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012 貿易都市ソルト その4 スキル考察②+α

《じゃっ、【神の眼】から試してみるよ》


 キノからの念話にサブは使い方を説明する。


《それでは、対象を意識し心の中で【神の眼】と念じてください。

 難しい場合は声に出すのも有りです》

《うん、むむむむむ~……》


 キノはリルを見ながら。【神の眼】と念じる。すると、視界の中に文字となった情報が表示される。


――――――――――――――――――


名前 フェン・リル

種族 獣人―フェンリル種

年齢 1652歳


好きな物 肉

嫌いな物 野菜


スリーサイズ B68

       W55

       H70


弱点    耳の付け根

恋人    無し

想い人   有り

男性経験  無し



――――――――――――――――――


《………………ねぇサブ、何か違う気がするんだけど?》


 文字を眺めながら、キノの額からは冷や汗が流れる。


《カスタマイズされていますね。デフォルトに修正しますか?》

《……お願いします》

《少々お待ちください……完了しました。ご確認ください》


 サブの言葉を信じ、キノは改めてリルに【神の眼】を使う。


――――――――――――――――――


名前  フェン・リル

種族  獣人―フェンリル種

職業  NO JOB

LV   82

スキル 咆哮・爪術・光魔法・自己回復

称号  守護者


――――――――――――――――――



《こんな感じで良いのかな?

 さっきのは見ていて背筋が凍るような感覚がしたけど、これなら大丈夫そうだ》

《追加したい項目があれば、先ほどのようにカスタマイズする事ができます》

《そうだね……弱点とか、魔力の大きさとか生命力とか判ると便利かも? 付けておいて貰えると良いかな?》

《畏まりました。

 ですがマスターの考えている弱点と、先ほど表示されていた弱点は似て非なるものなので、マスターの意に沿った表示にしておきます》

《うん? 了解》


 キノはよく判っていないようだが、サブの言葉にとりあえず頷く。弱点の意味が違えば戦闘時に致命的なミスとなる。流石にその辺はサブもよく判っている。

 その後、キノは調度品や家具にも【神の眼】を試し、力に慣れていった。


《物品に使うと価格や品質、効果が判るのか。結構便利だね》

《かなり珍しい希少(レア)スキルです。

 このスキルを手に入れることが出来たのは僥倖といえるでしょう。

 難点は"寄生"による肉体支配ではスキルを使う事ができなかった為、"同化"を使用した事でしょうか》

《ふぅん、それで同化を進めたんだね?》

《はい》

《そう言えば、神の眼って自分にも使えるのかな?》


 キノは自分の腕を見ながら【神の目】を念じる。

 そのまま10秒ほど粘っていたが、視界に何も文字は現れなかった。


《う~ん、出来ないかぁ》

《指定対象スキルですので自分には効果が無いと言うことですね。

 どうしても知りたければ他に鑑定持ちの人物を探して頼ると良いでしょう》

《そっか、残念。まぁいいよ、試してみたかっただけだから。

 よしっ!! 次のスキルも使ってみようか》


 ある意味、自分が鑑定出来なかったのは幸いかもしれない。

 もし鑑定出来ていたら、自分の異常さに言葉を失っていただろう……いや、キノであれば「へぇ〜」で済ませそうな気もする。……すまないか。やはり。

 見よっ!! この本末転倒ぶりのステータスを。


 因みに一般的なスライムのステータスはこのような感じ。

――――――――――――――――


名前  NO NAME

種族  スライム

職業  NO JOB

LV   1

生命力 5

魔力  1

スキル 吸収

弱点  炎


――――――――――――――――――


 現在のキノはこちら

――――――――――――――――


名前  キノ

種族  超越者

職業  勇者

LV   99

生命力 測定不可

魔力  測定不可

スキル 吸収、属性魔法(全種)、神の目、魔力付与、空間操作、全状態異常耐性、方向音痴

称号  閲覧不可

弱点  無し 


――――――――――――――――――

 驚きの性能差である。

 しかも勇者に恩返しどころか、職業:勇者と言う始末。


《では、【魔力付与】を試してみましょう》

《うん、やってみる。で、どうやればいいかな?》

《魔力付与は習得は勿論の事、取り扱いも難しく簡単に扱う事は出来ません。

 ……そうですね、最初は体内を巡る魔力を意識する事から始めましょう。

 スキル自体は所持しているので、時間をかければ必ず出来るようになります》

《判った!! 身体の中の魔力を感じ取ればいいんだね》

《はい、まずはそこからとなります》

《ん~……むむむ》


 本来、体内の魔力を認識するまで平均2年~4年。才能のある者でも半年はかかる。

 だが、元スライムと言う魔力生命体の経験からか、体内魔力のコントロールには特に秀でた才能を持っていた。

 簡単に言うと、産まれた瞬間から体内の魔力を認識して生きているのだ。


《うん、基本はスライムの体を動かす時と一緒かな? 掴んだよ》

《……マスター、早すぎです。

 ……次はその魔力をコントロールし、手足の末端まで魔力が行き渡るようにしてください》

《おっけー、こんな感じかな?

