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02-20.挑戦者達

「この屋敷は私とスノウで守る。

 ミカゲは決してディアナの側を離れるな。

 この場に残り私の目を補え」


「はっ! 承知致しました!」



「スノウには屋敷の入口を固めてもらう。

 いつも通り私の中継役だ」


「うん。わかった。エリクさん」



「ユーシャはパティの側だ。

 パティを守り抜けるかはお前次第だ。

 やってくれるな?」


「うん!」


 良かった。

流石にこの緊急事態でまで引きずりはしないようだ。



「よろしくね。ユーシャ」


「うん! 頑張る!」


 まあ、ユーシャ自身に何かしてもらうわけでもないんだがな。ただパティの側をどんな時でも離れないでいてもらうだけだ。これから一ヶ月、片時も欠かさず。それさえ守ってもらえれば私がパティを守り抜く。



 屋敷内の見回りはメアリ達に任せよう。

この体の私はミカゲと共にディアナの守りを固めよう。


 屋敷全体を覆う魔力壁の維持に専念しつつ、各自への供給も途絶えぬようにせねば。魔力消費量には気を付けよう。


 交代要員はどうすべきか。

日中は問題ない。私の魔力を流し続ける限りユーシャやスノウが疲労を感じる事はない。


 とは言えそれで万全なわけでもない。

私はともかくユーシャにもスノウにも睡眠は必要だ。

睡眠時間を削らせて交代で眠らせるか、私が一人で見張り続けるかする必要がありそうだ。


 やはり探知系技能の習得が急務か……。


 魔導ではないが一つだけ方法はある。

まだ使いこなせているとは到底言えんが、試してみるより他にあるまい。



「夜間は私に任せろ。一旦魔力壁を複層化させて迎え撃つ。

 この戦いは長丁場になるぞ。私に対する気遣いは不要だ」


「あれも試すのね?」


「うむ。徐々にな。

 こんな事ならもっと早く構築しておけば良かったな」


「そうね。けど仕方ないわ。

 正直半分冗談のつもりで仕込んだんだもの」


「まあ提案した私自身も似たようなものだったのだ。そもそも出来たとて使いこなす方が難しいのだ。今回は役に立てられんかもしれんが、やれるだけやってみよう」


「手伝うわ。今すぐ始めましょう」


「うむ。スノウ。今だけはこの場に残れ。ユーシャもだ。

 私とパティだけで少し屋敷内を回ってくる」


「「うん!」」


 さて。上手く仕掛けられるだろうか。

忘れずに従業員達への説明もしておかねばな。

途中でメアリも回収していくとしよう。




----------------------




「妖精王よ! 第三王子殿下直々のお越しだ!

 疾く姿を見せるが良い!」


 相変わらずフットワークの軽い連中だ。

と言うか今更何言ってるの? もう何度も来てたじゃん。

見せるわけ無いよね? とっくにわかってるよね?



 しかし今回はこの者達だけではないようだ。



「どけ! 愚弟!」


 第三王子達の後ろから大柄な男性が現れた。

陛下にそっくりのライオン男だ。陛下よりは随分と若いが。

四十手前くらいだろうか。本当はもっと若いのかもしれん。

もっさもっさヘアーと濃い髭面で顔がよく見えんからな。



「それは第二王子よ。次期国王の座を狙う野心家よ。

 まあ只の脳筋だから一兄様の敵じゃないけど」


 私がスノウを介して見た情報を伝えると、パティがそう答えてくれた。



「ふんっ!!」


 第二王子が徐ろに魔力壁を殴りつけた。

どうやらあの王子、魔力視を持っているようだ。


 あのなりで魔術師なのだろうか。まあ、陛下も普通に魔力視使えてたしな。そもそも王族は魔力量が多いのだ。魔術師としての技術を修めるのも当然の話だろう。ただ持っているだけでは意味がないのだから。


 むしろ第三王子一行がおかしいのか。彼奴らだけは魔力視を持っている様子もない。そういう者達が集まる吹き溜まりのような、あるいは受け皿のような役割でも果たしているのかもしれない。妙に偏っているのもそれが原因と考えれば納得もいく。かもしれない。まあどうでもいいか。



「なんだあいつ。

 何故魔力壁を殴り続けているのだ?

