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02-17.作戦会議

「断るわ」


 本当に即決だな。

爺様の想定とは逆の方にだけど。



「エリクの想像通りよ。一度頷けば逃げられはしないわ。

 自ら国の中枢に身を置くなんて本末転倒よ」


 尤もだな。



「それに実質的に私の派閥からも抜ける事になるもの。

 そういう意味でも論外よ」


 むしろパティ的にはそっちの方が重要なのでは?

私もどんな形であれパティとの繋がりが断たれるのは認められんがな。



「王宮魔術師はそこまで陛下の影響が大きいのか?」


「ええ。近衛騎士団もね。

 その二つは陛下個人の影響下にあるの。

 王子王女でも手を出すことは出来ないわ」


「ならば陛下の命で?」


 そもそもあの爺様が最初から陛下の遣いだったなら、諸々の話も変わってくるだろう。酷い騙し討ちだ。



「そうとも限らないの。

 特にあの方の場合はね。

 サロモン様は自由人だから」


 なんと面倒な。



「パティもあの爺様とは面識があるのだったな。

 他の手段で味方に付ける事は出来そうなのか?」


「あるわよ。簡単なのが」


「それは?」


「色仕掛け」


 あ~。なるほど。



「やらんぞ」


「冗談よ。でもまあ、有効な手段ではあるのよ」


 あの爺様、ただのスケベ爺だと知れ渡っているではないか。



「そもそも役に立つのか?」


「ええまあ。本当に何でもしてくれるならね。

 それだけの力はあるわ」


 権力も腕っぷしも上澄みなのは間違いないようだ。



「でも驚いたわね。

 話は聞いていたけど、まさかサロモン様が負けを認める程だなんて。本当に短期間で強くなりすぎよ。エリク」


「そうか?

 確かに魔術の威力はそれなりだったが。

 パティだって似たような事は出来るだろう?」


「私は魔力量が段違いだもの。生まれ持った素質のお陰よ。

 サロモン様は私達王族程の莫大な魔力持ちでないにもかかわらず、技量だけであの地位に付いたのよ。なんなら魔力量は人より多少多い程度なんだから」


 なるほど。それは驚きだ。

けどやはりパティの方が凄いのではないか。生まれ持った素質だって重要だ。それにパティはまだまだ若いのだ。あの爺様を超えるのだってそう遠い話ではあるまい。



「とにかく話してみましょう。

 明日は私達も休みだから」


「え~! またなの!?

 もうとっくに一週間経ったわ! エリク!」


 パティの横で話を聞いていたディアナから抗議の声が上がった。



「エリク。私もデートしたい。

 そのお爺さんとの話は早く終わらせてね」


 私の隣に座るユーシャが私の腕を抱き締めてもたれ掛かりながらディアナに続いた。



「もう! 勝手な事言わないでよ! 二人とも!」


「パティだって行きたいでしょ! デート!」


「その為に悩んでるんじゃない!

 ディアナの安全を確保するのに必要な事なのよ!」


「大丈夫だから! 心配なんて要らないんだから!

 エリクはとっても強いんだから!」


「わかってるわよ! そんな事!」


「ダメ。二人とも。喧嘩しないで」


「「別に喧嘩なんてしてないわ」」


 仲良し。



「とにかく二人とも落ち着け。デートは来週末だ。

 それとは別にディアナとの外出の機会も設けよう。

 私と二人でならどうとでもなるだろう。

 幸い私達は顔が割れていないからな」


 町中に魔力視持ちが現れたとしても最早関係はあるまい。

どの道この屋敷内に魔力持ちがいるのはバレているのだ。

例え追跡されたとしても今更なのだ。


 それでも一応顔だけは隠しておこう。


 フードでも被っておけば十分だろう。

近頃は気温もだいぶ涼しくなってきたからな。

そう不自然でもあるまい。



「せめてミカゲは連れて行きなさい。

 いきなり王都で歩き回ったら迷子になってしまうわよ」


「ありがとう! パティ!」


 あっさり認められて、ディアナが喜びの余り飛びついた。

そのままソファにパティを押し倒すディアナ。



「ズルい。ディアナだけ」


 ユーシャは私を押し倒してきた。



「ダメだぞユーシャ」


「何がダメなの?

 ハッキリ言ってくれないとわからないよ?」


「身体を起こせ。

 この体勢はいかん」


「何で?

 何でダメなの?

 我慢できなくなっちゃうから?」


「そうだ。だから落ち着け。

 勢いでと言うのはいかんぞ。

 こういうのは雰囲気も大切だ」


「私は何時でも良いもん」


「私は良くない」


「知らないよ。エリクの希望なんて」


「そんな寂しい事は言わないでおくれ」


「私だけのエリクに戻ってくれるなら考えてあげる」


「今更どうしたと言うのだ。らしくないではないか。

 ここ最近は随分と大人びたものだと感心しておったのだぞ」


「我慢してるだけだよ。いっぱい」


「……だがユーシャも決めた事だろう?」


「それはそれ」


「そうもいかんだろう。ほれ向こうを見てみろ。

 ユーシャが妙な事を言いだしたから固まっておるぞ」


 パティとディアナが不安気に様子を伺っている。

ユーシャが独占欲を発揮するのは珍しい事でもないが、二人を無視するような物言いをするのは初めてだ。少なくとも私達四人がこのような関係になってからは。



「良いの。私わかったの。

 私はパティが好き。ディアナも好き。

 けどエリクが一番好き。だからエリクは私の。

 もう一度私だけのエリクにするの。

 けどパティも好きだからパティも私の。

 もちろんディアナも私の。全員私のにする。

 私が全部独り占めするの。そう決めたの」


「本当に突然どうしたと言うのだ……」


「エリクが悪いの。

 エリクがディアナとだけデートするとか言い出すから」


「元はと言えばディアナに私を託したのはユーシャだろ」


「うん。ごめんね。謝る。

 エリクの側離れてパティについていっちゃった。

 パティが好きだから我慢できなかった。

 けどそれでもエリクの隣を離れるべきじゃなかった。

 そこは私だけの場所だもん。もう誰にもあげないよ」


「おい、本当にどうしたのだ。

 落ち着け、何をそんなに焦っておる。

 滅多な事を言うものではないぞ」


「……そうだね。ごめん」


「今夜は別の部屋で寝ましょう。

 私もユーシャを独り占めし過ぎたわ。ユーシャに甘えすぎちゃった。ユーシャはエリクに返すから、ディアナは私に頂戴。もちろん今晩だけね。朝には皆で仲直りよ」


「うん。ありがとう。パティ。

 それにごめんね。ディアナ」


「大丈夫よ、ユーシャ。

 私もエリクを独り占めしてばかりでごめんね。

 明日は私ともお話しましょう」


「うん。その時はパティにエリク貸してあげる。

 でも貸すだけ。それに少しだけ。エリクは私のだから」


「その話もまた明日よ。

 今日はもう寝ましょう」


「うん。おやすみ。パティ。ディアナ」


 パティとディアナは私達を残して部屋を出ていった。

この部屋は私達に譲ってくれるようだ。


 仕方ない。もう少しユーシャと話してみよう。

少しばかり忙しくて寂しがらせてしまっただけだろう。

きっと明日には何時ものユーシャに戻っているはずだ。

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