ魔法じゃん。
おそらくフローラは意識的にか無意識的にかはわからないが、魔法を用いている。水を発生させる魔法と温度上昇させる魔法。もしくはそれを同時に行える魔法。
俺は自身の内なる魔力に働きかけ、水を生み出そうとする。
(求めるは水の力、根源たる魔力の働きに答え 顕現せよ)
…勿論なにも起きない。魔力なんて微塵も感じない。どうすりゃいいんだ。
仕方なく今日も俺はばぁさんの昔話に付き合うのだった。いつもよりもポットと紅茶に注目しつつ―――。
介護の時間―――もとい魔法の授業の時間が終わり、午後はいつも通りランニングに勤しむ。一時間ほど走っているとエルロード分家の正門にアリサが現れる。
「こんにちはアルフォンス。今日も走ってるんだね!」
「こんにちはアリサさん。毎日走らないとなかなか体力がつかないからね。そういえばアリサはいつもウチにこの時間にやってくるけどどういった用事なの?あと僕の方が年下なんだしアルでいいよ」
汗を拭って正門に寄り掛かるアリサに聞くと小首をかしげたように俺を覗き込んでくる。小悪魔的な表情にドキッとなってしまう。くそぅなんて可愛さだ!俺が狼だったらとっくに襲っているだろうに!まぁ、俺は実際には紳士だから女性の嫌がることなんて一つたりともしませんがね。父のように妾に手を出して孕ませ、家の居心地が悪くて帰ってこないなんてことにもなりませんがね!はい。
「わかったわ、私もアリサって呼んで!あれ?でもアルは私がここに来てる理由知らないの?」
「ええ、あまり家の話題を聞いたりしないですからね」
「いや、そういうわけじゃないんだけど…そういえば私この間ちゃんと名乗ってなかったかしら、改めてアリサ=オルニエールと申します。ラナーク王国元筆頭魔術師で現アルの家庭教師であるフローラ=オルニエールの孫です」
ニコリとアリサは笑った。あのババアの孫だったんですかあああああ!?
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