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013 貿易都市ソルト その5 (芹香視点)

 嬉しい!! 聖者様ありがとう!!

 でも聖者様はゆっくりとお休みの最中……起こしちゃ駄目だよねっ!!

 食事は冷めても美味しい物だからテーブルに並べて……っと。

 音を出さないよう……最後にドアから出て……っと。


 くふっ……くふふふふっ

 嬉しい!! 嬉しくてスキップしたくなっちゃう!!


 でも今は音を立てないようにっと……


 ……あれ? 足元の階段は?

 あっ……キャッ!? ……キャー!?


「くっ……っつぁ~~……」


 くぁぁ……また階段を転げ落ちた。腰打った……痛くて声も出ない……

 でも、今なら……


 昔の感覚を頼りに右手に癒しの魔力が集まるイメージを取る。そしてその魔力の篭った右手を腰に当てて……


「うん、治った!!」


 嬉しいっ!! 間違いない!!

 魔法が使えたっ!!


「何が治ったって?」

「へっ?」


 上から掛けられた声に気付いて上を見ると……目の前に地獄の鬼も真っ青な程、いかつい男性の顔が間近にあった。


「っ……キャーーーーー」

「うおっ……」


 慌てて叫んでしまったけど、この声は確か?


「あっ……アッシュさん、今晩は」

「いきなり叫ぶとはひでぇな……まだ耳がキーンとする……」

「あぅ……ごめんなさい。

 でもアッシュさんも悪いんですよ? 乙女の直ぐ前に、そんな怖い顔をドアップで置くんですから」

「怖い顔って……

 さすがに直に言われるとショックだ……」


 アッシュさんは落ち込んだように、肩を落とす。

 あっちゃぁ、ちょっと言い過ぎちゃったかな?


「あ……ごめんなさい」

「と言うのは嘘だ」

「あっ……もぅっ!!」


 と思ったけど、アッシュさんはすぐに舌を出してウィンクしてきた。

 悔しいなぁ。いつものようにからかわれた。

 あれ? そう言えば、アッシュさんは聖者様のことを知ってらっしゃるのかな?

 ふと、そんな事が頭をよぎるとフラッシュバックして過去の記憶が蘇った。


「っかっ……はっ……」


 人とは違いすぎる力。

 羨望……嫉妬……憧憬……やっかみ……重い期待。……そしてそれら全てが絶望と変わる時……

 ……そう、違いすぎる力はそんなに良い物じゃない……


「どうした? 大丈夫か?」


 いきなり息に詰まった私を、アッシュさんは心配そうに覗き込んできた。

 ……いけない、あの時の事を思い出しちゃった……


「あ、ごめんなさい……いつもの発作が……」

「そうか……ムリはするなよ?」


 アッシュさんが心配そうに私の顔を覗く。アッシュさんは私の事をただの看板娘としか知らないけど……昔に何かあったことは察してくれている。

 だからか、今のような気遣いがとても嬉しい。


「はい……」


 そうだよね……どんな素晴らしい奇跡でも、私が変な事を言う訳にはいかない……

 なら、私もアッシュさんに聖者様の事を聞くことも出来ないな。


「まぁ、少なくともドジは治ってないようだな」


 真剣に悩む私をアッシュさんはにやにやしながら見てくる。

 むぅ……。本当、判ってはいるんだけどこういう時はカチンとくるなぁ。


 発作はいつもの事だし、アッシュさんも慣れてる。でも、ドジは言いすぎだと思うの!!

 もっと心配してくれてもいいじゃない?


「私、そんなにドジじゃありませんよ?」

「なら聞くが、今日は何回怪我をした?」


 う……いじわるな質問だ……

 えっと……1……2……3……今のを入れて……


「今日はたった5回しか怪我してませんっ!!」

「はっはっは、それだけ怪我してりゃ、十分ドジだよ」


 くぅぅ……そんなに笑わなくても良いじゃない……

 常に体に魔力が巡っていた時と、魔力の無い体じゃ反応速度が違って、その差に慣れないから怪我するだけなのに……

 ……言えないけど……


「まぁまぁ、打ったのは腰か?

 それとも尻か? 足か? 癒してやるよ。

 "キュア"」


 もう癒した後だけど……

 でも、何時もして貰ってたし今日は良いって言うのもおかしいかな?


