リリア、その5
「ああ、リリアの質問に答えてなかったな。あいつの事は・・・何も分かってない。ずっと・・・今の今までずっと・・・何も掴めていない。けど、やはり黒なのだな・・・私は一体、どれだけの時間を無駄にしてきたのだろうか・・・。お前達やリリーとの時間を犠牲にしてまでっ・・・そしてその結果がこれか・・・。私は、なんて無能なのだろうか・・・」
「お父様・・・」
「改めてあいつを調べるよう、リンヴァに」
「お待ちください。リンヴァは・・・お義母様側です。」
「・・・一体何を言っている。リンヴァは私が幼い頃からの執事だぞ、今まで一度たりとも私を裏切ったことなどない。リンヴァは家族だ。それにあいつ側につく理由がない・・・。」
「・・・」
「金か?いや・・・違うな、金に困るような給金ではないはずだ。何か弱みでも握られているのか・・・?しかし、そんな事があれば真っ先に私に相談してくれるはず・・・」
しばらくお父様は一人でぶつぶつ言いながら考えているみたいだった。
けど、きっと答えは出ない。
「お父様。人の心を動かせるものはそう多くはありません。お金か権力か・・・愛だけです」
「だからそのどれでもないから悩んでいるんだ」
「なぜ、愛ではないと?」
「いくらなんでも歳が離れすぎだろう」
「歳が離れていても恋愛結婚する方はおりますわ。それとも歳が離れていたら恋をしてはいけないと・・・?」
「・・・」
「・・・」
「・・・いや、すまない。あまりにも予想していなかった答えだったから・・・・・・そうか・・・そうだったのか・・・」
お父様の顔色がみるみるうちに酷くなっていくのがわかる。
私だったらすぐに思考を止めてしまうだろう。
考えるほど辛くなるのは自分なのだから・・・。
「他に、誰があいつ側だ?誰を信じればいい?」
「それにはお答えできません」
「理由は?」
「お父様ったら・・・その・・・意外と顔や態度に出るみたいでして・・・・・・」
私が少し話しづらそうにしていると
「そうか・・・・・・・・・・・・それはすまなかった、ずいぶんと迷惑をかけたのではないか?」
シュンとなっているお父様、意外と可愛らしい。
「ふふ。まあ、それなりに大変でしたけど・・・今となっては私の知らないお父様が見れて嬉しくもありました」
(ああ、また泣いてしまいそう・・・)
「何度も同じ時間をやり直す中で、少しの変化が私の希望でした。新しい発見はとても嬉しい事でした。結果、その世界がダメだったとしても、私は・・・っ」
(私はまた、頑張れるのですー・・・そう言いたいのに言葉が出でこない。)
「もういい、わかった。最後にもう一つだけいいか・・・?答えられたらで構わん。ミリアは・・・どっち側の人間だ?」
(お父様・・・私は心の底からお父様を敬愛しております)
(お父様も血の繋がりがなくとも、私と同じく・・・)
(私と同じようにミリアを大切に思ってくださっている)
「ご安心ください。ミリアは・・・可愛くて可愛くて仕方がない妹はこっち側です」