 サブ、これでいい?》

《…………完璧です》


 その為、サブが言葉に詰まるほどの速度で【魔力付与】をモノにしていくのであった。


《最後にその状態で【魔力付与】と念じてください。

 循環した魔力が細胞に浸透し、純粋な基礎筋力の上昇へと繋がります》

《ふんふん……こうかな?》


 キノの身体が一瞬発光し、身体が火照る。体温が2度は上がっただろうか?

 だが、キノは急に身体能力が向上した事で困惑する。


《うわっ、何!? 力が沸いてくるっ……》

《成功したようですね……

 正直、スキルによるサポートがあるとはいえ、ここまで簡単に習得するとは思っておりませんでした。

 通常は魔力の把握に2~4年、魔力を肉体に行き渡らせるのに3~5年掛かるものですが……流石マスターです》

《サブがサポートしてくれたんでしょ? なら当然だよ》


 キノはサブがサポートしている為、簡単に出来ていると思っていた。


《いえ、今回は……何でもありません》


 今回は練習と言う事もあり、キノのコントロールのみで行ってはいたが……

 自分がサポートしているから出来て当然。とキノが考え、凄い速さで習得している可能性を考えた結果、訂正するのを躊躇ったサブである。


《ん?どうかした?》

《いえ、何でもありません》


 ちなみに膝の上でごろごろしていたリルは、暖かくなった膝に頭を乗せ気持ち良さそうに熟睡していた。

 とても気持ち良さそうに寝ていて、ほっぺをつんつんしたいぐらいだ。


 ……してもいいですか?

 失礼、作者の右手が暴走しました。 


《まぁいいや、次はどんな練習かな?》

《では【空間操作】を行います。

 リルが寝ているので【属性魔法】は、今度にした方がよろしいでしょう》

《うん、そうだね。

 起こすのもかわいそうだし》

《では練習として、机にあるティーカップを手に移動させ、元に戻す事から始めましょう》

《分かった、やってみる》

《使用方法としては、【空間操作】念じながら、移動させたい物質をイメージしてください。成功すれば、イメージ通り物質を移動出来ます》


 キノは手の平を上に向け『来い』と念じる。

 机の上に有ったティーカップが一瞬で消えたと思うと、次の瞬間キノの手の平の上に出現する。


《こんな感じかな?》


 先ほどと同じく、1度で成功したキノは得意げな表情でサブに答える。


《中身が置いてきぼりになっていますよ》


 よく見てみると、ソーサーの中にはカップに少し残っていたお茶がこぼれていた。


《……あれぇ?》

《カップ"のみ"の移動をイメージしたのですね。

 中身があることも意識しないとこのようなことになります。

 この辺はイメージの訓練が必要となります。

 今度はソーサーの中のお茶のみをカップに移動しましょう》

《ん~……えいっ!!》


 キノが改めて『来い』と念じると、カップの上にはお茶の入ったソーサーが出現する。


《あれぇ……?》


 魔力操作とは違い、微妙な所で失敗を繰り返す。


《わずかですが、制御に難があるようです。

 制御に難がある状態での転移は危険が大きいので、移動に使うのは暫く封印です。こちらは訓練が必要ですね》

《そうだね。

 残念だけど、完璧になるまでは訓練あるのみみたいだ……》

《【神の眼】、【魔力付与】は問題なさそうです。

 しばらくは【空間操作】の訓練のみ行えばいいと思われます。

 ソーサー・カップ・中身を机の上に戻し、手の中へ移動するのを繰り返しましょう》

《判った。

 じゃ、暫くはその訓練をするかな》


 キノはソーサーの中身をカップに戻してから、リルを起こさないようにそっと机に戻す。

 その後、カップを手の平にまた転移させ、戻すを繰り返した。

 しばらくの間、うまくいったり、うまく行かなかったり、何度も何度も繰り返し行う。


《あれ? ……なんか急に眠気が……》

《魔力の枯渇です。

 急速な魔力補充の為、体が睡眠を欲していると思われます》

《魔力の枯渇って……?》

《転移はかなりの魔力を使います。膨大な魔力を誇るマスターでも魔力が尽きたのでしょう。

 いかなマスターといえ、285回も転移魔法を繰り返せば枯渇するのは仕方ありません》

《そういうのは早く……言って……よ……ぐぅ……ぐぅ……》


 膝の上で寝息を立てるリルと共に、器用にソファに座った体勢のまま、キノも深い眠りに落ちていった。



 "コンコンコン"