「ありがとうございます。じゃ、腰を」

「おう」


 アッシュさんの手が私の腰に近づくと、優しい光がじんわりと浸透してくるのが分かる。


「こんなもんか?」

「はい。

 楽になりました。ありがとうございます」


 素直に頭を下げてお礼を言う。


「んじゃ、気をつけて帰れよ」


 優しい眼差しで、頭に手を載せてくる。これでこのまま頭をくしゃくしゃしてこなければ文句は言わないんだけど……


「はい、アッシュさんもお気をつけて」


 私はお礼を言うと、アッシュさんは目を細めて髪の毛をくしゃくしゃに撫でてきた。

 はぅ……またセットのやり直しだ。


 私はアッシュさんに見えないようため息をつくと、詰め所を出て一目散にお店に戻った。



「マスター、ただいま帰りました!!」


 お店の玄関を開けて中に体を滑り込ませる。


『冒険者の宿 儲け亭』

そこが私のお世話になっているところだ。


「おう、お帰り。

 ……ほう?今日は何所も怪我しねぇで帰ってこれたか。

 珍しい事もあるもんだな?」


 強面の顔に筋骨隆々。

 宿屋兼酒場のマスターにして、この町の取り纏め役。元SS級冒険者のナイスミドル。 

 ジェイクレッド・Cクロム・リッター。通称ジェイ。

 私の雇い主にして、国の目から保護してくれている人。この世界で唯一頼れる人だ。


「マスター、酷いです。

 そんなに何時も怪我してないですよ?

 まったくっ、アッシュさんと言い、マスターと言い……」


 ぶつぶつと言うけど、マスターは何時も通り笑い飛ばす。


「カッカッカ、今日だけで4回も怪我した奴が何を言うか」

「マスター、それは違いますよ」


 得意げにマスターの声を否定すると、意外そうな顔をする。


「ほう?」


 なので、私は胸を張って言う。


「6回です!!」

「多くてどうすんだよ……」

「えへへぇ~」


 間違いに正解を入れただけだったけど、呆れた表情をされてしまった。


「……にしては怪我が無いな?

 ついでに治癒魔法でも掛けて貰ったのか?」

「うん。怪我だけじゃなく、呪いもね」


 マスターは全ての事情を知っている。

 だから、この言葉のだけでその意味も判ったんだろう。

 マスターはたっぷりと10秒は硬直した後、ゆっくりと口を開く。


「治った……のか?」

「うん」


 マスターが鳩に豆鉄砲を食らった顔をしたので、満面の笑みで答える。


「マジか!?」

「うん!! 魔力経路も治ったんだよ!!」


 マスターは驚きのあまり、私の服をはだけさせ、傷のあった場所を凝視する。


「「「「おおおおおおおお~~~~~」」」」


 だがここは店の中で、営業中……

 と言う事は……


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~

 見るなっ!!

 皆こっち見るなぁぁぁぁぁぁ!!」


 もちろん客の大勢いる中で半裸を披露する事になるわけで……


「ラッキー、良いモノ見せて貰った!!」

「C……いやDだな」

「おい!! 用紙と"記憶"の呪文使える奴!!」

「想像していたより綺麗なお肌……流石お姉様……美味しそう……」

「黒か……白を想像していたんだが……だが、それがイイ!!」


 様々な聞き捨てならない声が聞こえてくる。

 恨みがましい目でマスターを見るが、マスターはマスターで。


「凄い……傷痕が一切……魔力残渣すら消し飛んで……

 ありえん……どんな術者だ? "フルキュア"ですらこうは行かんぞ……」


 ぶつぶつと言いながら私の傷痕があった場所を凝視している。


「マスター、とりあえず離して貰えませんか?」


 怒りを抑えて、冷静に……冷静に言う。


「だが……しかし、他国の勇者ですら……」


 聞こえてないのか、離してくれそうに無い。これはもう、殴っていいよね?


「マスター、離さないと殴りますよ?」


 それでも聞こえてないのか、じっと見ている……ってか、ブラに手をかけようとしてきたっ!?

 無意識に右手が出るが、久々に風の魔法が付与される感覚を味わう。……ちょっとヤバいか? まぁ良いや。


「離せって……言ってんのよっ!!」


 見事、殴られたマスターは壁まで飛んでいった。

 ふぅ……助かった。


 ……でもなかった……

 壁にめり込んだマスターの手に握られていたボロ布は、さっきまで着ていた私の服と同じ模様であって……


 つまり……


「「「「「おおおおおおおおおおおおっっっっっ~~~~~~~~」」」」」」」

「もういやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 もうヤダッ!! 最悪っ!!

 ううう……色んな意味でもうこのお店には居られないっ!!



