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02-22.わんこ系ヒロイン

「全然ダメダメではないか」


「ごめんなさい……」


 第一王子一行が引き上げた後、パティと先程の話し合いについての反省会をしていた。というかお説教だ。どうやら本人も冷静になって諸々気付いたらしい。素直に謝りだした。



「お主は犬か何かなのか?

 何故ああも、好きな相手には尻尾を振って飛びついてしまうのだ?」


「そんな言い方しないでよ……」


「普段冷静なのにどうしてそう感情に流されてしまうのだ。直前までは問題なかったろう。お主自身も『油断はしない』とそう言っておったのだ」


「エリク。もうその辺にしてあげて。

 パティも反省してるんだから」


「ユーシャぁ~ありがとぉ~」


「でも私も怒ってる。

 パティまた抱きつこうとした。

 私達以外の人に」


「それは……すみませんでした……」


 本当に犬みたいなやつだな。

垂れた尻尾が見えるような気がするぞ。



「とにかくだ。どの道今の時点で第一王子の軍門に下るわけにはいかん。手を組むにせよ、せめて半月以上は持ち堪えた上でが望ましい」


「そんな悠長な事を言ってる場合なのかしら?」


 復活早いな。パティ。



「後々の事を考えるなら必要なのだ。

 私とパティがこの国で自由に振る舞うならば、相応の力を示す必要がある」


「そこはもう十分なんじゃない?」


「ここで降りれば私の弱点はパティだと喧伝するようなものだ。私にパティを守り切る力は無いのだと示すようなものなのだ。それでは都合が悪い。第一王子自身も私とパティを自由にはしてくれぬやもしれん」


 手元に置いて保護しようとするかもしれない。だからこそ我々は信頼関係を築く必要があるのだ。私が向こうを信頼するだけでなく、向こうにも私を信頼してもらわねばならんのだ。



「そう……そうね。エリクの言う通りかも」


「まあ良かったではないか。

 間違いなくあの姉君はパティの事を心配しておるのだ。

 それが見れただけでも心強かろう」


 何せ我々はこれから一月もの間、敵に囲まれた生活を送らねばならんのだ。近くにこちらを想ってくれている人がいて、しかも万が一の時には手を差し伸べてくれるのだ。それがわかっただけでも随分と気が楽になると言うものだろう。



「そうね。その通りね。

 わかった。エリクの方針に同意するわ」


「うむ。結構」


「それで、外の様子は?」


「特に変わりはない。

 相変わらず第三王子一行が騒いでいるだけだ。

 第二王子は既に帰ったようだがな」


 他の挑戦者達は現れていないようだ。

興味がないのか様子を伺っているだけなのか。


 はたまた第三王子の勢力にすら劣るような者共なのか。

まあ、奴らも数だけはいるからな。厄介な連中であることは間違いあるまい。



「そのまま放っておきましょう。

 上手い具合に足を引っ張りあってくれるかもしれないわ」


「そうだな。私も同意見だ」


 取り敢えずバリケード代わりにはなるだろう。

第二王子みたいに堂々とどかしてくるやつもいるだろうが。



「他に会いに来そうな人はいるの?

 パティのお姉様やお兄様には私も会ってみたいわ」


 ディアナは先程置いていかれたのが不満なようだ。

とはいえ仕方あるまい。ディアナの事だってあまり人目には晒したくないのだから。少なくとも今はまだ。出来れば来年度までは。狙われる理由が増えても適わなんからな。



「第十三王女、レティシア姉様なら来てくれるかも」


「なんか少しパティと似てる?」


 名前の話か? シアしか一致しとらんだろうが。

なんならジェセニアとも大した差はなかろうに。



「ふふ♪ そうなの♪

 最初はそんな口実で何かと気にかけてくれてね♪

 歳も近くて親友みたいな存在なの♪」


 こやつ、別に城の中でも問題なく生きられたのでは?


 頼れる相手はいっぱいいただろうに。

第一王子だって、あの様子なら頼られれば無下にはすまい。

むしろ喜んで庇護下に迎え入れたことだろう。


 よっぽどディアナの事が気がかりだったのだな。

まあそれは私もよく知っているのだけども。



「まさかまた増やすとか言うつもりではなかろうな?」


「認めない」


「まあまあ。エリクもユーシャもそう言わないで。

 そもそもレティシア様はパティのお姉様でしょ。

 結婚相手にはならないわ」


「それを言い出したらディアナもパティの義妹だぞ?

 しかも従姉妹だ。腹違いの姉ならば血の繋がり的にもそう大きな差はあるまい」


 いやまあ、生物学的にどうかとかは知らんけど。そもそも私達全員女だから血の繋がりとか端っから関係ないんだけど。取り敢えず何となくの立ち位置は似たようなものだ。その上向こうからも気にかけてくれていたなら、懐っこいパティがどれだけ慕っているのかは想像に難くない。実際親友とか言ってるくらいだし。



「それもそうね。でも増々会ってみたくなっちゃった。

 つまりは私にとってもお姉様みたいなものだものね♪」


「姉が欲しいならパティをそう呼べばいいではないか」


「パティお姉様」


「くっ! 良い!」


「パティ姉」


「なっ! ユーシャまで!

 最高よ! 二人とも!」


 ディアナとユーシャを纏めて抱きしめるパティ。



「パティ姉。昨日はごめんね」


「ううん! 良いのよユーシャ!

 お姉ちゃんはなんだって許してあげるわ!」


 ユーシャのやつ、しれっと謝罪を済ませおった。

成長したな。お母さんは嬉しいぞ。



「パティ。すまんが来客だ」


「今度はどんな人?」


「なんか箒に乗っておる」


 意味があるのか? 飛行魔術は道具無しで飛べるのだぞ?

まさか魔道具の類なのか? いやそれにしても格好が……。


 というかパティにそっくりだ。流石に制服ではないが。とにかくもろ魔女って感じだ。むしろあっちの方が本家大元って感じだ。何故か胸部だけやたらと露出してるけど。パティとは似ても似つかないたわわっぷりだけど。いや、そこは関係ないな。うん。


 ともかく、あれを見てしまうとパティが魔女見習いみたいに思えてくるな。制服に魔女帽子とマントだけだからな。あっちは一部の露出度こそ高いものの魔女っぽい服装に箒も持っておるのだ。完成度が違いすぎる。



「レティよ!」


 噂をすればなんとやらだ。

まさか単身で乗り込んでくるとは思わなんだ。

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