 第二王子の魔術の腕はどんなものなのだ?」


「強いわよ。私よりずっと」


 なるほど。脳筋と言われるだけの事はある。

いや別に褒め言葉じゃないけど。



「まさか魔力壁の特性を自らの拳で測ろうとでも?」


「単に試してるだけだと思うわよ。

 魔術より殴り合いの方を好む方だから」


 なんだ。只の脳筋か。

最初からパティがそう言ってるな。うん。



 第二王子は暫く殴り続けた後、あらん限りの魔力を込めたと思われる爆炎の塊を生み出して魔力壁に放ってきた。


 当然爆炎はその場で盛大に爆発を引き起こし、第二王子の肉体を数十メートルは吹き飛ばした。



「おい。あれ本当にパティより強いのか?」


「あれって言われても何が起こってるのかわからないんだけど。まあ、ニィ兄様とよーいどんで試合したら勝てないわ絶対。瞬発力と火力だけならこの国で一番だもの」


 確かにあの火球の生成速度は速かった。

一瞬と言ってもいいくらいだ。あんなのが正面から飛んできたら避けるのすら難しいだろう。


 とは言え今の魔力壁に炎弾の類は通用しない。

徹底的に対策を練って生み出されたものだ。爆発したエネルギーの殆ど全てが壁の外側に反射されるようになっている。壁側にかかる負担は極軽微なものなのだ。


 つまりあの第二王子は、スノウが受けたのとは比べ物にならない威力の爆発をその身に受けたはずだ。あんな至近距離で放てば当然だ。


 果たして第二王子は生きているのだろうか……。



「やっちまったか?」


「何が起きてるの?」


「第二王子が魔力壁に至近距離で炎弾を撃ち込んだ。

 そのまま吹き飛ばされて安否不明だ」


「ああ。大丈夫よ。それくらい。

 ニィ兄様なら」


 なにそれ? ギャグ漫画みたいな?




「あれ? もしかしてエリク知らないの?

 強い魔物を倒してれば膂力や頑強さは増していくのよ?」


「え? そうなの?」


「相変わらず変な常識だけ抜けてるわね。

 私とメアリの強さは知ってるでしょ?」


 確かに。初期の脆弱な魔力手とはいえ、メアリは魔術なども使わずに素の腕力だけで砕いていたな。



「だがユーシャは……ああ。そうか」


 ユーシャは元来頑丈だ。

そもそも強い魔物と戦った事があるわけじゃない。

精々が下級のスライムやゴブリン程度だ。


 その上側で成長を見守ってきた私からすると、日々の成長が微弱過ぎて変化に気が付かなかったのか。



「ならば何故スノウは?」


「あの子は天才なのよ。それに誰か良い師匠がいたのかも。

 純粋な腕力だけならメアリには遠く及ばないわ」


 技だけ身に付けていたのか。いったいあれは誰が教えたのだろう。魔術といい、スノウ一人で全てを身に付けたとは思えない。いくら天才だって知る機会がなければ魔術の呪文等はどうにもならない筈だ。よほど高度な教育を受けていたのだろうか。


 生憎その辺りの事情はミカゲも知らないらしい。

ミカゲも最初に出会った時は何処の貴族令嬢かと思ったそうだが。


 まあいい。今は眼の前の事に集中せねば。

今のところは二組だけだが、この国には元々三十九人の王子と十八人の王女が存在するのだ。流石に今現在全員が王都に残っているわけではないが、それでもまだまだ客は訪れる筈だ。


 というかパティ、末っ子ではないか。いや、一人弟がいるとか言っていたが。少なくとも王女の中では一番下だった。全体でも下から二番目だった。




 よく末の妹なんぞ襲撃出来るものだな。

恥ずかしいとは思わんのか。彼奴らは。



「あ。また来た」


 ついでに第二王子も。

普通に自分の足で歩いて戻ってきおった。

奴は不死身なのか?



「今度はどんな人?」


「なんか白い。全体的に」


 白い集団だ。そうとしか言いようがない。



イチ兄様だわ!

 エリク! お通しして!

 きっと助けに来てくれたのよ!」


 え? 本気?

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