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マザー:異世界転生  作者: ミルハ
第一章 メルロード編
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なんて日だ!?

導入なので読まなくとも大丈夫ですん♪

大学四年の秋。

夏休みの気分が抜けなくて未だに家でゴロゴロ。研究室に行かなくてはと思うも体は中々いうことは聞いてくれない。

就職活動も適当に終え、一流とは言えないかもけれどそこそこの企業から内定も貰えた。これで晴れて来年の四月からは社会人になる。つまり今が俺の人生最後のモラトリアムだということになる。ならば少しぐらいダラけてもいいじゃないか…全く。


ピロリン


携帯が着信する。眠気眼をこすりつつメールを確認する。

新着メールが2件。サークルからの呼び出しと、父親に請求していた学費を口座に入金してくれた胸の内容だった。そういえばそんな時期か…。

前期・後期に分けられ学費を納金する為、夏休みが終わって暫くすると学費納入の催促状が届く。俺は一人暮らしの為、そういった手紙は父親に届くのでその連絡であった。


「学費は入れておいた。あとの手続きは自分でやれ、そちらに書類は送っておいた」


最近確認していなかったポストを見ると父親から学費納入用の書類が送付されていた。

この書類がなければ納金できない、すると学費滞納となり、俺は晴れて退学!…あと半年だというのに退学になったらもったいないにも程がある。まぁ、別に大学に何かやりたいことがあって進学したわけでもないし、社会人になってもやりたい職業があった訳でもない。

ただ周りがやっているから同じように流れに沿って生きていればいい。日本の大学生なんてほとんどがそういった自己決定力の欠けた人間ばかりだろう。もちろん俺もその一人、いぇい。


部屋に散らかった漫画を片付け、開いたままだったノートパソコンをしまう。昨日はネット小説を飛んでたらいつの間にか意識をなくしてしまっていたんだっけ?

漫画・ゲーム・小説・ライトノベル、様々な娯楽に浸って生きてきたが最近はネット小説にハマっている。

簡単にのめり込める文体に異世界ものの多さ、やはりファンタジーといえば異世界ものだろう!あまりチートとかを使うのは好きではないのだが、ハーレムや冒険といったものは男の夢といったものだろう。


しかし、現実はそうではない。


俺はただの大学生で、来年には社会人で、彼女もいなくて、出かけるのはせいぜい家から大学・バイト先ぐらいか?居酒屋も付け加えてもいいかもしれん。少なくとも冒険なんてしようがない。


これからの人生も現実にしがみつかれて、生きていくのがわかっている。わかっているからこそ俺はフィクションの世界に逃げ込んでいるのだろう。ファンタジーの世界に惹かれるのだろう。



さて、現実に向き合わなくてはな…銀行に学費を納入しに行くことにした。





家を出て駅まで20分。家賃が安いからって選んだが駅が遠すぎた。4年前に戻れるのなら家選びからやり直したいもんだ。それを言ってしまえば大コケしたセンター試験からやり直し…いや、高校三年の受験勉強から……とまぁ後悔先に立たずではないが、後悔後を絶たずとなってしまうか。


電車で二駅、メガバンクの支店がある大きな駅にやってきた。複数の路線が入り組み乗り換え場所にもなっているので人の数が段違いだ。二駅行くだけで県をまたいでしまうので神奈川の植民地と呼ばれている。そう町●である。


駅からまっすぐ行くとすぐに支店があるのでそこで手続きをして、服でもみてさっさと帰ろう。俺は人ごみが苦手なんだ。あとこの街はやたらとホストとか黒人のあんちゃんに絡まれるから怖いんだ。


自動ドアがの目の前に立つと元気よく「いらっしゃいませ」と聞こえる。俺はそのままATMへ行き現金を引き出す。その後に窓口に行き学費を振り込む。順番待ちで名前が呼ばれると同時にそれは起きた。


「両手をあげろおおおおお!!!!」

パンっ。

やけに乾いた音だったと思う。サングラスにマスク、パーカーを着た背の高い男がおもちゃみたいな拳銃を天井に向けている。拳銃からは煙がうっすらと上り、その先をみると蛍光灯が粉々に割れていた。直感的にあれは本物の拳銃だとわかった。


くそ、アニメや漫画じゃないんだからなんでこんなことするんだよ!どうせすぐ警察に捕まるぞ!


俺の視線は反抗的な態度と取られたのか男が近づいてくる。

「おい!おまえ!この袋に金を詰めろ。はやくしろおお」

ガチャりと拳銃を突きつけられると金属のひんやりとした感触が伝わる。ころされる…。

そこから恐怖で頭が真っ白になった。日常にいたのに一瞬で非日常になってしまった。こんなの理不尽だ…。でも物語の主人公みたく空手や柔道ができるわけでもなく、素直にいう事を聞いて命だけは助けてもらうしかない。

なんの為に生きてたかわからないけど、死にたくはない。


手元にあった現金をまず袋に入れる。窓口のおねえさんはまだ怯えているのか動いてくれない。

「はやくしろおおお、はやくしないとコロスゾ」

それを聞くとお姉さんは裏へ走っていってしまった。未だに俺の頭には拳銃が突きつけられたままだ。足が震えてくる。はやく助けてくれ…。


視線を下げると一人の女の子が俺に視線を投げてきた。正義感の溢れた強い目だ。

一体何をする気なのだろうか?彼女は俺の目を見て頷くといきなり黒ずくめの男に向かって走り出し蹴りを放った。

不意を突かれた黒ずくめの男は蹲り、さらに彼女から踏みつけの追撃を受けた。


なんて子だ…こんな状況なのに恐れもせずに俺を助けてくれるなんて…。

男は痛みからうめき声を上げている。

「……ba※e●ji*nz」

何語なのか聞き取れなかったが、黒ずくめの男の口の端はどうしてか笑っているように見えた。それを見た途端悪寒が走る。

銀行の端に座っていたおばぁちゃんが懐から拳銃を取り出しこちらを狙っていた。犯人は一人じゃなかったのだ。今にも打ちそうだ。俺は体が固まってしまった。動けない。怖い怖い怖い怖い怖い―――。


「あぶなっ――――」


―――――――――――――グヅヂャ。

俺の前に先ほどの女の子が飛び出し、庇う。すると勿論弾は彼女に当たるだろう。彼女の体を突き破った弾丸はそのまま俺の腹もえぐった。



―――俺は死んでしまった。



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