絵本のお話
この世界には人間と魔獣がいました。
魔獣は空に。人間は地に。
ですが、突然魔獣が地に降り立ったのです。
魔力を持ったひと握りの人達が魔獣に剣を向けました。
ですが、魔獣に勝てるはずもなく犠牲になるのは魔力を持たぬ一般人。
このままで人間が滅びると思った魔力を持つ者達は魔獣に共存を申し出ました。
ですが受け入れてもらえるはずもなく魔獣は世界各地に散らばり人間を襲いました。
そしてある日、小さな村に魔獣が来ました。
村の長である男は魔獣に言いました。
「魔獣様・・・この村には魔力を持たぬ村人がほとんどです。僭越ながら私は少しですが魔力を持っています。が、魔法の使い方を知りません。私達は魔獣様に危害を加えるつもりはございません。私の命で良ければ喜んで差し上げます。ですが、どうか・・・どうか村の者達の命だけはご勘弁ください。」
その願いが通じたのか、魔獣はその村を襲うことはなく、不思議なことに村から少し離れた森に住み着いたのです。
村の長は魔獣の住まう森に毎日感謝の祈りを捧げました。
そしていつしか村の者全員が魔獣に祈りを捧げ始めたのです。
いつしか村は町に、町から街に、街から国に大きくなりました。
それでも変わらず国の者は毎日森に感謝の祈りを捧げました。
そして、魔獣は寿命を迎えました。
王が言いました。
「今から森に行く。魔獣様の最期が近い。私と共に行ってくれるか・・・?」
そう王が問いかけた先には三人の若者がいました。
四人はその日のうちに国を出で森へ向かいました。
そしたらなんと、魔獣の子と思われる三匹の魔獣がいました。
王は言いました。
「ああ・・・子を産んでいらっしゃったのですね。言葉にできないほどお美しい・・・。魔獣様・・・長い時間、我々をお守りいただきありがとうございました。この御恩は末裔まで決して忘れませぬ。どうか安らかにお眠り下さい」
王は続けてこう言いました。
「最後にお願いがあります。これからも魔獣様に祈り続けることをお許しください。そして魔獣様に名前をつけることをお許しください。我々人間は個々に名前があります。ですので、魔獣様にもお名前がある方がより近く、より深く祈れます・・・ですからどうか・・・名前をつける許可をください」
もちろん魔獣からの返事はありません。
そして王は魔獣にこう告げした。
「ガイア様、いつかまたこの国に遊びに来てくださいませ。ガイア様永遠にー・・・」
その言葉を聞いた魔獣様は静かに目を閉じ永遠の眠りにつきました。