5.家庭教師
ヒロイン?登場
エルザが俺に家庭教師をつけると言ってくれてから一ヶ月が経つが全く音沙汰がない。
アランやつは何やっているんだ!…まさか忘れられているとか?やっぱり俺は屋敷の中で厄介者扱いされてるのか…。流石に気にしない、気にならないと言っていても悲しくなってくるぜ。
カイリ兄さんは俺と違って細かくスケジューリングされていくつもの習い事をやっていていつも忙しそうだ。俺が長男だったらあの量の習い事をこなさなくてはいけなかったのかと考えると厄介者扱いの方が百倍ぐらいマシだと思えた。
まぁ、それはそれで…。俺はアランに聞いて見ることにした。
「すみません…アランさん。僕に魔法を教えてくれる家庭教師の方の話なのですが…どうなりましたか?」
「アルフォンス様、使用人にさん付けは不要でございます。家庭教師の件は丁度本日からお見えになってくださるそうです。とても権威ある方に引き受けて貰えたので失礼の無いようにお願いいたします」
アランは一礼すると立ち去っていく。相変わらず感情の読めない人だ。だが、ようやく俺も魔法を学ぶ事ができる!!あれから懲りずに何度か父の書斎に忍び込み本を漁ったが魔法の本は一つも見つからなかった。兄は魔法を使えるようだし、使えないことは無いはずなんだが…。
「こちら魔法使いとしてD級を修めてらっしゃるフローラ=オルニエール様でございます」
家庭教師と聞いてすぐさま俺が想像したのは、メガネをかけた知的女子だ。俺も男だからできれば女性に教えてもらえたら良いなとは思っていた。さらにそれが痴的女子だったら尚の事いいとさえ思っていた。
しかし現実というものはいつも僕たちを辛く突き放していく。
俺の目の前にいたのは八十を軽く超えるのではないかという老婆だった。顔に刻まれたしわの数は数えることを諦めたくなるほどであり、明らかにこちらを見ていない瞳はどこか変な気がした。
「あんた誰だい?アタシはフローラじゃ!!あれ?もしかしてエルジドの靴屋のマイクかい?いやー懐かしいね!あんたまだ全然若いじゃないか。私だってまだまだ現役だよ。ちゃんと飯食ってんのかい!やっぱり男はガッツリ食わなきゃ強くなれないよ!…ええ?マイクじゃないって?あ!お前はクランか!!クランじゃないか!懐かしい!」
お分かりだろうか…。俺が「ぼ、ぼくマイクじゃないです。アルフォンスと申します」といったところマイクになってしまった。
簡潔に言うとこの婆さんボケが始まっているらしい。こんな状態でどうやって魔法を教えてもらえってかあああああああああああああ!!!
アランは元々知っていたのか、何も表情を変えずに「では御ゆるりと…」と残して消えていってしまった。俺は4歳にして介護をしなくてはいけないのか…?
「あー、懐かしいね。マイクはいつも私のパンツばっかり見てきて…少しは大人になったんかい。どーせまだ女のケツばっかり追っかけてバカしてんだろ?はっはっは」
「は…はは…そうですね…」
どうやったら魔法の勉強は進むのだろうか…。
午後に入るとアランがやってきてフローラおばあちゃんを連れて帰っていった。これから毎日午前中は魔法の授業と称して介護体験が続くらしい。
午後は習い事のない俺は自由時間である。この時間を前世ではアニメやゲームといったモノに費やしてしまっていたが、この人生では冒険者となるのだ!体力をつけるために行動すべきだろう。
さっそく屋敷の外に出て、体をほぐす。4歳児の体に準備運動もクソもないが、なるべくしっかりやっておく。準備体操が終わればランニングだ。
この世界の冒険者がどういったレベルの者たちなのかわからないが、流石に4歳から鍛えていれば普通のレベルにはなれるのではないか?屋敷の警備のものにチラチラ見られながら屋敷の外周を走り出す。
一周を俺の足で五分とそこらといったところか…。ダッシュで走ればその半分になると考える。1年後の目標とかも決めておいたほうがやる気にもつながるだろうか。
まぁ、正確な時間が測れないからあまり意味もないかもしれん。人は自分に甘くなるというしな。
特に俺はその傾向が顕著だったため油断しているとすぐに前世のようになりそうだ。
速さではなく体力面の方で目標を立てたほうが良いな。3時間ぐらい走っていられる体力があれば冒険者としてもやっていけそうだろうか?とにかく今日は走れるだけ走ってみよう。
一時間もしないうちに足は動かなくなった。心臓痛い…。はぁはぁ…。
目標はまず三時間走りきることに決めた。それからずっと屋敷の周りを走っているのは飽きるので今度屋敷の外に出ても良いか許可を貰いに行こう。まぁ、放置されているから大丈夫だとは思うのだが。
家の前で座り込んでいると日差しが少しきつくなってきた。流れ落ちる汗を拭き取りつつ呼吸を整えていると…ふと涼しくなった気がした。
「こんなところで座り込んでどうしたの?」
そこには美少女と呼んで差し支えない子が麦わら帽子を抑えながら俺を上から見下ろしていた。
この時の気持ちを俺はどう表現すればいいのかわからない。一度落ち着いた鼓動が再び増える。パッチリ二重のコバルトブルーの瞳は俺の全身を引込んでしまうかの如く美しい。肩より少し長く切り揃えられた金髪はよく手入れされているのかさらさらと風になびく。麦わら帽子は小さなリボンが刺繍されていて、白いワンピースとすごい合っていた。避暑地のお嬢様みたいだ。
「こ、こんにちは!アルフォンス=エルロードです。ちょっと体を鍛えようと思って走ってて疲れたんで休憩してたんです」
「あら、あなたがアルフォンスなのね!私はアリサっていうのよろしくね!」
そういって俺に手を伸ばし微笑む彼女はさながら向日葵のようだった。そう俺はアリサに一目惚れをしてしまったらしい。
そこからしばらくアリサとたわいのない話をする。どうも家に用があって趣いたらしい。パッと見たところ6歳ぐらいで俺よりも少し年上といったところか。明るい性格なのか、気さくに話しかけてくれ少しの時間だったが楽しく過ごせた。ランニングしてた時の辛さは吹き飛んだ。
「やっぱり強い男の人は素敵よね!」
その言葉だけで俺はあと二時間走れる!あまりアリサを引き止めてはいけないと思い俺は再び走り出して見事に二時間走りきってしまった。恋ノチカラとはこうまで強いのだ。
俺はもっと強くなれる気がした。
二千文字ちょいしかかけないんだよなぁ…。もっと進まないとやりたい事が書けないから頑張ろう!!