「すまん!!」


 客の居なくなった店内で、マスターが地面に頭を打ち付けて謝ってくる。


「いえ……私こそ、店をこんな風にしちゃって……」


 そう、あまりにも恥ずかしかった私は、あのまま風の魔力を暴走させてしまったのだ……

 結果、お客さんは全員外に放り出され、店の中はめちゃくちゃ。

 完全に大損害と言える規模の破壊を生み出してしまった……


「いや、それでも娘と同じぐらいの子を店の中で剥いてしまうとは……

 この通りだっ、許してくれっ!!」


 マスターは更に地面に額を打ち付ける。なんか地面が陥没して無い? 大丈夫かな? っと、今はマスターの事だ。


「いえっ、私はマスターにずっとお世話になっているんで……

 それに私もつい嬉しくて、場所をわきまえずに報告しちゃったから。

 お願いなので、頭を上げてくださいっ。店をこれ以上壊さないでくださいっ!!」


 やっと私の声が通じたのか、マスターは頭をぼりぼりと掻きながら、本当にすまなそうに顔を上げる。


「んじゃ、まぁ、話をさせてもらっていいか?」

「はい」


 もうこの話しは無しだとばかりに頷くと、マスターもその意を組んでくれたようだ。ガバッっと立ち上がる。


「んじゃ、遠慮なく……」


 そのまま真剣な表情になるとカウンター、私の横に座り込んだ。


「あの傷は魔王4天王の1人、西方鬼クダンの呪詛で間違いねぇんだよな?」

「はい」

「あれの解呪なんて……少なくとも肥え太った神官どもにはムリだ。

 聖なる力を持つ者。

 勇者並み……いや、それ以上の存在じゃないと、出来るこっちゃない……

 それは身をもって判ってるよな?」

「はい」


 そう……国が最強の戦力を失うのを恐れ、聖教国の教皇にまで赴いてもらって解呪を試した。

 でも、教皇ですらクダンの呪いを解くことなんてできなかった。


「だが、強力な癒しの力を持つ勇者なんて、どの国にもいねぇ」

「そうですね」

「だからこそ国はお前を暗殺し、槍の所有者を空白とした上で新しい勇者を召喚しようとしていた。

 国の奴隷となって動いたお前に対する余りにもの仕打ちを不憫に思い、こっそりと保護した訳だが。」

「本当に……感謝しています」


 マスターは私が召喚されてからずっと影で助けてくれた。

 だからこそ、味方なんて誰もいないこの国で、勇者として人々を救う事が出来た……


「まぁ、んな事はどうでもいい。

 問題は、解呪できる力を持った者が何者か? だ」

「それは……」

「芹香……ケイを助けたいんだ……頼む。

 その人に合わせちゃくれねぇか?」


 マスターの娘さん、ケイ・Iイロン・リッターも西方鬼クダンの呪いを掛けられた人間だ。


「それはっ!! もちろんです!!」


 クダンの寵愛を断ったばかりに呪いを掛けられ、半年以上前から寝たきりになってしまった少女。


「けど、聖者様は今……えっと、お休み中で……」


 私は言いよどむが、マスターは詰め寄ってくる。


「そうか。その聖者ってのが治してくれたんだな?」


 あまりもの勢いについ頷いてしまう。


「はい」

「アッシュが教えてくれたのか?」

「いえ、隊長には下手な事を言う訳にはいきませんし……

 やぶ蛇をつつく訳にも行かないので、聖者様のお力をアッシュさんに確認はできなかったです……」

「そうか……」


 聖者様の力に対して確証が取れないことで、マスターは暗い顔をしてうなだれてしまった。

 ……ううん……マスターにはずっとお世話になっていたから、力になってあげたい……

 でも、どうすれば……


 あっ、そうだ!!


「でもっ、私に考えがあるので任せて貰う事はできないでしょうか?」


 マスターは私の言葉にガバッっと顔を上げると、勢い良く両手を握り締めてきた。

 ……イタイイタイ、馬鹿力で握られるから手が痛い。


「芹香……頼めるか?」

「はい!!」


 思いっきりマスターの手を叩き落とし、開放された手をさすりながら返事をする。




「こんばんわ~」


 私は再度詰所への進入を行う事になった。


「はい、どなた様で?

 って芹香じゃないか? どうしたんだ? そんな大きな荷物を持って」

「はい、お客様に見て貰おうと思って♪」


 そう。私が思いついたのは、ケイを箱に入れて聖者様の元へ運ぶ事だった。

 これならアッシュさんに説明しなくていいし、聖者様が目覚めていたら「私をプレゼント♪」とか言う事も出来るし……ってそうじゃないっ。

 私は何を考えているんだ……

 とにかく!! ばれずに聖者様の近くに行けば、私と同じでケイの呪いが治せるんじゃないかと思ったのよ!!