 控え目にドアがノックされる。


「アッシュ様のご依頼で夕食をお持ちしました~」


 返事が返ってこない為か、ドアをゆっくりと開け隙間から少女がこっそりと顔を覗かせ、中の様子を確認する。


「ありゃっ、寝ちゃってるか~。

 まぁ、その可能性も申し付かってるし、中に入らせてもらいますね」


 音が立たないよう慎重にドアを開け、中に入ってきたのは栗色の髪の少女。肩までのポニーテールを揺らし、瞳は髪と同じ栗色。

年齢は20前後で身長165cmぐらい、美人というよりは可愛らしいという形容詞が似合う少女だ。


「さて……寝てるようだし、中身だけ置いていこうかなっと」


 手早くテーブルの上に料理を並べていくが、視線はキノとリルに釘付けになっている。


「…………うっわぁ……美形同士。

 でも失礼の無いようにって釘を刺されたからなぁ……でも何でだろう? 女の子はメイド服だし、偉い人なのかな?

 こっちの男の人も……カッコ良いなぁ。

 ……んっ、あれ? でもどこかで見た事があるような……

 う~ん……思い出せない……でも、なんかイラついた記憶が……

 あっ!! あのいきなり胸を鷲掴みにした、コリアンダー皇国の馬鹿勇者!!

 …………は同じ世界出身だったし、異世界特有の黒髪に黒目だったよね。この人は綺麗な水色の髪だし……まさかねぇ?

 この世界に染色の技術は無かったはずだし……

 1人だけ変身能力をもつ魔族は知ってるけど……まさかねぇ?

 でもここまで似ているってどう言う事だろ? ……しかも、貴賓室を使ってるし……う~ん……

 まぁ、逃げ出した私が気にしても仕方ないか。世界に3人は同じ顔の人が居るって言うし。

 でも、ここまで似てたら、この人も相当大変だろうなぁ……


 ふわぁ~。……なんだろう?

 この部屋、凄くゆったりとして気持ち良い……あくびがでちゃうや」


 キノ本人は気付いていないが、寝ている間無意識に周囲へ癒しの波動を拡散する習性を持っている。

 スライムの時は無防備な間、周囲に溶け込む事で外敵から身を守っていたが、多くの力を得た事により、溶け込む為に使っていた力が癒しの波動にパワーアップしていたのだ。

 リルと出会った時の理由も、この癒しの波動が原因だったりする。


「あれ? さっき転んで出来た肘のすり傷が消えてる……

 お昼にくじいて出来た左足のねんざも……

 朝ごはんの時、包丁で切っちゃった指の傷までっ!?


 ……っん? ……あれっ!?

 この感覚……もしかしてっ!?」


 少女は何を思ったか、その場で服を脱ぎ始める。

 上半身裸になると、陶磁器のように白い肌があらわになる。

 だが、少女の肩から胸にかけ、ざっくりと深い傷痕がどす黒く浮かび上がっていた。


「やっぱり……あいつに奪われた傷痕が浮かび上がってきてる……

 でもなんだろう……いつもの嫌な感じじゃない……

 それどころか……浄化されている感じ……?」


 どす黒い傷痕は周りの白い肌に侵食されるよう、じわじわと小さくなってゆく。

 そして、最後には傷痕自体消え、そこには陶磁器のように綺麗な肌だけとなった。


「なに……これ?

 公国最高の治癒術師ですらさじを投げた呪いが……なんで?

 それどころか、奪われた魔力経路まで……えっ!? 何これ?

 力が……込められる?

 魔力が集まってくる……

 これなら……また……戦える?」


 遅れたが、説明させていただこう。

 少女の名は、御薙(みなぎ) 芹香(せりか)

 この、レモングラス公国に伝わる聖槍に選ばれた勇者。


 魔界4天王の1人、西方鬼クダンとの戦いで深い傷を負い、魔力経路を奪われたことで勇者として活動することが絶望的となった。

 治る見込みの無さと死亡説が流れた事から身を隠し、この街でウエイトレスとして目立たないように生活していたのだ。


「この人はいったい……

 こんな奇跡……うん、絶対にあのエロガキの訳は無い。

 髪の色からすると……この世界の人間よね?


 きっと……名のある聖者様なのね……

 あっ!? ……こうしちゃ居られないっ、戦う事ができるようになったのがばれたらまた公国の奴隷(勇者)に戻される……

 うんっ!! ……店長に言って逃げさせて貰おうっ!!


 聖者様、お礼は必ずします。

 今はお眠りの最中……失礼しますっ!!」


 芹香は静かに食器を机に並べ、そっと部屋を出て仕事先である酒場へと戻っていった。


 ちなみに階段から何かが連続して落ちる音と、「きゃんっ」という声がしたのは気のせいだ。


5月12日:ステータスの勇者に触れてないのが気になったので追記しました。(アス様、ご意見ありがとうございます。)

5月13日:治る見込みが直る見込みとなっていた点を修正しました。(菊花皐月さん、ご報告ありがとうございました。)

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