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02-12.勘違い?

「パティ。少し話したい」


「わかった。移動するわ」


 教室にいたパティがユーシャに囁かれて席を立った。



「パト? 何処行くの?

 もうすぐ授業始まっちゃうよ?」


「大丈夫~! すぐ戻るから~!」


 クラスメイトの問いに答えながら、ユーシャの手を引いて急ぎ足で教室を飛び出すパティ。そのまま誰もいない空き教室に飛び込んだ。



「エリク! どうしたの!?

 なにか緊急事態!?」


「大丈夫だ。慌てるな。

 少しばかり問題は起きたがこちらは全員無事だ」


 今日は敢えて連絡しないと伝えていたからな。

直接会うのを楽しみにしているからと、パティとユーシャには根回ししておいたのだ。そのせいでパティに誤解させてしまったようだ。



「屋敷に第三王子が直接乗り込んできた。今回は一先ず穏便にお帰り頂いたよ。だが一応、そちらにも伝えておかねばと思ってな。仮にも王子を袖にしたのだ。次はどんな手を使ってくるかわからんからな。今日は寄り道せず真っ直ぐ帰ってくるのだぞ。対策はその後に考えよう」


「わかったわ。

 大丈夫。その程度なら想定内よ」


「だろうな。メアリも毅然とした態度で追い払ってくれた」


 王子相手に迷いなくあの態度が取れるのだ。

事前に主である公爵閣下おちちうえとも話をしていたのだろう。



「でもありがとう、伝えてくれて。

 こっちも気を付けるわ」


「念の為、私もユーシャと繋いでおく。

 話は以上だ。教室に戻りなさい」


「うん。また後で」


 パティとの話を終えてユーシャに身体を返却する。

けれど、引き続き視覚と聴覚は繋いでおこう。二人の方に奴らの手が伸びないとも限らない。ユーシャだって狙われているのだ。というか本命はそっちだった筈だ。既に姫であるパティの庇護下だと示されているからか、今のところ手を出してくる者はいないようだけど。



 私達は何をキッカケに狙われたのだろう。

やはりこの王都の門を通った時だろうか。


 簡単な検査は行われているからな。

大貴族一行であっても例外は無いようだ。

とは言え、本当に簡単なものだったけど。少なくとも私達は馬車から降りる事すらなかった。

精々戸を開けて中を軽く見せた程度だ。


 そしておそらく検問に魔力視持ちが居たのだろう。

私、ディアナ、スノウの魔力量を見て、その情報を城に伝えたのだろう。




 第三王子一行の狙いはなんだろうか。ユーシャの事は既に諦めているのだろうか。公爵家の娘に兵まで差し向けて言い寄るとはどういうつもりなのだろうか。


 これは少し考えておく必要がありそうだ。

少々行動が不可解だ。他の王子王女達が軒並み沈黙している中、何故あの者達だけが先のような暴挙に出られたのだろうか。


 先ず間違いなく、第三王子本人に大した思惑は無い筈だ。

あの側近か、もしくは他の誰かの思惑だ。これは案外重要な事実かもしれない。


 姫を任される程に王からの信頼も厚い公爵を敵に回そうと言うのだ。下手をすると、国王すらも敵に回しかねない行為だ。


 まともに頭の働く者なら、先ず間違いなく公爵の屋敷に兵を引き連れて乗り込む事などあり得まい。


 つまり、あの側近も何かに利用されている側なのだろう。

表立って公爵に喧嘩を売ってきたのだ。どう考えても何れスケープゴートにされるのがオチだろう。


 いやまあ、実際には黒幕とかいないのかもだけど。

単にあの二人が馬鹿すぎて暴走しているだけかもだけど。


 いやでも、流石にそんなわけ……あるのか?


 本気で気付いていない? それにしたってだよ?

いくら王子だからって、いきなり公爵邸に兵士連れで乗り込めるものなの?


 いや、兵士は護衛目的って名分はあるだろうけどさ。

当然、それをけしかけて良いわけがない。そんな暴挙が許されていては、国がまともに機能しなくなる。しかも相手は公爵だ。王太子とかならともかく、問題児として半ば放置されているであろう放蕩王子が太刀打ち出来る相手じゃない。


 地位の高さだけで全てが決まるわけではないのだが、これが下級貴族や平民ならそれも罷り通るのだろう。しかし、公爵は貴族としては最上位だ。なんなら王族と血筋を同じくする者がなる場合もあるんだし。もしやすると、公爵閣下は現国王の弟とかって可能性もある。その辺ハッキリ聞いたことは無いけれど。




 ダメだ。ますますわからなくなった。

これは真剣に考えても意味がないのかもしれない。

そもそも、相手が愚か過ぎれば答えなど出はせぬのだ。


 いや、そこで思考を止めちゃダメなんだけど。

もっと厄介な相手が裏に潜んでいる可能性もあるわけだし。


 第三王子一派を裏で操ってけしかけてくるような黒幕がいるのかもだし。


 今回王子の行動は迅速にすぎた。

唯一元から目を付けていた魔力持ちのユーシャが先んじて王都入りしている以上、私達を狙う理由は無かった筈なのに。


 検問でバレたからって行動が早すぎる。

事前に私達の事を知っていたのでなければ、ここまで性急に乗り込んでは来られなかった筈なのだ。


 何時どこで何を知られた?

動機は? 消えたフラビアを探しているのか?

それともまさか、近くにスパイでも紛れていたのか?


 少なくともディアナの事は知られていない筈だ。

当然私の事もだ。私達は殆ど屋敷から出ていないのだ。


 スノウとミカゲが町中を歩いている時にでも捕捉されたのだろうか。戻らぬ二人に代わって、新たな刺客が放たれていたのだろうか。


 可能性はある。

第三王子以外の手の者だって紛れていたのかもしれない。


 まさかスノウとユーシャが取り違えられた?


 二人ともが高い魔力を持ち、背丈以外の要素が似通っている。端正な顔立ちに、豊満な肉体、そして公爵家のメイド。どこかで二人の情報が混ざってしまったのではなかろうか。



 今のユーシャは薬瓶にとある特殊な袋を被せて魔力が漏れるのを抑え込んでいる。おそらく最初に流れた情報程、馬鹿げた量の魔力を持っているようには見えないはずだ。


 私の薬瓶程ではないにせよ、スノウは自らが高い魔力持ちだ。少なくとも、薬瓶の魔力を封じたユーシャよりは遥かに魔力量が多いはずなのだ。



 つまり、敵は勘違いしたのだろう。

今回王都にやってきたスノウこそが、自分達の探していた高い魔力持ちの少女なのだと。


 もしかしたら検問で魔力視を使った者も勘違いしたのかもしれない。私達は馬車から降りたわけではないのだ。だから私達三人の魔力を一人のものとして判断してしまったのかもしれない。高い魔力持ちが三人も一つの馬車に乗っていると考えるよりも、一人の莫大な魔力持ちがいると考える方がまだ現実味もあるだろう。


 それだけ魔力持ちは珍しいのだ。本来であれば。



 さて。これはどうしたものか。

兎にも角にも、パティと相談してみる他あるまい。

それにスノウにも外出を禁じねばなるまいな。

先にメアリとも相談しておくか。

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