「そうか、随分とキノ様を気に入ったんだな。

 いいぞ、特別だ」


 アッシュさんは笑顔で私を招き入れてくれた。


「ありがとう、アッシュさん。じゃ、失礼しますね」


 そっかぁ~、キノ様って言うのか。

 キノ様……キノ様……キノ様……うん、覚えた。


 って、考えながら歩いていたらいつの間にか扉の前だった。


 早速……

 よしっ、行くぞっ!! まず、ノックは控え目に……よし、返事は無いな。


「失礼しま~す」


 音を立てないように扉を開け、こっそりと中を覗く。

 相変わらずキノ様と美人さんは熟睡中だった。


「良い? ケイ。絶対に声を出しちゃ駄目だからね?」

「うん」


 そうっと、音を立てないように気をつけながらケイの入った箱を持って中に入る。


 「ふわぁ……」 


 相変わらず、ゆったりとして気持ちの良い空間だ。

 音を立てないよう、ゆっくりとケイの入った箱を開ける。


「これ……は?」


 どうやらケイもあの感覚を味わっているようだ。


「消えた?」

「え? 何? 芹香、どうなってるの?」


 ケイは勢い良く箱から顔を出し、大きな声で私に詰め寄る。

 ちょっ!? キノ様が起きちゃうっ!! すぐに黙らせないと!!


「ケイ、説明は後。帰るから黙っててね」


 私が声を潜めて手早く話すと、自分の失態に気付いたのか直ぐに黙ってくれる。


「えっ!? ……あっ……うん」


 うんまぁ、驚くよね? びっくりするよね?

 でもキノ様を見せちゃったらライバル増えるし、見せるわけにはいかないかな。

 素早く箱を元に戻し、そっと部屋から出る。

 音を立てないようにゆっくり……ゆっくりと階段も下りる。


「あれ? 戻ってきたのか?」

「うわきゃっ!?」


 あっぶなぁ……後ろからかけられた声に驚いて、箱を落とす所だった……

 振り向くと、アッシュさんが箱を持って降りてきた私を不思議そうに見ている。

 あっ、そうか。この箱はキノ様へのプレゼントって持っていったんだった。


「アッシュさんか、びっくりしたぁ」

「おう、すまんすまん。

 で、渡しに行ったんじゃなかったのか?」

「うん、寝てるみたいだったから、邪魔したら悪いかなと思って……」

「そうか? なら、目覚めたら使いを出すようにしておくよ。

 キノ様、美形だからな。惚れたんじゃないのか?」

「うん」

「えっ?」


 って私ったら何素直に頷いているのよっ!? 否定否定、否定しておかなくちゃっ。


「あっ、じゃなくてっ……

 そのっ……あのっ……そうっ、どうしても渡したいものだから、お願いしますね」


 しまったっ!! つい素直に返事しちゃった……

 あぁうぅぅぅ、恥ずかしい……


「じゃっ、失礼しますっ!!」


 あまりに恥ずかしすぎて、全力で『儲け亭』に戻ってきてしまった……ううう。


「おう、お帰り。

 首尾はどうだった?」


 扉を開けると、待ちきれなかったのかマスターが目の前にいた。


「きゃっ!!」


 今度こそ驚いて、箱を落としてしまう。


「ぐけっ!!」


 箱の中から蛙が潰れたような声が聞こえる。

 それまでは頑張って黙っていたケイだけど、さすがにこの衝撃には黙っていられなかったのか、飛び出して文句を言う。


「芹香っ!! さっきから酷いよ!!

 箱の中で何回も揺すられるわ、最後には落とされるわ……中の人のことも考えてよっ!!」

「け……い……」


 マスターは飛び出してきたケイに驚き、ただでさえ大きな口をさらに大きく開いている。


「あれ? お父さんどうしたの?」

「そりゃ、ケイが自力で立ったからじゃない?」


 あまりにも衰弱し、先が無いと思っていた娘が、元気一杯で怒鳴るんだもん。

 そりゃ、マスターだって驚くよ。


「あれ? そう言えば……

 私……あれ? ……私っ!?」

「ケイ……ケイっ!! ケイ~~~~!!」


 マスターはケイを抱き締めてワンワンと泣き出した。

 ケイは困った顔で私のほうを見ているが、今回ばかりはしょうがないと肩をすくめてあげる。

 それからマスターが泣き止み、ケイが開放されるまできっかり1時間は掛かった。


 途中ケイの顔が土気色になってきたときは慌ててマスターを引き剥がしたり、「ワシとケイを引き離すというのか!!」と本気で殴りかかってきたから一戦交えたりもしたけど……まぁ、何とか落ち着いた。



「芹香、この恩は絶対に忘れない」

「私も忘れないわ。

 出来る事だったら何でも言って!!」


 ケイもマスターも落ち着いた後、凄い勢いでお礼を言ってきた。

 実はこの後、お願いしたい事が有って、その布石でもあったんだけど……でもまぁ、ケイが良くなって本当によかった。

 これでこの町に思い残しはもう無い。


「マスター、その恩にたかるようで悪いけど、お願いがあるの!!」


 その言葉にマスターもケイも真剣な顔で私を見る。

 なので私は勇気を振り絞って言う。


「これからは勇者じゃなく、1人の冒険者として聖者様のお側に居たいのっ!!」


 マスターは狐につままれた表情になったが、真剣な顔に戻り頷いてくれた。


「判った!! どんな手を使っても側に置かせてやる!!」

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