冷たい雨が温かくなるのを、俺は日の当たることのない屋根の下で待っている。
冷たい雨が 俺のすぐ傍を横切るんだ。
それでも「苦しくない」と 自分に言い聞かせ 君の所へ。
涙なんて流さない。 それは自分で決めた覚悟だから。
「さようなら」 俺はグッと涙を堪えて話を進める。
「君には幸せでいて欲しい」 この想いがある限り。
“二人の夢”なんて朽ちてしまった。
「君を護りたい」 その想いが君を縛り付ける。
君だけを護りたかったはずなんだ。
君の隣で笑っていたかっただけなんだ。
だけど、君を思えば思う程、俺の想いは燃え尽きて行く。
「大好きなんだ」 それは君もわかっているだろう。
だけど、俺が捨て身になればなるほど君は傷ついて行く。
「泣かないでくれ」 それは俺がいつかに言ったセリフ。
俺は君のために、 君は俺のために、 涙を流し合って―――。
“君が傷つくところを 俺は見たくない―――”
だけど、それが“俺の偽善”だという事は 十分わかっている。
だけど、それが俺の精一杯で 唯一できることなんだ。
「さよなら」 それは君が別れの時に、最初に俺に言ったセリフ。
「自分の事しか考えていないなんて」 それは、君が次に発した言葉。
「私があなたを どれほど好きなのかわかってるの?」 それは、君が―――。
君が俺を好きな事。
そんなことはわかっている。
だって、俺だって君のことが大好きなんだから。
だけど、俺の心と身体はボロボロで―――。
「支え合って生きていけば大丈夫」
そんな言葉は 夢のまた夢。
本当は、“どちらかが幸せになれるチャンスを捨てるだけ―――”
それが唯一の真実で、俺が君にできるたった一つのことなんだ。
だから、俺は君が納得しなくたって告げるよ。
何度だって、君を傍で感じることができなくなったって、
いつか あの空を見上げて「ありがとう」って笑顔で言えるように、
俺は君に永遠の別れを告げることに決めたんだ―――。
「ごめんね?」 君は涙を流すのをやめて笑顔で言った。
それは、泣きたくないんじゃなくて、泣けなくなった証。
だって、涙が枯れて すごく目が真っ赤なんだ。
君を隣で ずっと見てきた俺には それくらいわかるんだよ。
だから、俺は言うんだ。
「俺の方こそゴメン」 ってね。
でも、君を泣かせるつもりはなかったんだよ?
だけど、君の涙が 何度も流れずに済むのならば俺はいつでも―――。
俺はこれから一度だけ後悔するだろう。
「きっと別れなかったら―――」 っと。
だけど、それも一度だけの後悔で終わるのだろう。
だって、君と一緒にいることのできた時間は 俺だけの宝物。
そして、未来の君にとっては、俺と一緒にいることのできた時間は ただの過去なんだから。
これからも、君の隣で一緒に歩んで生きたかった。
だけど、それは もはや叶わない夢となった。
涙なんて もう出ないものだと思っていたのに―――。
これからも、君の隣で 君を見守り続けたかった。
だけど、それは もはや叶わない夢となった。
だって、もう元の関係には戻れないから―――。
だから、今の後悔はきっといつかの夢のために。
「君が誰かと生きる」 というたった一つの夢のために。
だから、俺は俺のために生きることにするよ―――。
この冷たい雨が 温かくなるのを 俺はここで待っているよ―――。